MACO「自分が生まれてきた使命」ラブソングを歌い続ける真意
INTERVIEW

MACO「自分が生まれてきた使命」ラブソングを歌い続ける真意


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年03月27日

読了時間:約11分

 シンガーソングライターのMACOが3月27日、配信シングル「桜の木の下」をリリースした。今年に入り2月14日に「恋蛍」、3月6日にレミオロメンのカバーで「3月9日」とリリースし3作連続リリースのラストを飾るのは「桜の木の下」。前出の「3月9日」と同様AbemaTVオリジナルドラマ『僕だけが17歳の世界で』の挿入歌となっている。ヒロインの芽衣の気持ちになって書き下ろしたバラードで、MACOの叙情的な歌声がより楽曲を彩る1曲に仕上がった。インタビューでは楽曲の制作背景から、カバー曲への向き合い方、シンガーソングライターMACOがラブソングを歌い続ける真意に迫った。【取材=村上順一】

自分が生まれてきた使命

「恋蛍」ジャケ写

――前作「タイムリミット」はこれまでのMACOさんのイメージとは違っていたのですが、どんな反応がありました?

 良い意味で皆さん驚いたみたいで(笑)。これまでとは違った曲調や言葉選びだったので、昔から私を知っている方は驚いたみたいです。この曲はコライトだったんですけど初めての作家さんと一緒に作らせていただいた楽曲ということもあって、新しいMACOを見せられたと思っています。この曲から私を知ってくれた方は、背中を押してくれるシンガーなのかなと捉えてくれたみたいで。それもあってすごく転機になった1曲でした。

――「恋蛍」で再びMACOさんらしさを打ち出して。「恋蛍」は久しぶりの新曲ですが、どのような心境の時に制作されたんですか。

 この曲は「たくさん曲を作るぞ!」というモードの時に作っていた1曲で、数あるデモの中でも一際強い曲で、今自分が歌いたい事を歌えている曲だと思いました。リリースしたいなと思っていたところこうやってリリース出来て嬉しいです。自分の気持ちを見つめ直す楽曲になったなと思います。
 
 曲は浦島健太さんに作っていただいたんですけど、そのメロディやトラックから今までにないものが作れるだろうなと思いました。メロディを聴いていたら自然と思っていたことが言葉になって溢れてきました。今まで書き留めていたメモから抜粋したところもあるんですけど、ほとんどがこの曲のために書き下ろしたといっても過言ではないくらい、内にある恋心を出せたMACOのラブソングの歴史に刻める1曲になりました。

――2月14日というのもこの曲の意味を盛り上げてくれますよね。

 そうなんです。でも意識したわけではなくてたまたまなんですけど、私からのバレンタインプレゼントだと思って受け取っていただければ嬉しいです。

――過去作にも“恋”というワードがタイトルに入っている曲が多いので、安心感があります。

 恋愛は私にとって切っても切り離せないものです。なので「恋蛍」は歌っていてもすごく温かい気持ちになるような、自分の胸にある想いをぶつけることができました。

――ラブソングが代名詞となっているMACOさんですが、そもそもラブソングをメインに歌っていこうと思ったきっかけは?

 テイラー・スウィフトの「We Are Never Ever Getting Back Together ~私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない(Japanese Ver.)」でデビューさせていただいて、歌詞を書き起こしたときに出てきたものがLOVEでした。その時に自分が歌にするなら人間的なところや政治的なところではなく、私には恋愛というテーマが身近で一番素直に伝えられるなと気づいて。

 自分のメモに書き留めてあるものは日記でもあり心情でもあるんですけど、それを音楽にすることによって、みんなの代弁者になれる時もあるし、みんながそういう状況じゃない時でもラブソングならMACOの世界に引っ張ってこれる感覚があります。それが自分が生まれてきた使命なのかなと思いました。自分から声を取ってしまったら何も残らないなと今すごく感じています。

――それほどまで自分の中で大きなものになってしまっているんですね。

 そうなんです。この声は父や母からもらったもので、この声で届けられる私の恋愛観を歌い続けられる限り届けていきたいなと思っています。

――その恋愛観も実体験からなんですよね。

 はい。映画とかも好きなんですけど、なかなか最後まで観れたことも少なくて。本や映画から歌詞を書くということはなくて、実体験から感じたことを書いています。それはこの6年間変わらないところです。でも恋愛経験が多いかといったらそんなことはなくて、一つの恋愛から木の枝みたいに広がっていくんです。

――ひとつのことにすごく考えるタイプなんですね。さて、今年に入って3作連続のリリースとなりましたが、レコーディングは今年に入ってからですか。

 今年に入ってからです。昨年からスタートしたアコースティックツアー『My Acoustic Tour 2019-2020 ~Home Sweet Home~』を行っている最中にレコーディングしていたので、ツアー中ならではの空気感も入れることが出来たんじゃないかなと思います。今回のツアーもすごく楽しかったので良いバイブスで歌えたと感じています。

――ツアーはどんな感じでしたか。

 一つひとつのツアーが終わるたびに反省があるんですけど、今回はいつも行けなかった場所を細かく回れましたし、お客さんとの距離も近くて温かい時間を過ごせたツアーでした。今回はあえて会場の規模を小さくしたんですけど、それは自分の歌声をもっとみんなに聴いてもらいたくて、ピアノとバイオリンの3ピースで歌わせていただきました。アコースティックというところでみんなが緊張しないように、色んなアイデアを盛り込ませていただきました。

――即興で歌ったりされていたみたいですね。

 はい。ステージ上で即興で作詞作曲をしてみんなに届けるコーナーや、カバーコーナーを作ったりしました。以前はギャグを言ってみたりしたんですけど、それは今回封印して(笑)。その時にしか生まれない、その場限りのメロディがあるのでライブの力、みんながくれる力って改めてすごいなと感じました。バースデーライブをやる予定なんですけど、また楽しい空間を提供できたらと思っているので是非遊びに来てください。

MACOが歌ったらどうなるんだろう?

「3月9日」ジャケ写

――「3月9日」はMACOさんからのリクエストですか。

 いえ、この曲はドラマ『僕だけが17歳の世界で』を制作されたプロデューサーさんが「3月9日」がストーリーと共に頭の中に流れてきたみたいで。それで、「3月9日」を私の声で歌ってみてほしいとリクエストをいただいたので、私は喜んでお引き受けさせていただきました。

――カバー曲とオリジナル曲ではどのように意識を変えて歌われているのでしょうか。

 オリジナルは自分の魂がこもっているような感じなんですけど、カバーはそれとは違った感覚があります。「3月9日」はみんなが知っている名曲ということもあり「MACOが歌ったらどうなるんだろう?」という不安がありました。洋楽のカバーとは違いますし、男性の曲でもあるのでキーを決めるのも苦戦しました。歌詞の部分でもどうしたら感情が乗るのか、というところはすごく悩んだところです。もう既に有名な曲だからこそ、どうしたらみんなの胸に刺さるのかと考えた時に、改めて歌詞を見返して曲を深くまで考えました。

――どのように感情を乗せようと思いましたか。

 まず1番は中学生の時を思い返して歌おうと思いました。2番は歌詞に<上手くはいかぬこともあるけど>とあるように、社会に出て波に揉まれているような感覚があったので、私は上京してきたことを思い浮かべながら歌おうと思いました。自分なりの経験や気持ちを曲や言葉に乗せて歌わせていただきました。

――リスナーの方から「新しい曲に聴こえる」といったコメントがあって、私もすごく共感しました。有名な曲ほどリスナー側のイメージが強いので、それを打破することは難しいと思うんです。

 そう言っていただけて嬉しいです。MACOバージョンと謳っている限り、歌い回しとかこだわりました。この曲はピアノバージョンもあるんですけど、また歌い方を変えています。

――歌うにあたってオリジナルを聴き込んでいると思うんですけど、どういったところにフォーカスして聴いているんですか。

 歌のニュアンス、言葉の選び方や紡ぎ方です。この曲なら歌詞にある<砂ぼこり運ぶ つむじ風>という情景が浮かぶ描写を藤巻(亮太)さんはどういう風に表現しているんだろうとか。今の年齢で聴くと中学生の時には理解できなかった部分が、改めて胸に響く楽曲なんだなと思いました。それもあって歌いながら目頭が熱くなったりして。

――卒業ソングとして定番曲でもある「3月9日」ですが、卒業式の思い出はどんなものがありますか。

 中学校の卒業式は合唱を一生懸命歌っていたことを覚えています。

――当時からきっと歌がお上手なので、すごく重宝されたんじゃないですか。

 合唱はソプラノとアルトに分かれていたんですけど、ソプラノのリーダーをやらせていただいていたのを思い出しました。

強くなれた父の存在

「桜の木の下」ジャケ写

――さて、27日にリリースされる「桜の木の下」は作詞・作曲もされています。作曲にクレジットされている山本匠さんはどのように関わっているのでしょうか。

 山本さんには大枠のコードなどを作って頂いて、そこに私がメロディと歌詞を付けていきました。ドラマの企画書で桜の木の下で出会うシーンなど、印象的だったのでこの言葉を使いたいと思いました。オファーを頂いた時はまだ台本もなくて、大まかなストーリーだけだったので、飯豊まりえさんが演じる芽衣ちゃんの気持ちになって歌詞を書いていきました。芽衣ちゃんだったらどう思うんだろうと彼女になり切って不安感にフォーカスしました。

――今作は憑依型のような書き方をされたんですね。

 ここまで気持ちになり切って書いたのは初めてかもしれないです。航太役の佐野(勇斗)君と飯豊さんの顔も浮かんでいたので、気持ちが落とし込みやすかったというのもありました。このドラマのファンタジックな部分に羨ましいなと思うところもあったので。

――曲は頭から順番に出来ていく感じですか。

 私は頭から順番に書いていきます。でも、歌詞とメロが一緒に降りてきてこんなにスムーズに書けたのは久しぶりでした。思いついたものをスマホのボイスメモに録っていくんですけど、1番はもう一気に出来て、夜寝る前に寝室でパジャマで録りました。あの部屋だから出来たんじゃないかなと思って。

――場所も重要なんですね。

 私は曲を作っているところを誰にも見られたくなくて、寝室で録ることが多いんです。時間が経つのも早いし、それだけ自分が打ち込める場所です。セッションしながら作るのも好きなんですけど、ちょっと恥ずかしいという気持ちがあって...。歌詞はどこでも大丈夫なんですけど。

――レコーディングもあまり見られたくない?

 そうですね。集中したいのでカーテンを引いて、モニターも消してもらっています。

――デビュー当時からそんな感じなんですか。

 いえ、デビュー当時はそれどころじゃなくて、歌うのに必死でした。今は自分のリズムが出来てきたので、そういうスタイルでレコーディングしていて、立ち会っていただく方も決まった人たちしかいない状態なんです。

――自分の世界に入るために必要なことなんですね。そのレコーディングはいかがでした?

 寝室で曲が完成してあまり日数も立たずにプリプロが出来たのですごくスムーズでした。芽衣ちゃんの気持ちに一番なれていた時に録れたので、その空気感がそのままリリースできた感じなんです。それがすごく良くて、本番になったら技術面にとらわれてしまいそうな気がしたので、プリプロで録った仮歌のテイクを今回使っているんです。

――空気感を重視したんですね。あと、ビブラートが独特な感じがしたのですが、MACOさんは誰かの影響を受けた部分も?

 ビブラートは影響を受けた人はいないです。自分から出てきたもので、自然とこういう感じになっているんです。自分では独特なのかどうかは全然わからないですけど(笑)。

――そうだったんですね。ちなみにボイストレーニングを受けたりしたことは?

 上京してきてから受けました。その時教えて頂いたことで覚えているのが、歌の上手い下手ではなく、先生は間違っても喉だけで歌ってはダメだと言うことを仰っていて、空気の取り方や身体を楽器にするということを教えて頂きました。特に緊張すると頭の方だけで歌ってしまうんですけど、常に意識は下の方から響かせるようにしています。

――意識するだけでもすごく変わりますよね。さて、歌詞に<あなたと出会えて私は変われたのです>とあるんですけど、MACOさんにとってそういう方はいらっしゃいますか。

 います。恋人だけではなく、色んな人に出会えたから自分は今生きているんだなと感じていて、その中でも特に父の存在は大きかったと思います。父は既に亡くなってるんですけど、いなくなって初めて気づく事がたくさんありました。生前はメールをもらっても返さなかったり、父は私のライブにも来たかったと思うんですけど、スケジュールを教えてあげなかったり…。それは今でも後悔しています。当時父の死目にも立ち会えなくて、ライブをしたりしていました。すごく辛かったのですが、その時もMACOとして立ち振る舞わなくてはいけないし、そこですごく強くなれた気がしています。

――死というのはすごく人を強くさせますよね。

 本当にそう思います。歌詞にある<あなた>というのは人それぞれあって、それは父でもあるし、友達もそうです。ドラマでも航太がいたから芽衣ちゃんは変わることが出来たんです。でも、自分が変われるほどの人って本当に少ないと思います。その中で「この人みたいになりたい」と思える人はごく少数で。そういう人に出会えるというのは人生の縁だと思います。

――人と人との出会いは大きく人生を変えてくれる場合もありますよね。さて、MACOさんはこれからどんな姿をファンの方に見せていきたいと思っていますか。

 変わらない自分とちょっとずつ成長していく自分を、曲の中で感じてもらえたら嬉しいです。曲今後も恋愛の歌を歌っていくと思うんですけど、その中でも「こんなことまで言えるようになったんだ」という変化を、これからみんなに届けていきたいと思っています。

(おわり)

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