INTERVIEW

蓮佛美沙子&奈緒

「阿吽の呼吸みたいなものがある」齊藤工監督が作り出す現場の雰囲気:映画『スイート・マイホーム』


記者:村上順一

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掲載:23年09月01日

読了時間:約6分

 女優の蓮佛美沙子と奈緒が、窪田正孝主演映画『スイート・マイホーム』(9月1日公開)に出演。蓮佛美沙子は窪田正孝演じる清沢賢二 の妻である清沢ひとみ、 奈緒は住宅会社社員の本田を演じる。本作は第13回小説現代長編新人賞を受賞した神津凛子氏のデビュー作である『スイート・マイホーム』を、俳優の齊藤工が監督を務め実写化。新居、マイホームを舞台に幸せな家族が「家」を 取り巻く恐怖の連鎖に巻き込まれていくというストーリー。インタビューではどのような意識で撮影に臨んだのか、本作の舞台裏に迫った。【取材・撮影=村上順一】

齊藤工監督ならではの部分がある

蓮佛美沙子&奈緒

――出演が決まった時の心境はいかがでした?

蓮佛美沙子 私は座組を聞いた時に絶対面白い作品になるという興奮がありました。齊藤監督、主演が窪田さん、共演者に奈緒ちゃんと聞いて、原作・脚本を読む前から是非参加したいと思いました。また、プロデューサーさんは私が10代の頃に大変お世話になった方で、今回お声がけいただけたこともすごく嬉しくて、撮影を楽しみにしていました。

奈緒 齊藤さんが監督された『blank13』を拝見して、齊藤組に入って撮影してみたい、監督の作品にいつか出られたらいいなと思っていました。そう思っていた中で、『スイート・マイホーム』に出演するお話をいただけたので、すごく嬉しかったです。そして、脚本を書かれた倉持裕さんとは、このお話をいただく前に舞台でご一緒していました。 今度は倉持さんと映画でご一緒できるのも嬉しかったですし、しかも齊藤監督とのタッグというのは本当に面白くなりそうだなと思いました。

――齊藤監督は俳優をやられています。その視点を現場で感じられたところはありますか。

蓮佛美沙子 同業だから、役者の気持ちが筒抜けと言いますか、言葉を交わさなくても「きっと今、こう思っていますよね」といった阿吽の呼吸みたいなものがある方だなと思いました。また齊藤監督ご自身は、「自分は視野がそこまで広くない」とおっしゃっていたのですが、私は視野が広い方だと思いました。いろいろなところに心配りをされる方だな、と。たとえば、今回真冬の撮影だったのですごく寒かったのですが、監督は「外にいるスタッフさんたち大丈夫かな? 」とカイロを準備されたりして。もちろんお人柄もあると思うのですが、齊藤さんならではの部分があると思いました。

――奈緒さんは斎藤監督からどのようなことを感じましたか。

奈緒 現場に入った時にスタッフのみなさんが名札をつけていたことが衝撃でした。そういうことって今までなかったんです。本当は自己紹介できる時間があればいいんですけど、それがない現場は多々あります。私は「ああ、名前覚えられなかったな」という日があったり、「この方の名前なんだっけ? でも、今このタイミングで聞けない...」みたいなことはけっこう“現場あるある”なんです。それはきっと齊藤さん自身が現場でそうならいいのにと思うところだったのではないかなと思います。最初からストレスなくみんなが名前で呼び合える、そういう空気感を初日からしてくださったというのは、すごく嬉しかったです。

――撮影中に印象に残っているエピソードはありますか。

蓮佛美沙子 今回、子役がたくさん出演するのですが、初日に幼児の子役を撮影するシーンで、お昼寝のカットを撮ることになって。その時、なかなか寝てくれなかったので「お昼寝待ちします」となって、小1時間ぐらい空き時間が生まれたのですが、その時の各々の過ごし方、空気感が私は他の現場で見たことがない光景でした。

 現場によっては「え、まだ寝ないの?」とか、「この時間に他のシーンを撮ってしまおう」とか、少しピリッとする可能性もある瞬間なんです。でもこの現 場では、 仮眠をとっている人がいたり、私は奈緒ちゃんとずっと喋っていたり、それぞれがストレスのない時間を過ごすことができていて。その穏やかさみたいなものに、撮影中も私はすごく助けられたと思っていて、初日にそれを感じて一気に安心しました。万人に対してのリスペクトがある齊藤監督だったから、そういう空気が生まれたのだと思っています。

――奈緒さんが印象的だったことは?

奈緒 人も温かったのですが、家自体も本当に暖かったんです。すごく寒い時期の撮影だったのですが、みんなで「この家、暖かくてすごいよね」って(笑)。私は住宅展示場が主に登場するシーンだったので、「こういう家に住めたらいいよね」とか、将来のマイホームの話をみんなでしていたことが思い出に残っています。

『スイート・マイホーム』は体感してほしい映画

蓮佛美沙子&奈緒

――ご自身の役をどのように演じようと思いましたか。

蓮佛美沙子 私が演じた清沢ひとみはすごく明るくて、何事にも前向きに取り組む人です。ただ、裏ではワンオペ育児で疲弊していたり、心の中に渦巻いているものがたくさんあったりもして。役作りに関しては原作や脚本を読み込むことはしましたが、特別にしたことはないんです。現場の空気、それこそ奈緒ちゃん演じる本田、窪田さん演じる賢二と対峙した時に、自然と出てくるものを掬ってもらった方がいいだろうなと思いました。それは直感なのですが、今回は役を作り込まない方がいいと。ひとみがどういう人生を歩んできたのか、演じる上でのベースとなる架空の思い出づくりみたいなものはしましたが、それ以外は監督に委ねようと間口を広くして撮影に臨みました。その中で監督が、「今までに見たことがない蓮佛美沙子の表情を見たい」とおっしゃってくださって。特にラストシーンは、私 1人なら絶対に出せなかった表情だと思っていて、その表情は監督に引き出してもらったものでした。

――奈緒さんは本田を演じるにあたり意識されていたことは?

奈緒 人の心には触れられないといいますか、触れてはいけない、触れられない部分があると思っています。本田は表面的な部分と本質に乖離がある人です。そこが人物としてすごく趣深いと思いました。そして、本質を見つめ続けてやればきっと大丈夫だ。と、撮影に入る時に自分に言い聞かせていました。

 また、蓮佛さんとお芝居をしていく中で、ひとみと友達になれそうと思える瞬間もありました。ひとみによって本田の心が明るくなったり、楽しくなる瞬間というのはありました。ただ、本田は明るければ明るいほど影が強くなってしまう人です。蓮佛さんとお芝居をしていく中で、私はその影をどんどん強くしていったことがたくさんありました。それは現場に行ってみないとわからないことでしたし、やっていく中で温かい時間が流れれば流れるほど、1人でいる時の孤独感がより強くなってしまう、そういうことを現場で感じることが多かったです。

――齊藤監督から具体的にこういうふうに演じてほしいといったリクエストは?

奈緒 リクエストとは違うかもしれないのですが、監督とお話ししている中であったのは、「本田はみんなの心の中にいる」ということでした。本田の孤独や寂しさというのは、自分なりに皆さんも心の中に持っているもの、とのことなんです。みんなの中にもいる鏡のような存在で、自分もそれを大切にしながら演じたいと思っていました。

――最後に本作の見どころをお願いします。

奈緒 ホラーミステリー作品なのですが、そのジャンルの映画としてもハラハラドキドキと楽しんでいただける作品でもあると思います。でも、そのジャンルにとらわれない部分も丁寧に描かれている作品なので、皆さんに観ていただいて「どうだった?」と聞いてみたいです。監督が目指した「キャストの見たことがない顔」が詰まっている作品なので、ぜひ劇場で観ていただけたら嬉しいです。

蓮佛美沙子 この作品は「ここを見てほしいです 」というよりも体感してほしいという思いがすごく強くて、「ズバリここが見どころです」とは言えないんです。今回、登場人物の顔が印象的で、 キャストの表情が心の機微を正確に捉えている映画です。ジェットコースターみたいに目まぐるしい展開があるわけではないのですが、すごく体感型の作品になっている思いました。私の周りで、「怖そうだから、ちょっと今回観るのは無理かも」と言う人もいるのですが、お化けのホラーではなく、人間というジャンルのホラーだと監督もおっしゃっているので、ぜひ食わず嫌いせずに臆せず観ていただきたいです。

(おわり)

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