メイド5人によるロックバンド・BAND-MAIDが12月11日、3rdアルバム『CONQUEROR』をリリース。前作『WORLD DOMINATION』から約2年ぶりと今作は、過去最大のボリュームでシングル曲2曲と、お給仕(ライブ)で披露されている「endless Story」、David BowieやT.Rexなどを手がけた世界的音楽プロデューサー・トニー・ヴィスコンティからのオファーを受け制作された「The Dragon Cries」など全15曲を収録。ジャケットからも変化を感じられるように、5人の進化への想いが十二分に反映された1枚に仕上がった。インタビューでは、時間を掛けて制作されたアルバムの制作背景や、今彼女たちが考えるBAND-MAIDの未来について5人に話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=富田味我】
もっと近いゴールを立てる
――15曲と大ボリュームのアルバムが出来たわけですが、BAND-MAIDはアルバムとなると基本曲数多いですよね。
小鳩ミク 確かに多いんですけど、15曲というのは初めてですっぽ。実は今回も前作と同じくらい12曲から13曲ぐらいになる予定でした。気づいたら15曲になってましたっぽ。
――なんでも、最初はアルバムを作るという感じではなかったみたいですね。
小鳩ミク そうですっぽ。途中からアルバムを制作しようとなって、作ってあった曲を集めたものになりました。なので、楽曲の時系列はバラバラなんですっぽ。
――アルバムの中で最初に作った曲は?
KANAMI 「endless Story」と「輪廻」が割と最初の方に出来ました。「輪廻」はストックとしてあった曲だったので。
SAIKI レコーディングした順番だと「endless Story」と「輪廻」、「Wonderland」「azure」だったと思います。
――「endless Story」からは、アリーナやスタジアムなど大きな会場でのパフォーマンスを想定して作られたということもあり、スケールの大きな楽曲になっていますが、昨年から皆さんの意識変化があったとお聞きしたのですが、そのあたりも関係しているのでしょうか。
小鳩ミク 1〜2年前からみんなで話し合う機会が増えたんですっぽ。その中で1年後、2年後のビジョンを考えながら計画を立てていくというのを始めたので、そこからみんなの意識が変化していったんじゃないのかなと思うんですっぽ。
SAIKI 世界征服が目標というところではメンバーの意識は一緒だったんですけど、具体的なところを話し合って。その中で近々の予定を立てたほうがいいんじゃないかとなりまして。もっと近いゴールを立てて、逆算して活動していくのが、私達の性に合っているんです。
小鳩ミク そこでまずアリーナやスタジアムでお給仕が出来るようになりたいと、目標を立てて「endless Story」が出来たんですっぽ。
SAIKI 2年後には立ちたいですね。
――目標は明確に決めたほうがいいですよね。話し合いが多くなると、意見のぶつかり合いとかもあったんじゃないですか。
小鳩ミク ぶつかりあいはそんなにないと思うんですけど、ふざけてしまうことはよくありますっぽ。特にMISAとAKANEのリズム隊の2人がきっかけになって、ヒートアップして盛り上がってグルーヴを作り始めて(笑)。
――最高のリズム隊ですね(笑)。「endless Story」はどのように作っていかれたのでしょうか。
KANAMI この曲は私があるアーティストさんのライブを観に、千葉のzozoマリンスタジアムに行ったのがきっかけでした。自分たちもここに立ちたい、というイメージが浮かんできたので、帰りのバスの中でスマホのボイスメモにメロディを録音しました。少し時間が経ってからなんですけど、そこから形にしていきました。やっぱり他のアーティストさんのライブを観ることは良い刺激になるなと思いました。この曲をお給仕で成長させてアリーナやドームに連れていけたらなと思います。
――さて、今作で特にお気に入り、聴いてほしい曲をそれぞれ教えて下さい。
MISA 「flying high」は私の趣味が全開の楽曲になっています。UK調のブリットポップのベースがイメージできたので、それを思い浮かべながら弾きました。(※1990年代にロンドンやマンチェスターを中心に発生したイギリスのポピュラー音楽ムーブメント)
小鳩ミク 今回はベースがすごく動いている曲がたくさんあるっぽ。
――「輪廻」もアグレッシブですよね。
MISA 「輪廻」もベースはすごく動いています。今回は制作時間、考える時間がけっこうあったので、フレーズも練りました。逆に短時間で作ったのが「Dilemma」なんですけど、それも動き続けているフレーズで(笑)。ずっと走り続けているかのような感じなんです。
――コピーするのも難しそうですね…。今回もSAIKIさんにベースのフレーズを送って確認してもらったり?
MISA 送りました(笑)。
SAIKI きっと褒めてほしんだなと思ったので「あなたは天才だ!」と返事をしました(笑)。
――AKANEさんはいかがですか。すごくリズムの振り幅が大きいアルバムなんじゃないかなと思ったのですが。
AKANE 幅というのはすごくあります。例えば「PAGE」や「Mirage」、「At the drop of a hat」、「Wonderland」はすごくこまかいビートが多くて、間のとり方というのを意識してレコーディングに臨みました。あと、「PAGE」に関しては、生音と打ち込みの音をミックスするということで、初めてバスドラを外して、それ以外のパーツだけでレコーディングしました。
――チャレンジングな1曲だったんですね。
AKANE やりづらかったんですけど、すごく新鮮なレコーディングでした。あと、「輪廻」は遂にここまでバスドラを踏む時がきたかと(笑)。デモを聴いたときはびっくりしましたから。「輪廻」と「カタルシス」はかなり大変なのでチャレンジのしがいがありました。「輪廻」は足が大変で、「カタルシス」は体全体が大変で、ドラマーとしてすごく難しいビートになっているので、一番苦戦した曲です。
――キッズに挑戦してもらいたいですね。小鳩さんはいかがでしょうか。
小鳩ミク 「The Dragon Cries」以外は全部歌詞を書かせていただいたんですけど、制作期間が長かったので、締切に追われるような感じではなかったんですっぽ。なので、これまでのようにスケジュールが切羽詰まっているときは、同じ雰囲気にならないようにと気を遣って書いたりしていたんですっぽ。
――時期が近いから似てきてしまうと。
小鳩ミク そうなんですっぽ。でも今回は書いている時期がバラツキがあったので、歌詞も幅広く書けたんじゃないかなと思っていますっぽ。ストーリーだったり、使いたかった言葉だったり。あと、今回は宗教的な難しい用語を取り入れました。
――確かに聞き馴染みのない言葉もあります。
小鳩ミク 海外のご主人さま、お嬢さまはBAND-MAIDの曲で日本語を勉強してくださっている方も多くて、意味について質問もきたりするんですっぽ。特に今回は海外の方には勉強になる日本語も多く入っていると思っていて、「Blooming」に出てくる<不妄語戒に背いて>とかは日本の方でも馴染みがないと思いますっぽ。今回は色んな方に聴いてほしいなと特に思っていて、男女関係なく、自分の感覚に置き換えてもらって感じてもらえたらいいなと思って歌詞を考えましたっぽ。
――日本語もそうなんですけど、英語も攻めた使い方をしているなと思いました。
小鳩ミク 英語は勉強しつつなんですけど、英語でこういう気持ちを伝えたいんですけど、なんて言ったらいいのか実際に英語を話せる先生に相談しながら書いていきました。口語で使われるような言葉になっていると思います。海外の方にもニュアンスが伝わればいいなというのは意識しましたっぽ。
――SAIKIさんの特にこだわった曲は。
SAIKI 小鳩は曲のイメージを反映した歌詞を書いてくれていると思うんですけど、あえて歌詞の意味は聞かないようにして、私が最初に受けたインスピレーションで歌うようにしています。
――最初に感じたイメージを大切にしているんですね。特に歌詞を見てグッと来た曲はありましたか。
SAIKI どの曲ももちろん良いんですけど「PAGE」かな。この曲の歌詞を書いたのがアルバム制作の最後の方で、小鳩から「歌詞のネタがほしい」と言われて美容系と私が提案して出来たので。今まで強い女性とか一緒に戦うというものが多かったので、いつまでも女性は美しくいたいものだし、化粧品のタイアップが取れたらなと思って美容を提案したんです。
――そういう計算も入っていて(笑)。
SAIKI 最近はお嬢さまのファンも増えてきたので、お嬢さまに向けての言葉とか気持ちを書いたらいいんじゃないかと思いました。