堀込泰行「面白い化学変化に期待」目指したのは密度の高いコラボレーション
INTERVIEW

堀込泰行

「面白い化学変化に期待」目指したのは密度の高いコラボレーション


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年05月14日

読了時間:約6分

 元キリンジでシンガーソングライターの堀込泰行が5月13日に、EP『GOOD VIBRATIONS 2』をリリース。2017年11月にリリースされた同作の第2弾となるEPで、新進気鋭のアーティスト達とコラボレーション。今作では星野源とのコラボも記憶に新しいSTUTSを始め、今作で紅一点となる韓国のトラックメイカーmachina(iは正式にはグレイヴ・アクセント付き)、良質なポップスを奏でるスカートの澤部渡など5組とコラボレーション。色とりどりの楽曲が堪能できる1枚に仕上がった。インタビューはテキスト・アンケート形式で行い、『GOOD VIBRATIONS 2』の制作背景について聞いた。【取材=村上順一】

前作以上に意見交換をした制作

『GOOD VIBRATIONS 2』CDジャケ写

――前作『GOOD VIBRATIONS』から約2年半振りの作品になりましたが、第2弾を制作するにあたり、どのようなコンセプトで作ろうと思いましたか。思い描いていたイメージなど教えてください。

 前作以上に、それぞれのアーティストと意見の交換をしあい、メールでのデータのやり取りだけでなく、実際にお互いのスタジオで制作を共にするなど、密度の高いコラボレーションを目指しました。

――今作も前作に続いて素晴らしいアーティスト、ミュージシャンが参加されていますが、皆さんとの接点はあったのでしょうか。選ばれた意図も含め教えてください。

 LITTLE TEMPO以外は、今回のレコーディングをきっかけに出会ったのが初めてです。それぞれが僕と違う個性やオリジナリティのある音楽性を持っていて、面白い化学変化や、シンプルに楽しいコラボレーションが期待できそうだったので、是非にとお願いしました。

――EPのオープニングを飾る「Sunday in the park + STUTS」は STUTSさんと共同で曲を作られていますが、どのように制作されたのでしょうか。

 この曲はまずSTUTS君が僕をイメージしたトラックを作ってきてくれて、それに対して僕が鼻歌でメロディーを乗せていく、といったところからスタートしました。その後、僕の方でサビの部分の展開のアイディアを提案させてもらったり、それうけてSTUTS君がさらにトラックを作り込んでいったり、みたいな感じで完成へと向かっていきました。

――歌詞はすごく穏やかな風景が見えますが、この曲を書いたときの心境を教えてください。

 「忙しい日常の中で、ふと肩の力を抜いた時、何気ない出来事の尊さや、恋人や友人の大切さにハッと気がつく」といったことを想い描きながら歌詞を書きました。

――STUTSさんにアレンジを伝えるときにはどのようなリクエストをされましたか。あと、どのあたりにSTUTSさんらしさが良く出ていると思いますか。

 基本的な部分でのアレンジの方向性はSTUTS君にお任せしつつ、メロディやコードの展開などは70年代のソウルクラッシック的な雰囲気があったので、そのムードは生かして欲しいとリクエストをしました。そこにSTUTS君ならではのビートと色彩感溢れるサウンドが加わることで、曲が現代的になり、とても良い塩梅の仕上がりになったと思います。

――「強く優しく+ TENDRE」は夜から朝を迎えるまでの景色が浮かび上がります。堀込さんはどのような想いを込め、この曲を書いたのでしょうか。エピソードなどあればお聞かせください。

 二人の恋人の物語「今この瞬間、過去の出会い、そして明日(未来の象徴)」を、映画のように描きたいと思って作りました。間奏は普通に考えると長いですが、そこに主人公たちのこれまでの出来事や想い、あるいは聴き手が感じるそれぞれのイマジネーション、などが映し出されると良いなと思って作りました。

――包み込むようなベースとゆったりとしたサウンドが心地よい1曲ですが、TENDREさんにアレンジしてもらうにあたって、どのようなイメージを伝えたのでしょうか。

 この曲もアレンジはTENDREこと河原くんにお任せしています。当初はTENDREらしい現代のシティポップスやAOR的なアレンジを予想していましたが、見事に良い意味で裏切ってくれました。ギターが中心のアレンジになることで、曲がインディー系のシンガーソングライターのようにも聴こえ、だけれどもミニマルなR&Bのようにも聴こえる。河原くんのプロデュース力に脱帽しました。

有意義な時間だったスカート澤部渡とのスタジオでの1時間

『GOOD VIBRATIONS 2』アナログ盤ジャケ写

――machinaさんとの「蟻と惑星(プラネット)」は蟻、惑星というスケールの対極にある言葉が印象的なのですが、この歌詞が生まれた背景にはどのような出来事があったのでしょうか。

 machinaさんのモジュラーシンセとデジタル機材を駆使したエレクトロミュージックは、最先端のサウンドでありながら聴き手に原初的な高揚感や、シンプルに楽しいとか悲しいとかそういったものとは違う感情を呼び起こすものだと感じました。なので歌詞を書くにあたっても、いわゆるポップス的な情緒に訴える歌詞ではなく、例えば昔の中国の偉い思想家の言葉のような、もしくは禅の言葉のような、多くを語らずに聴き手のイマジネーションに委ねる、そういったものが良いだろうと思いました。結果的にmachinaさんのサウンドと合わさった時、とてもSF的な世界観の曲になり、自分でも面白いと思いました。

――「スウィートソウル + LITTLE TEMPO」はセルフカバー曲ですが、この曲をLovers Versionに選ばれた理由はなんでしょうか。

 以前に「エイリアンズ」のLovers Versionをレコーディングしていたので、じゃあ次は「スウィートソウル」でやってみようか、といった感じです。あまり深い理由はありません。

――LITTLE TEMPOとのレコーディングはいかがでしたか。エピソードなどあればお聞かせください。

 LITTLE TEMPOとのレコーディングは、まさに彼らのサウンドと同じように、風通しが良くハッピーなムードに溢れていました。田村玄一さんがアレンジを担当していたのですが、バンドはとても民主的で、メンバーそれぞれが意見を出しあい、場が膠着状態になる前にリーダーの土生(剛)さんが優しい物言いで上手くまとめる、といった感じで「バンドって楽しそうだなぁ」と羨ましくなりましたね。

――「サンシャインガール + SKIRT」はスカートの澤部渡さんとのコラボです。私の中では堀込さんと澤部さんには音楽的な共通点を多く感じているのですが、今回やりとりされてみていかがでしたか。制作エピソードなどあればお聞かせください。

 かねてからSKIRTの澤部君の音楽にシンパシーを感じてましたし、いつか何か一緒にやってみたいなぁ、と思っていたので今回コラボが出来たことはとても嬉しいことでした。最初はメールでのやり取りがメインだったのですが、それだけだと細かいポイントの確認がなかなか厄介だと思い、澤部君(当時恐ろしく忙しい状態)に「1時間だけスタジオで時間もらえませんか?」といったお願いをして、ホントに些細な部分のお互いの意思確認をしに、彼のいるレコーディングスタジオにお邪魔しました。けっこう遠いところにあるスタジオでしたが、実際に会って二人でギターを抱えて話し合いが出来たことは、短い時間でしたがとても有意義でした。お互いのテンションが上がった瞬間でもあったと思います。

――前回の『GOOD VIBRATIONS』制作時はコンビニスイーツにハマっていたとお話しされていましたが、新しい気分転換になるものは見つけましたか。

 エナジードリンクとブラックコーヒーにはお世話になりました(笑)。

――今現在、堀込さんが注目しているアーティストはいますか。もしくは今どんな音楽を聴いていますか。

 前作も今作も、それぞれのアーティストから良い刺激をもらえたので、洋邦問わず今日的なサウンドを一人のミュージシャンとしてチェックしていますが、いちリスナーとしては、無理のない自然なサウンドで本当に良い曲を今の時代に奏でているアーティストを好んで聴いています。

――2020年ももうすぐ残り半分となってしまいましたが、どんなことにチャレンジしたいと考えていますか。これからの展望など教えてください。

 いまいちど、歌や楽器を基礎から練習しなおそうと思ってます。

(おわり)

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