阿部真央「リミッターを外した“行き切った”表現」求める理想像とは
INTERVIEW

阿部真央「リミッターを外した“行き切った”表現」求める理想像とは


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年01月31日

読了時間:約15分

 2019年にデビュー10周年を迎えたシンガーソングライターの阿部真央が1月22日、通算9枚目となるアルバム『まだいけます』をリリース。2019年はベストアルバム『阿部真央ベスト』を皮切りに「君の唄(キミノウタ)/答」や「どうしますか、あなたなら」をリリースし、ライブも『阿部真央らいぶNo.8~10th Anniversary Special~@日本武道館』、『阿部真央らいぶ 夏の陣~2019~ 東京 日比谷野外音楽堂』、『阿部真央弾き語りらいぶ2019』を行うなど精力的活動し、その中でリミッターを外したライブをしたかったという。その兆しが刻み込まれた『まだいけます』の制作背景や、分析することが好きだと話す阿部真央に話を聞いた。【取材=村上順一】

私の求めるものは行き切った表現

阿部真央

――2019年は阿部さんにとってどのような1年でしたか。

 昨年は変化の年でした。特に夏ぐらいから変わってきた感覚があります。私はコンサバな考え方があって、バランスを取ろうとしてしまう、例えばインタビューでも良い子ぶるクセがあって...。それは人に嫌われたくないし、失敗もしたくないところから来てるんです。それを変えていきたいという事を2018年の末あたりから曲にし始めていて、2019年も変化したいという曲を書いていました。

 その中でライブでももっと行き切りたい、ピッチや喉のコンディション、歌詞を飛ばさないなど、雑念に支配されているライブをしたくない、リミッターを外したライブをしたかったんです。それが2019年中盤から強くなっていって、秋に行った弾き語りツアーでリミッターを外す感覚を掴んだ気がしました。私のファンの方じゃなければ目を背けてしまいたくなるくらいの行き切った表現、それが私の求めるものだったので、それをやって生きていくんだと腹が決まった1年でした。

――『阿部真央らいぶ 夏の陣~2019~』ではリミットはまだ外すきっかけにもなっていなかったんですね。あのライブを拝見させていただいたんですけど、すごいエネルギーで圧倒されました。

 リミットを外す予兆みたいなものはありました。2公演で大阪、東京の順番でやらせていただいたのですが、大阪が自分の中で開放感がすごくあったんです。意識してではなくて、楽しくてやりすぎてしまった感があったのですが、それが本当に楽しくてリミッターを外すきっかけに繋がったのかなと思います。でもそれは非常にじんわりとしたものでした。

――東京公演を拝見させていただいたのですが、僕の中では振り切ったライブだと思ったので、まだリミットを外しきれていなかったというのは驚きました。まさに『まだいけます』という言葉がピッタリで。アルバムの制作は2019年通して行っていたのでしょうか。

 楽曲制作はちょこちょこしていました。本格的に始まったのは、弾き語りツアーが終わってからです。11月の中旬から12月の中旬までの1カ月で集中してやっていました。弾き語りツアーが終わってからだったので、ボーカルのテンションや音に、行き切りたいという思いが出ていると思います。スケジュールはタイトでしたけど、ライブ感が私の中に残っていたその時期に録れて良かったなと思います。

――昨年はライブの他に昨年5月に公開された映画『チア男子!!』のイベントで歌われていましたが、いつもとは違う環境での歌唱はいかがでした。

 緊張しました。通常のライブとはまた違った難しさがありました。映画館はしっかりと吸音されているので歌うのが難しいんです。あの時はイヤモニじゃなくて、ころがし(フットモニター)だったので。

――普段はイヤモニですか。

 両方使い分けているんですけど、吸音された場所でのころがしは初めてで。でも、ほとんどのお客さんが私のファンの方ではないと思うんですけど、すごく温かくて、環境も含めて良い経験になりました。

――11周年に突入しましたけど、まだまだ初めてのことってあるんですね。2020年チャレンジしたいことはありますか。

 あります。楽曲を作って行くことは引き続きやっていくなかで、全く違う分野で喋る仕事、ラジオとかやっていきたいなと考えています。

――以前、ラジオやってましたよね?

 やってました。今もアルバムの特典などでラジオ番組っぽいコーナーを作ってやってるんですけど、そういうのではなく自分の好きなアーティスト、例えば岡崎体育さんのラジオ番組みたいに友達で固めていく番組で、準々レギュラーぐらいになる感じで。数年後には気づいてみれば「阿部真央ってラジオの準レギュラービッチだよね」みたいに言われるようになれたらなって(笑)。あと、喋るのが好きというところに通じるんですけど、私ボーカルオタクで、人が歌っているのを分析するのが大好きなんです。需要があればそういったこともしたいと思っていて。

――それは需要ありますよ。ちなみに今語りたいボーカリストは?

 この前SNSでも発信したんですけど、Reolちゃんは飛び抜けています。彼女はリズム感が素晴らしいんです。一回一緒に食事に行ったんですけど、海外のラップを好んでよく聴いているみたいで、リズムのとり方が日本人離れしています。リズムが良い人は子音のタイミングが美しくて、センスが良いんです。

――阿部さんもリズムを重視する時は子音を意識して?

 私は感覚でやってしまってます(笑)。でも、あとで自分の音源を聴き返してみて、リズムが良かったものは子音が上手くハマっているんです。Reolちゃんのドラムはおそらく打ち込みだと思うんですけど、私の場合は生のドラムなので、ドラマーさんの持っているリズム感との相性もあるし、今回も早口な楽曲あるんですけど、自分の気持ちいい感覚でやって正しかったなと思う時があります。

――分析するのが得意なんですね。

 そうなんです。プロファイリングするクイズとかけっこう得意なんですよ。

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