INTERVIEW

蓮佛美沙子

デビュー当時抱えた苦悩 「私を救ってくれたミスチル」


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:20年01月17日

読了時間:約7分

色や空気感で記憶を呼び起こす

――多くの作品に出演されていますが、次の役に入るときに一度リセットしますか?

 リセットしようと思ったことはないです。割とスッと次に入れるタイプだと思います。ただ、同時期に違う作品をやっているときはその都度リセットします。衣装やメイクで気持ちを変えている部分はあって、その呼び起こすきっかけとなるのが色や空気感。春夏秋冬で例えたら「この作品は春だな」とか。そういう質感を覚えて切り替えるようにしています。

――では今回の役で季節に例えると?

 冬のような気もするし、春のような気もする。季節だけではなく、色の時もあって。今回は淡いピンクから記憶を失って藍色みたいに変わった印象です。

――劇中で印象に残っているセリフに「不快な記憶を忘れることで自己防衛している」というものでした。蓮佛さんは「嫌なことも基本は忘れない」と話していましたが、忘れることが正しいのか、忘れないことが正しいのか。

 どっちもだと思います。基本的には忘れたくないけど、場合によるのかな…と思うことはあります。人それぞれが持って生まれた性格や何を大事に生きて行きたいのかという考えは違うので誰も責められないと思う。現実世界と一緒、辛い思いをしてそれでも生きていかなくてはいけない時に記憶屋の存在は善なのかなと思うところもあります。それは人によると思いますし、どっちも正解だと思います。だからこの作品は面白いと思うんです。

――劇中で記憶屋は都市伝説的存在となっていましたが、自分で自分の過去を消すこともあるという点では人それぞれに記憶屋を宿しているかもしれない?

 そう言われてみればそうですね、確かに! 面白いですね。何か強烈な出来事が起こった時に忘れることってありますから、自分の中にもいるのかもしれませんね。

――改めて本作の見どころをお願いします。

 この作品は「こういうふうに観てほしい」という答えを出していないところが良いところで、人間のエゴや「人と人が寄り添って生きていく上で何を大切にしたいか」を自分に立ち返って考える、自分と向き合う時間を作ってくれる素敵な作品です。「記憶屋」と聞いて一見「ミステリーなのかな」とも思えますが、もっと掘り下げた、何を信じるか、何を大事にするかという深いところのお話。そういうところを楽しみながら味わってもらえる作品です。

蓮佛美沙子(撮影=木村武雄)

(おわり)

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