人の弱さに魅力を感じる
――マリや本作から得たものはありますか?
マリはきっと「お姉ちゃん(ユマ=板野友美)のような意思の強い女性になりたい」というのはあったと思うんです。それがきかっけにあって自分を変えたいと思って今回の実験に参加して。気持ちが弱いところがスタートしたけど、どんどん強くなっていく。そういう姿にすごく勇気をもらいました。
それと、みんなが取り乱していくなかで、マリはすごく冷静に判断してみんなをまとめようとする。一人の人が強く言うことにみんなが合わせるという感覚は、学生生活でもあると思うんです。これは監獄という設定でしたが、学校の教室にも似ているなと思って。世の中にある人間関係というか、上下さというのが出ているので、そういう部分も勉強になったというか、改めて怖いなと思いました。
――確かにいろんな社会問題が詰め込まれていますね。
SNSの怖さも描かれていますよね。Vtuberが出てくるところもそう。Vtuberは顔をさらさずにそういうのが作れてしまうから。それはそれで面白いけど、怖い一面もあるなとも思って。もしかしたら悪用されてしまうかもしれないし。お姉ちゃんたちは映像を通して、マリの居場所が分かりましたけど、逆にそれが分かるということは、もしかしたらインスタグラムのアップしたものから場所を特定されてしまうかもしれないし。
――それと囚人役側の方が最初は自由で、それを奪うために看守側はルールを強化する。でも結果的に自身の首を絞めるという、悪循環も見えましたね。
そうです、結局全員幸せにならないというか。少し違いますけど、生きているなかで幸せなことがあれば不幸なことももちろんあって、みんな平等なんだと思いました。
――ゲーテ(岩井拳士朗)が看守長になって権力を振りかざして傲慢体制を敷きますが、あることを機にその地位から落ちてしまって。彼にも弱いところがあったんだと思えましたね。
そうそう、弱さですよね。そこで私は改めて気づいたことがあって、弱さを知れた時にその人を好きになれるんだ、と。私はそういう作品がすごく好きで、洋画でもハッピーエンドよりもバッドエンドの作品もわりと好きだったりして。
――それは完ぺきではない人間の未熟さ、というところに惹かれる?
そういうところに「あ! 近いところを感じるな」と思って。そう思えた瞬間に仲良くなれたりとか。友達同士でも弱いところを見せてくれた瞬間に「そうだったんだ」と心の距離がすごく近くなる気がするので、だからこそ悩みを打ち明けてくれる存在って大切。家族とかには弱いところを見せられるじゃないですか。そういう人の、ハッピーだけじゃない弱い姿を見えたところが、例えばゲーテにもそういうところが見られて良かったです。「ゲーテもそういうところがあったんだ」って。でもすごい変わっちゃったけど(笑)。
――尻に敷かれぶりがね(笑)
そうそう。逆にGUMIちゃん(矢野優花)が怖かったですけどね(笑)。
――ゲーテは知識人でトップに君臨していたけど、それが脆くも崩壊していって。ゲーテの代わりにトップに君臨するGUMIの弱みはどこにあったですかね。
裏設定としてゲーテが最初、GUMIと付き合っていて結局、月曜(立石晴香)の事も気になり、女の子の嫉妬の部分が裏返って、結局ああいう感じで強く当たるようになって。スタフォード大学の実験は(被験者が)男性だけだったのでまた違いますけど、今回は恋愛要素も含まれているというか、そういうことが起きるのはやっぱり男女が同じ空間にいるからであって、そういう面白さも見どころだと思います。
――そうかと思えば同性愛もあったりして。
そうです。びっくりしちゃいました。自分が一番信頼を寄せていた相手にそうカミングアウトされたことにまず戸惑うと思います。