板野友美「自分のなかにないと嘘っぽくなる」芝居の心構え、経験は説得力に
INTERVIEW

板野友美「自分のなかにないと嘘っぽくなる」芝居の心構え、経験は説得力に


記者:木村武雄

撮影:

掲載:19年09月26日

読了時間:約12分

挑戦してみたい、“等身大”天真爛漫な女性の役

――先ほども話にありましたが、6月1日のワンマンライブは良くて。ストーリー性もあったし、パフォーマンス的にももう一段階上に行けたような気もします。

 嬉しい!

――女優業も活発になってきて、音楽もあって、すごく充実しているようにも見えます。今後はどうですか?

 6月1日のライブは久しぶりのダンスナンバーだったので、3カ月前からジムにも通って体力作りして。10月からはツアーも始まるので、それに向けて改めて体力づくりをします。それと、ミニアルバムが10月にリリースされることが決まっていて、6月1日のライブではダンスナンバーをたくさんやりましたが、今回のアルバムもダンスナンバーを中心にした作品にしたいと思っていて。それで10月からのツアーにはそれらを追加したものにしたいと思っています。お芝居では、『プリズン13』ではクール目な役でしたが、『愛しのナニワ飯』(テレビ大阪)ではテレビ局で働くADの役でちょっとだけ天真爛漫な自由な役でしたので、今後はコメディとか、天真爛漫な女性の役を演じてみたいなと思っています。それが本来の自分に近いと思うので、そういう役をやってみたいです。

――最後に、改めて『プリズン13』への思いを教えてください。

 見るのに目を手で覆いたくなるようなシーンもたくさんあると思います。人間が極限まで追い込まれるシーンもあり、人それぞれ様々な意見はあると思いますが、私自身はこの作品を通して、自分のことだけを考えるのではなくて、その人の立場になって、その人の気持ちを考えて行動することで、映画は小さな世界でしたけど、争い事がなくなったり、平和になる気がしました。お互いに知らない人が集まって、何も悪いことをしていないのに囚人役というだけでさげすまされたり、危機的な状況になると変貌したり、それこそいじめ問題じゃないですが、学校や会社という世界に置き換えても同じような事がおこなわれていると思います。マリのような正義感のある子がもっと強くあってほしいし、強い人が悪いことをするとみんな巻き込まれてしまうので、それを止められる人でありたいなと。難しいことですけど、一人一人がそう思えればいじめや今起きている社会問題が改善されていくのかなと思う。そういう意味でもこの映画を観てそういう問題とも向き合ってほしいなと思います。

あとがき

 「自分のなかにある程度ないと嘘っぽくみえると思う。だから色んなことを見たり、読んだり、経験したりして蓄積するようにしています」

 板野は今回のインタビューでそう語った。

 ここ数年、ドラマや映画の出演が続いている。芝居ともなれば、役を通じて様々な人生を経験する。その役に向き合い、どういう人間なのかを考え尽くす。やがてそれは自身に蓄積され、表現者としての新たな引き出しとなる。彼女の場合、それが音楽にも反映されていく。それが顕著に表れたライブがあった。

 さかのぼること約4カ月前。マイナビBLITZ赤坂のステージに彼女は立っていた。まばゆい光を浴びた彼女はマイクを持ったまま、多くの観客で埋め尽くされた場内を見渡し、笑みを浮かべた。昨年に次ぐワンマンライブ。最近はバラードが中心だったがこの日はダンスナンバーがメイン。キレのあるダンスだけでなく、女性の日常を切り取ったかのような物語性のある演出で観客を魅了した。その演出に彼女の表現者としての進化がみえた。

 「制限を決めずにやりたい」

 過去のインタビューで語った板野の言葉だ。挑戦の結果、様々なものが副産物として得られている。初のバンド編成でのライブしかり、初の作曲しかり。そうした一つ一つの経験が、「板野友美の物語」を華やかにさせている。そして本作『プリズン13』では、男勝りの格闘技ライターを演じた。妹を優しく見守りながらもいざとなれば危険を省みずに奮闘する。「男っぽいところ自分になかったものだったから役作りが大変だった。でも妹は妹に重ねました」。新たな引き出しと自身の経験を役に落とし込んだ。

 板野友美――、一人一人が主人公であるように彼女自身もまた物語の主人公である。歌手として、役者として、そして表現者として、本作もまた彼女自身を形成する大事なピースとなる。そして本作自体も彼女が演じたユマは大事なピースになっている。

(おわり)

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板野友美
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