「人の弱さに魅力を感じるんです」堀田真由の素顔、リアルを生む観察眼
INTERVIEW

「人の弱さに魅力を感じるんです」堀田真由の素顔、リアルを生む観察眼


記者:木村武雄

撮影:堀田真由

掲載:19年08月28日

読了時間:約13分

 堀田真由が、映画『プリズン13』(8月30日公開)で主演を務める。“スタンフォード監獄実験”に基づき、看守と囚人に分かれた12の男女が監獄で7日間過ごす実験を通して人間の本性を描く。監獄実験の被験者で主人公・マリを演じる堀田は、NHK連続テレビ小説『わろてんか』に出演するなど若手注目株の一人だ。「人の弱さに惹かれる」という彼女が、人の強さや弱さが交差する本作にどう向き合ったのか。【取材・撮影=木村陽仁】

リアルになった背景

 「人の弱さに魅力を感じるんです。弱さを知れた時に心の距離が縮まったような気がして。人のことがよく見えると疲れるときもあるけど、でもそれがお芝居にも生かされているので、この性格は嫌いじゃないです」

 柔らかみのある声でそう語る。品の良さを感じるが人懐っこさもある。17年度後期のNHK連続テレビ小説『わろてんか』では主人公・藤岡てんの妹・りん役を演じ、日本テレビ系ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』では生徒・熊沢花恋役を好演した。その人こそ、堀田真由、21歳。いま脚光を浴びる若手注目株の一人だ。

 席に着き、他愛もない話を交わす。そして、彼女の方から切り出した。

 「作品、どうでしたか?」

 初対面とは思えない雰囲気がある。記者は遠慮なくこう答えた。

 「人間の醜いところが露骨に出ていて正直きつく感じて。観ているのが途中から辛くなりました」

 率直な意見にも堀田は嫌な顔を見せず、笑みを浮かべ「そうだと思います」とうなずいた。

 映画は、スタフォード大学で実際におこなわれた監獄実験に基づき制作された。看守と囚人に分かれた男女12人が閉鎖空間のなかで1週間過ごす。上下関係のない並列の立場だった参加者だったが、看守役はより看守に、囚人役はより囚人らしくなっていく。次第に理性も失い、人間の本性がむき出しになっていく。Vtuberのソフィアがネットを介して参加者を募った。応募したなかの一人が堀田演じるマリ。自発的に生まれた上下関係のなかで唯一、平等を訴え続けた女性だ。

 作品の感想は様々あって良いが、こうした意見は演じる側としてはどう感じるのだろうか。

 「作品を観て『しんどいな、気持ちがわるいな』という意見も正解だと思います。作品はいろんな意見があって良いと思いますし、受け取って頂く形というのは人それぞれですから、受け入れたいです」

 柔らかい表情でそう語る。しかし、その言葉からは役者としての覚悟が見え隠れした。和やかな雰囲気のもとで進んだインタビューだったが、彼女の言葉に人間性や信念を見た。堀田真由、人を愛する若き女優――。

――映画への出演が決まった時の心境を教えてください。

 監獄という「密室空間」という点では『3年A組―』にすごく近しいものがあったので「教室の次は監獄か~」と縁を感じて(笑)。こんな実験があったというのは知らなくて、この作品を機に調べました。出演者の皆さんとリアリティを求めて取り組みましたが、実際にはずっとそこで泊っているわけではなく、おうちに帰る時間など密室から外に出ることもあったので、本当にそういう実験をやっていたんだと思うと、恐ろしく感じました。

――撮影に向けては共演者の方とどう向き合いましたか?

 皆さんと結構、「こうしたい、こうした方がいいですよね」という言葉のキャッチボールはすごくさせて頂いたので、チームワークがあった作品でした。撮影期間は短かったんですけど、だからこそ皆さんとガツンと一つになれて頑張れました。

――ずっと長回しをしているような感じでしたね。

 実際にそうでした。

――先ほど「密室空間から外に出ることがあった」という話がありましたが、感情の流れも含めてそれを感じさせない切れ目のない作りでした。

 それは私がお願いをしたところでもあるんです。マリの心情をすごく大事にしたくて、看守から囚人になるタイミングとかは特にそうで。出来たら順撮りというか「ワンシーン目から順に撮っていきたい」とお願いをして、実際にそのようにして下さって。なので、そのままの気持ちでいくことができました。

――役作りという点ではどうですか?

 マリはきっとこういう子なんだろうな、というのは考えましたけど、きっと台本通りにいかないだろうなとも思っていましたし、リアルを大事にしたいとも思っていましたので、「このセリフはこういう強弱をつけて言おうかな」というのは一切考えずに、セリフだけ暗記して、あとはその時思った感情で言葉をしゃべるという感じでした。

――それはなかなか難易度が高いですね。でもそれによってリアルになった、私が最初に言った「つらい」というのもリアルだからこそだと思います。そうなるとアドリブもけっこうありましたか?

 ありました!

――受け手もそれに対応しないといけないから、チームワークは相当ですね。撮影期間が短いので撮影に入る前から取られていた?

 コミュニケーションは撮影中に取ったような感じでした。撮影前に本読みが一度あって、その後に、最初に参加者がカメラの前で挨拶するシーンがあるんですけど、そこだけリハーサルをしたぐらいで、あまりしゃべることもなく撮影が始まりました。

――ではリハーサル自体もほとんどなかった?

 がっつり固めておこなう作品もありますが、今回の作品はそういうのではなくて。本番前に段取りして、リハーサルしてというのはありましたけど、それも撮影が始まってからのことだったので。

堀田真由

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