Wakana「みんなでもっと先の景色を」音楽を生で届ける意義
INTERVIEW

Wakana

「みんなでもっと先の景色を」音楽を生で届ける意義

記者：榑林史章

撮影:

掲載：21年08月14日

読了時間：約7分

　シンガーのWakanaが11日、Blu-ray作品『Spring Live 〜magic moment〜 2021』をリリース。４月24日に東京・大手町三井ホールにて開催したライブを収録した作品で、昨年２月にリリースした2ndアルバム『magic moment』からの楽曲のほか、玉置浩二・竹内まりやのカバーも収録。Wakanaにとってどんなライブになったのか、話を聞いた。【取材＝榑林史章】

１年かけてセットリストを作り直した

『Spring Live 〜magic moment〜 2021』通常盤ジャケ写

−−Blu-ray作品『Spring Live 〜magic moment〜 2021』は、今年４月24日に開催したライブの模様を収録。昨年３月14日から延期されたもので、セットリストなど改めて今回のために変更されたそうですね。

　はい。１年前のセットリストを改めて見て、もっとお客さんの目線を取り入れたいと思いました。ここにこの曲が来たほうが、みんなはこう思ってくれるんじゃないか、次にこの曲へ行ったほうがみんなは楽しいんじゃないかと、お客さんの視点を大事にしながら考えました。

　最初に作っていたセットリストは2ndアルバム『magic moment』をリリースしてすぐの時期だったので、曲の完成度と理解力がまだ浅かったかもしれません。それを１年かけて、自分の中でもっと噛み砕いていったものがあるからこその気持ちで、新しく考えたのが今回のセットリストです。

−−ここには、ライブができる喜びとかお客さんと直接会えるうれしさなども込められていると思いました。特にお気に入りの流れはありますか？

　序盤の「君だけのステージ」は、MCがあった後にみんなで手拍子をして、「442」で高揚感を感じさせる自分なりの新しいアプローチを見せて、「ひらり ひらり」でしっとり落とすという流れで、自分の中では萌えポイントです（笑）。

−−そこからの「夕焼け」から「アキノサクラ Acoustic ver. 」「myself」という流れも、すごく心地よかったです。

　６曲目の「夕焼け」から11曲目の「オレンジ」までは、アコースティックコーナーというイメージです。あまり長くしっとりめの曲が続くのはよくないかな？　とも考えたんですけど……。カバーが２曲あって、６曲アコースティックが続いても、決して眠くはならないだろうと思いました。

−−カバーは、どういう経緯でやることになったのですか？

Wakana

　昨年アルバム『Wakana Covers ～Anime Classics～』をリリースさせていただき、コンサートも開催させていただいて、クラシックのスタイルではアニメソングのカバーをやっているんです。今回のライブはバンドスタイルなので、クラシックとは差別化する形で、カバーする楽曲もJ-POPや海外POPSなどの曲をやりたいと思っていました。元のセットリストではそういったカバーがなかったので、せっかく変えられるなら入れたいと思って。

−−Wakanaさんの、バンドスタイルでのライブの定番として、アニソン以外のカバーをやって行こうと。今回は、玉置浩二さんの「メロディー」と竹内まりやさんの「元気を出して」をカバーしています。この２曲は、どのような思いで選曲されたのですか？

　「メロディー」は、音楽監督の武部聡志（作・編曲家、音楽プロデューサー）さんとの打ち合わせで「カバーをやりたいです」とお話をさせていただいた時に、「じゃあ１曲はピアノ１本でやろう」と、逆に提案してくださったのがこの曲です。初めて聴いた曲だったのですが、すごくいい曲だと思って、私自身もすぐこの曲を歌いたいと思いました。聴いたその日のうちにキー合わせをして、「このキーでアレンジをお願いします」と連絡したほどです。

−−「メロディー」は発売当時ドラマの主題歌であったと同時に、ニュース番組のエンディングテーマにもなっていて。世界のいろんな状況を憂い、癒やすようなイメージもあったので、それで今この曲だったのかなと思いました。

　確かに武部さんは「メッセージ性があるほうがいい」とおっしゃっていたので、きっとそういうことも含めた上で選曲してくださったのだと思います。

−−竹内まりやさんの「元気を出して」は、タイトルからも今届けたいとする意図が伝わって来ます。

　「元気を出して」の後に「オレンジ」を歌ったのですが、「オレンジ」の歌詞の最後に〈あなたの笑顔に逢いたいから〉というフレーズがあって、それに繋がることも考えて「元気を出して」を選曲しました。

−−ラストの「あとひとつ」も素晴らしかったです。

　「あとひとつ」は、今までのライブではピアノ１本で歌っていたのですが、今回はバンドメンバーの皆さんと一緒にお届けしたいと思って、武部さんにバンドアレンジをしていただきました。

−−ライブの最後は泣いていましたが、それは延期になっていたライブがやっとできた喜びもあって？

　やっと観客の皆さんとお会いできたうれしさもあれば、ライブが開催できてよかったという気持ち。あと、ライブが思い通りにできない、そんな中でもみんなと会えて本当に良かったという安堵の気持ちも、あの涙にはあったと思います。だけど、どんどん変わって行く世の中だからこそ、みんなでもっと先の景色を見に行こうねという思いもあります。

Wakanaにとってライブはライフワーク

Wakana

−−初回限定盤にはドキュメント映像も収録。その中で武部さんが、「Wakanaの声には独特の波動がある」と評されていて。「波動」って、何かすごいなって思いました。

　私も「波動？」って（笑）。武部さんからは、以前に浮遊感があると言われたことがあって、それが今回「波動」に変わっていたのでびっくりしました。でも、ただ浮遊しているものと比べたら、波動ってちょっと力が入っているし実態が感じられて、評価が高まったのかなといい意味で受け止めています。

−−きっと、より伝わるものになっているということなんでしょうね。リハーサル映像も収録されていますが、リハは主にどういうことを重点的にやったのですか？

　バンドの音圧に自分の声が負けず、ちゃんと溶け合うことができるか。あとは、武部さんのピアノだけで歌う曲やカバーのアレンジが、どういうものになったのかの確認とか、細かいところではイントロや間奏の長さの確認もあります。

−−事前にアレンジが音源で送られて来ないんですか？

　そうですね。そこがレコーディングと違うところです。リハーサルは楽しかったですよ。どう来るか分からないから。

−−事前に全部決めて共有してもらっておいたほうが、あとはそれをやるだけなので楽じゃないですか？

　音楽は、その場で生まれるものを楽しむ醍醐味もあると思うんですよね。武部さんはテレビの生放送のお仕事も多いから、その場で相談して対応することにも慣れていらっしゃるし、ミュージシャンの方もそういった変更などには慣れている印象です。そういう確認をするのがリハーサルなんですよ。もしも私が、とんちんかんなところで歌に入ってしまったとしても、あたかもそうだったかのように、その場の対応力できれいにまとめてくださるんです。

−−なるほど。プロ中のプロは、やっぱりすごいですね。

　だからこの日のライブは、そういう現場を楽しもうという気持ちもありました。何が起きるか分からないことを楽しみたかった。だから、自分のやるべきところだけはきっちりやっておいて、あとはどうにでもできるように余白を残しておいた感じです。そう思えたのも、武部さんやミュージシャンの皆さんへの信頼感があればこそです。

−−バンド演奏での変更もあったのですか？

　例えば「恋はいつも」の間奏で、ミュージシャンの皆さんがソロ演奏をするところは長くしてもらいました。去年のリハーサル音源を振り返ったら、短いなって思ったんです。お客さんは、もっと聴きたいと思うんじゃないかと。それで倍にしてもらったら、バンドのみんな一人一人の音をしっかりと楽しむことができたし、より一体感を感じることができたんですね。それによって本編ラストの「magic moment」で、この１年の思いをまとめることができた気がしました。

−−この瞬間のためにやって来たと。

　『magic moment』というアルバムを作ったのも、このタイトルにしたのも、全部この瞬間のためだった。すべてが昇華されたみたいな気持ちでした。

−−では最後に、Wakanaさんにとってライブとは？

　ライフワークです。自分の人生において、生で歌うことや届けることは大事なことだと改めて気づきました。それはつまり、ライブなんだと思います。場所とか大きさとか楽器とか音楽ジャンルに関係なく、音楽を生で届ける、それをどう料理するかが、この上なく楽しい。

（おわり）

作品情報

Wakana
Live Blu-ray『Wakana Spring Live ～magic moment～ 2021』
初回限定盤　VIZL-1914　8,580円
通常盤　VIXL-344　6,380円
ビクターエンタテインメント

＜収録曲＞

1.揺れる春
2.where
3.君だけのステージ
4.442
5.ひらり ひらり
6.夕焼け
7.アキノサクラ Acoustic ver.
8.myself
9.メロディー（玉置浩二 Cover）
10.元気を出して（竹内まりや Cover）
11.オレンジ
12.恋はいつも
13.Happy Hello Day
14.magic moment

アンコール
15.時を越える夜に
16.春を待つ（Kalafina Cover）
17.あとひとつ

ライブ情報

Wakana Anime Classic 2021

８月15日　大阪・住友生命いずみホール
９月４日　東京・紀尾井ホール（昼・夜２回公演）

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