エンド・オブ・ステイツ

 コンサート、映画、舞台など、大人も楽しめる日本の良質なエンターテインメントをおススメする新感覚情報番組『japanぐる〜ヴ』(BS朝日、毎週土曜深夜1時〜2時)。11月9日の放送では、映画評論家の添野知生と松崎健夫が、映画『エンド・オブ・ステイツ』と『国家が破産する日』を紹介。

『エンド・オブ〜』シリーズでもっともパワーアップした3作目

エンド・オブ・ステイツ

 松崎が紹介した『エンド・オブ・ステイツ』は、『エンド・オブ・ホワイトハウス』(2013年)、『エンド・オブ・キングダム』(2016年)に続く、ジェラルド・バトラーが最強のシークレットサービスを演じるアクションシリーズの最新作。シリーズ3作目にして、初めて全米初登場1位を記録して話題の作品。

 主演のジェラルド・バトラーは、『ジオストーム』『ハンターキラー 潜航せよ』などにも出演し、今やハリウッド屈指のアクションスター。そんなジェラルド・バトラーが演じるのが、シークレットサービスのエージェント=マイク。大量のドローン爆弾から、モーガン・フリーマンが演じるアメリカ合衆国大統領トランブルを守ったマイクだったが、激しい攻撃の中で意識を失ってしまう。目を覚ますとマイクは、大統領暗殺を企てた容疑者として追われる立場になっていた。松崎は、マイクが追い詰められた先で助けを求めた父親を演じたニック・ノルティに注目。

 「ニック・ノルティは、1970〜80年代に『48時間』などのアクション映画で活躍した俳優で、当時なら、主人公をニック・ノルティが演じてもおかしくない人物。このニック・ノルティが演じるマイクの父親も、かつては政府の仕事をしていたが、今は世捨て人になっていて。実は、その父親が最強だというのが面白い。ジェラルド・バトラー以上に過激なことをやるのが見どころ」

 この映画で気になるのが、マイクを陥れた敵は誰なのかということ。「昨今のハリウッドのアクション映画では、明確な敵を描きにくくなっていることが、このシリーズを見ていると分かる」と、松崎は話す。「本当の敵は外ではなく中にいることを描くのが、今のハリウッドの主流になっている。このシリーズは、敵役の変遷が分かって面白い」

 シリーズの中でも今までで一番迫力のある銃撃戦や爆破シーンもあるとのこと。もっともパワーアップした3作目と太鼓判を押す。この機会に1作目、2作目も合わせて楽しみたい。

まったく他人ごとではない『国家が破産する日』

国家が破産する日

 近年の韓国映画は、『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』、『タクシー運転手 約束は海を越えて』、『1987、ある闘いの真実』と、社会派で骨太の映画がどんどん作られていると、添野。1997年11月に韓国で起きた通貨危機をテーマにした『国家が破産する日』を紹介し、「国家と経済をテーマにした超骨太の韓国映画」と賞賛した。

 韓国銀行の通貨政策チーム長ハン(キム・ヘス)は通貨危機を予測するが、政府の対応は遅れ、国民には公示せず非公式の対策チームを立ち上げる。同じ頃、危機の兆候を独自にキャッチした金融コンサルタントのユン(ユ・アイン)は、一世一代の大勝負に出る。自国通貨の価値が加速度的に下落する中、国家は生き残ることが出来るのか。未曾有の金融危機に直面した国家の裏側を描いた作品。添野は、「同じ時期に日本ではバブル崩壊後で、銀行や証券会社が次々に倒産して騒ぎになったことからも、まったく他人ごとではない」と、日本でもいつ起きるか分からない怖さがあると話す。

 「映画ファンなら思い出すでしょう。日本にもこういう映画があったなと。1999年の映画『金融腐食列島「呪縛」』です。これは奇しくも同じ、1997年に起きた第一勧業銀行利益供与事件をモデルにした映画で、この『国家が破産する日』とは裏表の関係にあると思う。『金融腐食列島』はあくまでもエンターテインメントとして描き、安心して見られる作品だった。『国家が破産する日』は、もっと怖い。社会に対する告発の部分があって、映画の中では、巨悪はまだ社会の中でのうのうと生き延びていると描いている。エンターテインメントだけど本気が込められていると感じる」

国家が破産する日

『エンド・オブ・ステイツ』と『国家が破産する日』。ベクトルは違えど、どちらも国家レベルのスケールの大きさは共通。黒幕の存在による怖さが、後味として残る両作だ。

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