あらゆる可能性を考えて歌っていきたい
――そしてラストの「夕焼け」は、ノスタルジックなバラードになっています。
ギターの池窪浩一さんと、同時にレコーディングしました。人間が発する声と息、ギターが奏でる音の生感をすごく出したくて、リアルさを追求したいと思った曲です。もちろんCDだしライブではないけど、ライブ感を感じてもらえたら嬉しいです。
――声がすごく近い感じがしました。
声の出し方をそうしてみました。裏声で、息をここまで多めにしたのは初めてです。この曲には、そういう私のもどかしさやリアルな部分も出したほうが良いと思って、こういう歌い方になりました。
――息を多めにすることで、どういう効果が得られるんでしょうか? より浮遊感が出るとか?
息を多くしたのは、少しカサカサした感じを出したかったからで。かすれ声までいくと雑音になってしまうけど、そこまでいかない感じで。息ってリアルで、生きた人の声を聴かせたかったから、そういう声を狙って出しています。1番のサビはそうやって歌って、2番のサビはもっと強い気持ちで、もうちょっと芯のある声を意識しました。
――フレーズごとにすごく細かく考えられていて、“ボーカルおたく”という感じですね。
そこまで考えるようになりました。でも、もっとボーカルおたくの方はたくさんいますから、私なんかまだ“へなちょこヒヨコ”です。そんな私でも、こうやってこだわりを持てるようになったのは、ソロになってからです。以前はそういう気持ちがなかったわけではありませんけど、求められるものが他にあって。でも今は、私もやってみて良いのかな、やってみたいな、と思うようになりました。ソロとしての自覚と言いますか。なので、そういう挑戦する気持ちを忘れないように、曲選びをしています。
――曲が、そういう歌い方とか歌に対する意識を呼んでくれると。
はい。こういう歌い方がいいんじゃないかとか、考えさせてくれます。だから、そういう曲と出会えることは、歌い手として本当にありがたいです。音楽には決まりがない。いろんなことをやっていいんだなと、最近は改めて思っています。自分で限界を決めちゃいけないし、あらゆる可能性を考えて歌っていきたいと思っています。
――今、歌うことがより楽しい?
すごく楽しいです。良い意味で、今いろいろ試せていて。そこで自分が納得するまで考えることが、応援してくださるみなさんへのお返しになると言うか。お客さんに聴いていただくものなので、ライブで歌うことも考えながら、これならみんなが楽しく聴けるんじゃないか、これならゆったりして胸に響いてくれるんじゃないか。そういうことを常に考えて歌っています。すべては、お客さんとライブありきです。
――12月には大阪と東京で『Wakana Winter Special Live 2019 ~瞬き~』を開催しますね。
曲は録ったら終わりではなくて、一生付き合って歌っていくものだと思っていて。だから音域のこともすごく考えるんですけど、「eve」はすごくキーが高いので、ライブで失敗しないか今からハラハラしています。
――ライブのサブタイトルとなる「瞬き」というのは、どういう気持ちで付けたのですか?
大阪と東京でそれぞれ昼と夜2公演ずつ開催するのですが、それぞれの輝きと瞬間を見ていただきたいと思って付けました。「Winter Special」と付いているのも、EPの音源をそのままやるのではなく、アコースティックだったりちょっと違う味わいでお届けしたいと思ったから、こういうタイトルにしました。その日、その回で、違うものを見てほしいという気持ちです。
(おわり)