SEAMO「当たり前のことをしっかり」 15年のキャリアを重ねてこそ見えるもの
INTERVIEW

SEAMO「当たり前のことをしっかり」 15年のキャリアを重ねてこそ見えるもの


記者:小池直也

撮影:

掲載:20年01月22日

読了時間:約10分

当たり前のことをしっかりやっていきたい

SEAMO

——そんな中でSEAMOさんは今活動する上で何か大事にしていることはありますか?

 ダイナミズムですかね。ファッションでも音楽でもハッピーにさせてくれるド派手なもの。上手でまとまって終わっていくのではなく、何かとんがった部分というのは常に大事にしています。世の中が求めているかどうかはわかりませんが、それが自分の好きなものだし、大事なものですから。地味なものは家でやってYouTubeに上げればいい。でもお金払って観てもらうものに関してはダイナミックなことをしたいんですよ。

 時代はくり返すので、昔のファッションが流行るように戻ってくる。僕はそれを2、3周くらい見てきました。そこで先ほどの考え方が評価されるのかな、という思いもあります。何年か後になるかもしれないですけど。やっぱり「こんなの作っちゃった!」という自分のなかのテンションが大事なんです。誰かの顔色をうかがって生きてたり、リリースしていた時期もあったかもしれませんが、今は自分の満足感が一番。自分が良いモチベーションを保てるので、それが個人的なトレンドですね。

——他人の評価を気になることもあったんですね。

 そういう人は背負ってるものが大きいんです。数字も付いてまわるじゃないですか。そうしないと自分自身を維持できなくなってしまう、ヒットチャートを駆け抜ける人は大変ですよ。それも理解できるけど、今だからこそ個人的なことを発信していきたい。冒頭にも話した「大人になりました」も共感してもらいづらいかもと思いながら、15周年の今だからこそできるパーソナルな楽曲でした。『PERFECT SEAMO』は今まで以上に自分が良いと思うことを大振りに表現していく時期に出せたベストアルバムだと思います。

——ご自身のドキュメント映画『もしもあの時 "if" 』も今月公開となりましたね。

 堤幸彦さんは地元が一緒ということで今まで色々な仕事を一緒にやらせていただいてます。今回もインタビュアーや監修で手伝ってくれました。若い時みたいに格好良いドキュメントではなく、素で話していますね。コメントが狙っているところにいかないのもリアリティがあるかなと。昔だったらカットしてほしいと思う場面もあったかもしれないですが、恥ずかしい部分も含めて格好悪いと思わなくなった、というのもキャリアがなせる業ではないですかね。昔のことを笑って話せるようなドキュメントになっていると思います。「大人になりました」じゃないけど、そういうことなんですよ。

——そういう大人の姿を見せていくということも社会にとっては良いことなのかなと感じます。

 たばこが吸えたり、お金を自由に使えることが大人ってことではないでしょう。かといって父親がペコペコしている姿を見せたら夢がないなとも思いますね。でも、それも自信を持って見せていくことが大事なのかなと。僕はこれで15年以上やっているし、そこにウソはないから自信を持って見せていきたいんです。この映画も見る人によって捉え方が違うはずです。全員に良いと思わせるのは不可能ですよ。今まで応援してくれた人は感慨深く観てくれたら嬉しいですし、若い人たちもいずれ壁にぶち当たった時に「あの時SEAMOが言ってたことはこれだったんだ」と気付いてくれるといいですね。

——では「年をとる」ということも悪いことではない?

 もちろんしんどい時もありますよ。若い時みたいな反射神経は鈍ってくるし、まくしたてる様なラップはできなくなっていきます。そういうネガティブなことは山ほどあって、有ったものを失くしていくのはすごく切ないこと。でもその分、知識や作品とか誇れる財産は増えていくと思ってます。何年か前にスガシカオさんが「俺は今、絶好調でさ。曲どんどん書けるんだ」と言っていたのが印象的だったんです。年齢を重ねてもそういう時がくるんだなと。僕も個人的には今絶好調なんです。

——今後チャレンジしたいことなどはありますか。

 「次何したい?」とよく聞かれるんですけど、すでに限界まで色々なことをさせてもらっていますから。堤幸彦監督の関係でドラマに出演させてもらったこともありましたし、楽曲提供や、アーティストのプロデュースもやったし、フェスも主催しました。生放送のラジオすらもやってますから、あとはYouTuberになるくらいしかチャレンジしてないことがないかもしれない(笑)。

 でも自分が今やっていることを腐らずに、昨日より今日のものを1ミリでも良くしていきたいという気持ちはあります。アルバムを出してツアーするということがルーティンになって、そこに刺激を感じられなくなった時期もありました。でも15年もやってると「またアルバム出すの?」と驚かれるようになるんです。今はそれが一番の武器。これからも当たり前のことをしっかりやっていきたいですね。

(おわり)

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