INTERVIEW

蓮佛美沙子

デビュー当時抱えた苦悩 「私を救ってくれたミスチル」


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:20年01月17日

読了時間:約7分

 蓮佛美沙子(28)が17日公開の映画『記憶屋 あなたを忘れない』(平川雄一朗監督)に出演。「忘れたい記憶」と「忘れたくない記憶」が交差する本作で主人公の恋人ながらもその期間の記憶を失った女性を演じる。2006年公開の映画『犬神家の一族』でデビュー。その翌年に『転校生 -さよなら あなた-』で映画初主演を果たし数々の新人賞を受賞した。その後も話題作に出演、幅広い役をこなしドラマ・映画界には欠かせない存在となっている。そんな蓮佛も鳥取県から単身上京したデビュー当時は生活に慣れず葛藤もあったという。その時に救ってくれたのは音楽だった。彼女を支えた楽曲とは。そして本作の役柄にどう向き合ったのか。【取材・撮影=木村武雄】

救ってくれた「終わりなき旅」

 「ライブで挨拶させて頂いた時に、嬉しさのあまり動揺して泣いてしまって…。三本の指に入るぐらい挙動不審になってしまって…。私は基本、辛いことも記憶から消したくないタイプ。そういう経験をすることで自分が少しずつ変われる気がするので。でもその時の出来事は、お会いしたことは忘れたくないけど、見苦しい所をお見せした事実だけは記憶から消したい」

 顔を赤らめながらも笑みをこぼし回顧した。小学校低学年からの大ファンであるMr.Children。自身も出演したNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』(16年―17年)のオープニングテーマ「ヒカリノアトリエ」を担当していたことがきかっけでライブを観覧、挨拶する機会に恵まれた。

 芸能界入りしてまもなく出身の鳥取県を離れ単身上京した。慣れない生活に苦労もあった。そんなときに支えになったのは音楽だった。

 「私を救ってくれたのはMr.Childrenさんの『終わりなき旅』でした」

 当時を懐かしそうに振り返った。

 「友達に『辛い事があったらこれを聴きな』と言われた曲でした。親元を離れての生活ですし、家族と先生以外の大人に囲まれることが当時の私からしたら異空間。色々な壁にぶつかって、その都度聴いていました。2番の歌詞にある<高ければ高い壁の方が 登った時気持ちいいもんな>という言葉に鼓舞され『絶対負けない! この壁を越えたら絶対何かあるはずだ!』と前に進めて」

 2007年に映画初主演、2008年にテレビドラマ初主演を飾る順風満帆なデビューだったその陰で抱えていた葛藤。気付けば高校時代一番聴いていた楽曲になっていた。歌詞に支えられ<次の扉をノック>し続けた。そんな彼女に転機が訪れる。当時のマネージャーの一言だった。

 「高校を卒業して、何事も自分の考えで決めていかなくてはいけないと薄っすらと感じていた頃でした。それまで周りの意見にアンテナを張り巡らせていたから『自分はどうしたい』というのがなくて。当時のマネージャーに『今後どうしていきたいのか』と聞かれても意見が言えなくて、それで叱ってくれたんです。それからは自分でも『変わらないとダメだ』と思えるようになって、徐々にではあるけれど自分の芯を持って取捨選択ができるようになりました」

 青春期を共に歩んだ音楽。2007年公開の映画『転校生-さよなら あなた-』では楽曲「さよならの歌」をピアノで弾き語った。スッと心に入ってくる透明感のある歌声が印象的だ。

 「音楽はもちろん好きです。ただ、私の中では『分からない事が沢山あるもの』という印象で、時に歌はお芝居よりも伝えられるものがある。私が歌を体現するとなるとミュージカルが一番近いかもしれないです。今もボイストレーニングをしています。表現する選択肢の一つとしても素敵なものですし、上手くなりたいと思っています」

 そんな彼女にとっての音楽はどういう存在なのか。

 「無くてはならないものです。起きてすぐ聴いていますし、別世界を見せてもらえるといいますか、自分が経験していなくても歌詞の一節に思いを巡らせることで想像が掻き立てられることもあります。無くてはならない彩を与えてくれる存在です」

 音楽には、当時の記憶、香りまでをも蘇らせる不思議な力がある。

 片や、『記憶屋 あなたを忘れない』で蓮佛が演じたのは、遼一(山田涼介)の恋人ながらもその期間の記憶を失ってしまった女性、杏子。遼一との記憶は取り戻せるのだろうか。演じるにあたってどのように取り組んだのか。ここからは一問一答。

蓮佛美沙子(撮影=木村武雄)

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