シンガーソングライターの阿部真央が8月31日に、東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブ『阿部真央らいぶ 夏の陣~2019~ 東京 日比谷野外音楽堂』をおこなった。夏の陣は7月27日の大阪城野外音楽堂と東京の2公演をおこなうというもの。8年振りとなった日比谷野音でのライブは、8月21日にリリースされた新曲「どうしますか、あなたなら」など、ダブルアンコール含め全21曲を披露した。「明日も頑張って生きようと、活力になるライブになってくれたら…」と話した阿部真央の生命力みなぎったライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

「どうしますか、あなたなら」をSPバージョンで披露

(撮影=吉場正和 )

 開演時刻になり、サポートメンバーがステージに登場。スケール感が大きなバンドサウンドをSEに阿部真央が笑顔でステージに登場。「逝きそうなヒーローと糠に釘男」で“夏の陣”の幕は開けた。ロックの醍醐味でもあるヒステリックなサウンドに乗って、力強い阿部真央の歌声。オーディエンスもその歌声に手を掲げ応える。

 続いての「モットー。」では、長い髪を振り乱しギターを弾く阿部真央。その一挙一動にオーディエンスは引き寄せられるように、大きな盛り上がりをみせる。「逢いたかったよ!」とストレートな想いをステージから叫ぶ阿部真央の声に、オーディエンスも大歓声で応える。振り上げる拳にもより力が入る「ふりぃ」で、早くもクライマックスのような盛り上がり。

 「みんなの声、響かせる準備は出来ていますか」と投げかけ始まった「痛み」では、真っ赤に染まるステージで、“痛み”という感情をさらけ出すかのよう。その声は空へと吸い込まれていく感覚を与え、続いてのアカペラから始まる「じゃあ、何故」。その裸ともいえる歌声はディティールをより鮮明に際立たせ、声の持つ表情を感じ取れる。

 陽も落ちた頃、この夏の思い出を話し、8月21日にリリースされた新曲「どうしますか、あなたなら」のカップリングに収録された「この愛は救われない」を弾き語りで披露。秋の訪れを感じさせる虫の音が、阿部真央の歌声と融合するかのように、切ない言葉をメロディに乗せていく。そして、「深夜高速」「貴方の恋人になりたいのです」とミディアムナンバーで、しっとりと歌声を響かせた。

(撮影=吉場正和 )

 「自由に体を揺らして楽しんで下さい」と、阿部真央はギターを手放し、ハンドマイクに切り替え「傘」を届けた。心地良いグルーヴに乗って、ステージを自由に動きながら、伸びやかに歌唱する阿部真央の姿は快活だ。そして、スペーシーなシンセのシーケンスがクラップを誘発させた「immorality」と、様々な表情の彼女を堪能させてくれた。

  再びアコギを抱え、8月21日にリリースされた新曲「どうしますか、あなたなら」を披露。NHKドラマ10『これは経費で落ちません!』の主題歌で、放送ではサビ終わりの歌詞を主人公の森若沙名子の名前に変えて歌唱していることから、今回は1サビで<どうしますか、森若さん>、ラストサビでは音源通りの<どうしますか、あなたなら>としたスペシャルバージョンで届け、楽しませてくれた。

活力になるライブになってくれたら

(撮影=吉場正和 )

 ライブも後半戦へ突入。シンガロングで一体感を高めた「君の唄(キミノウタ)」、感情を高ぶらせてくれるアグレシッブなナンバー「答」と“ロックシンガー”阿部真央を魅せた。

 サポートメンバー紹介を挟み、イントロのギターには集中力が必要だと話す1曲「なんにもない今から」。爽やかなビートに合わせ、ユラユラと身体を揺らし、歌声を浴びる。そして、ライブはラストスパートへ。パンクビートが腕を掲げずにはいられない「変わりたい唄」でリミットを超える盛り上がりを見せる。

 「イケるのか日比谷!」とパワフルな煽り から、本編ラストは「ロンリー」。夏らしさを感じさせるナンバーは、オーディエンスも身体を弾ませ、阿部真央の「歌って!」の投げかけでサビを大合唱するなど、会場が一つになっていった瞬間だった。

 アンコールは「K.I.S.S.I.N.G.」でスタート。カラッとしたパワーポップナンバーで、キュートな阿部真央の姿に会場からも「かわいい」などの声が飛び交った。阿部真央も「メリーポピンズみたいでしょ」と、アンコールの衣装も気に入っている様子。そして、テレキャスターを抱え「這い上がれMY WAY」でオーディエンスを煽情。

(撮影=吉場正和 )

 阿部真央は「ライブがあっという間だったと感想をもらうこと多くあって、それは中だるみがなかった、退屈ではなかったということで良いことなんです。だけど、自分は普段ライブ中に、次の段取りとか色々考えているから、しっかり2時間半(ライブを)やったなと感じることが多いんです。でも今日は本当にあっという間でした。素敵なライブをみんなに作ってもらっています」と、いつもとは違う感覚を得られたと話す。

 「明日が来るという確証は誰にもありませんが、明日も頑張って生きようと、活力のひとつにこのライブがなってくれたら…」とアンコールラストは「まだ僕は生きてる」を届けた。エナジーみなぎる歌と躍動感溢れるポップサウンドで、大団円を迎えた。

 オーディエンスと記念撮影をおこない、ステージを後にした阿部真央。再びアンコールが巻き起こり、阿部真央が1人ステージに登場。10年続けてこられた理由に「聴いてくれる人がいるから、(音楽を)やめようと思わなかったこと」が原動力だと語った。

 最後にもう1曲、デビューのきっかけになった「母の唄」。ライブでしか聴くことが出来ない曲で、緩急を付けた楽曲構成は人生の起伏を表現したかのよう。バスドラムを担うアコギのパーカッシヴな音色は、心臓の鼓動のようにも感じられる。生命力みなぎる歌とアコギの演奏に、静かにその音を浴びるかのようにオーディエンスも立ちすくんでいた。

 ライブをするために曲を作っている感覚もあると話していた阿部真央。生で歌うことの楽しさが存分に出ていたステージは、音源とはまた違った表情や発見があった。生でしか味わえない臨場感とともに、楽曲がより活き活きとしていたことを感じさせてくれたライブだった。9月から弾き語りツアー『阿部真央弾き語りらいぶ2019』、来年3月14日から始まる全国ホールツアー『阿部真央 らいぶNo.9』も発表され、ここから1年間、“生きた音楽”が体感出来そうだ。

セットリスト

『阿部真央らいぶ 夏の陣~2019~ 東京 日比谷野外音楽堂』
8月31日@東京・日比谷野外音楽

01.逝きそうなヒーローと糠に釘男
02.モットー。
03.ふりぃ
04.痛み
05.走れ
06.じゃあ、何故
07.この愛は救われない
08.深夜高速
09.貴方の恋人になりたいのです
10.傘
11.immorality
12.どうしますか、あなたなら
13.君の唄(キミノウタ)
14.答
15.なんにもない今から
16.変わりたい唄
17.ロンリー

ENCORE

EN1.K.I.S.S.I.N.G.
EN2.這い上がれMY WAY
EN3.まだ僕は生きてる

W ENCORE

WEN.母の唄

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