SEAMO「当たり前のことをしっかり」 15年のキャリアを重ねてこそ見えるもの
INTERVIEW

SEAMO「当たり前のことをしっかり」 15年のキャリアを重ねてこそ見えるもの


記者:小池直也

撮影:

掲載:20年01月22日

読了時間:約10分

洗練は増えたけど、狂気がない

——過去の曲を聴き直して、今思うことなどはありましたか。

 デビュー当時の曲はメロディワークが粗いなと思うことは正直なところです。「関白」もサビのブレスポイントがめちゃくちゃだなと思うんですけど、その粗さがまた良かったりするんですよね。変に歌いこなしちゃうとストリート感が薄まってしまう。そういう意味では「マタアイマショウ」だって、粗いんですよ。今ああいう曲作るなら、もっと上手にやると思うんですけど、それじゃダメなんですね。あのザラっとした感じで人気になった面もあると思います。あと昔の曲は「よく工夫しているな」と感じるものが多いです。

 あと喉の調子が良くない時期は「Cry Baby」とかが上手に歌えない時期がありました。やっぱり年齢を重ねていくと、早口とかが難しいと思ったりして。でも鍛錬すれば戻せるので収録した曲は今歌うのに苦労するものはないです。ただ予習と復習はちゃんとしておかないと、と常に意識はしていますよ。

——15年前とは音楽を取り巻く環境も大きく変わりました。

 これだけCDが売れない時代になるとは想像していませんでした。今はサブスクリプションで聴く人も増えて、リスナーにとっても音楽はカジュアルなものですよね。だから各レコード会社でもアルバムにかけられる制作費も減っていると思います。それはお金をかけられないからこそ生まれるアイデアもあると思うので、悪いことではないですけどね。

 ただ、僕のデビュー当時から中期までの曲は丁寧に作っていたなと。ちゃんと生バンドがやっていたりとか、ストリングスに関してもそう。今「ルパン・ザ・ファイヤー」を作ろうとしたら、パソコンや技術でそれなりに表現できると思うんですけど「この揺れ方は生じゃなきゃ出ないな」と感じます。

——聴かれるサウンドの傾向が変化したこともありますね。

 EDMが流行るとも思いませんでしたし…変わりましたよね。若い子たちが必要とするコンテンツとして、音楽が主役じゃない時代なんだとも思うんです。もちろん、寄りそうものではあるんですけど、僕たちの時代は音楽が主役だったんです。ネットがどうとか、YouTubeがどうとかいいますけど、娯楽の一番は音楽だった。だからミュージシャンにも夢があったし、街の一番イケてる奴が音楽やってましたからね。

 今の若い子は違うんですよ。舌を巻くようなスキルを持っていて、オシャレでダンスもできて、俺たちには出る幕がないくらいですから。でも人間的には地味な子が多い。家から一歩も出たことないような人がYouTubeやSHOWROOMで人気者になって、初ライブでZeppが満杯になっちゃうとか。洗練されているとは思うんですが、話をしていても狂気さを感じないんですよ。僕らの時代は変な奴のオンパレードでしたから(笑)。

——そういう「狂気」が必要だと?

 僕らの時代はそう思ってましたけど、今はそうじゃないのかもしれない。恐らくそういう話をしたら「今はそういう時代じゃないんですよ」って言われちゃうと思うので。

——なるほど。

そういう時代だから色々な業界で冒険ができないんです。昔は体力も予算もあったから変なものが山ほどあったんですけど、音楽もファッションも文化も無難なものが増えてるのかなという気はします。

——SEAMOさん自身は冒険をされているように見えるのですが。

 それは僕たちにまだ体力が残っているからなんですよ。好きなことを続けられるお客さんを持っていて、リリースすればある程度の数字で売れるという背景があるから冒険ができるんです。僕たちの時代のアーティストで今もアルバムを出して、変なことをやれている人はいますが、そういう人は食べるためにYouTubeとかでカバー動画を配信して収入を得ていたりもします。経済的にも余裕がないとチャレンジは難しい。

あと最近はメジャーデビューに興味がある人もいないですよね。昔は「デビューさせてやる」という話でだまされた人が多かったのに(笑)。今は勉強している人が多いから「具体的に何をしてもらえるんですか?」と新人でも言うみたいです。

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