ミュージシャンのLEO今井が9月24日、東京・渋谷CLUB QUATTROで2マンライブ“「大都会ツアー」LEO IMAI×人間椅子”をおこなった。「大都会ツアー」とは、2017年よりシンパシーや敬愛を寄せるアーティストを対バン相手に、自身のバンドLEO IMAI [LEO今井 岡村夏彦 シゲクニ 白根賢一]とおこなう不定期開催のLEO今井自主企画ツーマンライブ。今井が厳選した5組のアーティストと共に8月30日の大阪梅田Shangri-Laを皮切りに、ファイナル公演となる10月25日の東京マイナビBLITZ赤坂まで全国5カ所で開催されるというもの。ツアー3公演目、人間椅子との2マンライブとなった渋谷公演のもようを以下にレポートする。【取材=平吉賢治】

唯一無二なパフォーマンスで圧倒する30周年・人間椅子

人間椅子(撮影=JUN TSUNEDA)

 重厚なSEと共にまずは人間椅子のメンバーが一人ずつ登場し、オーディエンスは温かい拍手で迎えた。「超自然現象」から始まったライブは、和嶋慎治(Gt/Vo)、鈴木研一(Ba/Vo)が重ねるヘヴィなリフにナカジマノブ(Dr/Vo)のタイトなドラミング、3ピースとは思えないほどの圧倒的音圧を渋谷CLUB QUATTROに叩きつけた。人間椅子が放つ“気”を拾うように、オーディエンスは高らかに両手を掲げてライブ開始から即座に一体感を見せ、あまりにも鋭い立ち上がりでQUATTROに火を点けた。

 タイトで強烈なビート、そしてフィードバック混じりに咆哮するSGによるギターサウンド、更には悪魔的音階でボトムを支えるベースラインと、魂を持っていかれるような人間椅子のアンサンブルは唯一無二のグルーヴを醸していた。そんななか飛び出る「おばんでございます!」という和嶋の柔らかい挨拶も加わり、オーディエンスの心は人間椅子にがっちり掴まれているようだった。

 30周年の人間椅子はMCで「あえて新人バンドと言いましょうよ。我々は」と、控えめなコメントをするも、やはりその存在感は圧倒的だ。続く「鏡地獄」では妖術のようなサウンドのギターバッキングのなかで漂う和嶋のボーカル、“これぞ人間椅子”という生々しく深い味わいのサウンドアプローチを次々と披露してくれた。

 プログレッシブ・ロック的な楽曲展開、白塗りのいでたちでベースを顔でも弾いているような鈴木の血がたぎるプレイ、“アニキ”ことナカジマのヘヴィな打拍とパフォーマンスは、30年というキャリアの真髄を音としてビジュアルとしても威風堂々と示していた。

 楽曲「どだればち」ではLEO今井をステージに迎え入れ、人間椅子とのコラボレーションが展開された。今井の“合いの手”的なボーカルがシャウト混じりに光り、オーディエンスは大歓声のレスポンスを見せた。同曲の長尺の間奏部では和嶋のギターソロがこれでもかというほど吠えまくった。ジミ・ヘンドリックスばりにギターを歯で弾くというパフォーマンスも見せつつ、続く「無情のスキャット」では3人のシンフォニックなアンサンブルに予想がつかない奇想天外な展開と、ありとあらゆる魅力に溢れるライブを走らせた。

 そして「地獄小僧」ではナカジマが熱量たっぷりのボーカルを魅せ、鳴り止まぬ“アニキ”コールに大ハッスルの名演を見せたナカジマは会場のテンションを更に盛り上げてくれた。

 人間椅子の世界観は一度ライブで味わうと一発でやみつきになってしまうような、何かを超越したエネルギーを体の芯から脳天まで届けてくれるような恐悦至極のパフォーマンスだった。そしてライブはLEO IMAIのステージへ――。

意識に深く残る世界観を展開するLEO IMAI

LEO IMAI(撮影=JUN TSUNEDA)

 人間椅子の煮えたぎるような激熱のパフォーマンスにより十分温まったフロアをLEO IMAIはどう展開させるのか。期待に胸を膨らませているとLEO IMAIメンバーの4人が登場し、今井は「最初にお経を唱えます」というトリッキーな出だしからライブを走らせた。パーカッシブなボーカルアクションから楽曲「Omen Man」へと突入し、1曲目からバキバキの変拍子で攻めるLEO IMAIのステージはヘヴィなテーマに怒涛の楽曲展開と、容赦無く濃厚なサウンドを飛散させた。

 7/8拍子メインの「Bite」ではボーカル・ダブというスパイスも光るなか、シャウト混じりの歌唱でバンドサウンドを膨張させ、プログレ、オルタナティブ、あらゆるロックの要素と様々な音楽性の再解釈、再構築といった表現を縦横無尽にサウンド化させていた。

 LEO IMAIはギター、ベース、ドラム、シンセサイザーという編成だが、「ここまでできるのか」というほどの楽曲展開に音符と休符が飛沫のように弾けるアンサンブルを魅せる。何種ものビートアプローチ、そして変拍子に激しいボーカルアクションと、隅々まで色彩が施されたようなテイストで、あらゆる角度から我々の聴覚と視覚を虜にしてくれた。イントロで歓声が沸き起こった「Fresh Horses」ではほぼワンコードでコーラスを重ねていくというペースで楽曲を走らせ、会場中の熱気を集めてからのバンドイン。この瞬間は身震いものの爆発力を感じさせられた。

 ライブ中盤からはZAZEN BOYSや前野健太のカバーを交えつつのカラフルなセットリストを展開させる。今井はMCで多くは語らないライブスタイルで、ありとあらゆる音の景色をオーディエンスに浴びせた。ビートの拍とボーカルがユニゾンするアプローチ、独特のグルーヴに緩急の効いた楽曲展開、光沢感溢れるノイズサウンド、そしてトリッキーかつハードコアな轟音アンサンブル。LEO IMAIの作り出すクッキリとした輪郭の世界観は、オーディエンスの意識の底まで向かっていくようだった。

 そして、ストレートな楽曲展開の「Tokyo Lights」でLEO IMAIのエネルギッシュなパワーが真っすぐ放出され、ボルテージ最高潮のまま本編が終了。最終曲フィニッシュで拍手・歓声が一旦鳴り止む、という反応ではなく、エンディングのタイミングでのオーディエンスの熱量はそのままアンコールへの歓声へと繋がっていた。それは、ライブに対する絶好のレスポンスを如実に物語っているようだった。

LEO IMAI×人間椅子(撮影=JUN TSUNEDA)

 アンコールではLEO今井によるブラック・サバスの弾き語りカバーを交えつつ、ラストは人間椅子を再び迎え入れての「どだればち」LEO IMAI×人間椅子バージョンだ。LEO IMAIメンバーの演奏と和嶋のギターの分厚いアンサンブルは圧巻のボリュームだ。鈴木、ナカジマと共に今井はマイクで灼熱のパフォーマンスを繰り広げ、「大都会ツアー」渋谷CLUB QUATTROは大団円となった。

 この日の2マンライブはLEO IMAI・人間椅子ともにあまりにも濃厚なパフォーマンスが披露され、オーディエンスを圧倒していた。ライブを体験した者の脳裏に深く刻まれるような、あまりにも生々しく記憶に残るステージだったのではないだろうか――。

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