3ピースロックバンドのthe peggiesが5月29日、4枚目となるニューシングル「スタンドバイミー」をリリースした。今作はTVアニメ『さらざんまい』EDテーマとなっており、他にも多数のタイアップ楽曲に1stアルバム『Hell like Heaven』リリースと、今勢いを見せる胸キュン・オルタナロックのthe peggies。ワンマンツアー『the peggies tour 2019 Hell like Heaven trip』では「曲が届いている」という感触を得たという北澤ゆうほ(Vo, &Gt)に、バンドの今の心境、そして今作のテーマともなる“人との繋がり”にフォーカスし、楽曲に込めた深い想いを語ってもらった。【取材=平吉賢治/撮影=村上順一】
今 the peggies は良い一歩が踏み込めた状態
――最近どんな音楽を聴きますか?
最近はOfficial髭男dismをずっと聴いています。自分の趣味的にはもともとパワーポップ系が好きなのでWEEZERが好きなんです。ああいう重厚なギターサウンドにポップなメロディが乗っているバランスがツボですね。そういうのを探してその時々で聴いている感じです。日本だとYUKIさんとかJUDY AND MARYとか、スピッツ、くるり、歌が良いアーティストが好きです。
――WEEZERもJUDY AND MARYも、北澤さんが生まれた頃にブレイクしたバンドですよね?
そうなんです。中学生や高校生の頃はYouTubeとかでいくらでも音楽が知れる環境にいたので、リアルタイムで鳴っている音楽かどうかという感覚はないんです。新しいものをどんどん知れるのが楽しくて色んな音楽を聴いていたので。ベースの石渡マキコはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかBLANKEY JET CITYが好きで、ドラムの大貫みくはOASISとか、はっぴいえんど、くるりなどです。
――わりと90年代寄りのアーティストを好んでいるのですね。さて、メジャーデビューをして今3年目になり2月にはファーストアルバム『Hell like Heaven』をリリースされました。今バンドはどんな状態ですか?
『Hell like Heaven』は今までメジャーでリリースしたシングル曲に加えて新曲を5曲作って収録して、インディーズのときの楽曲の再収録もあるんです。今まで明るくて元気な曲が多かったんですけど、もちろんそれはthe peggiesの一つの面として嘘のない姿ではあるんです。でもそれだけじゃないというのを、アルバムだからこそできる表現できたらなということで、ダークな一面もアルバムで出すことができたと思います。
それが聴いてくれた方々にも伝わったかなという状態で、今回そのアルバムを経て4枚目のシングルということで、今までとは全然違う「切なくてエモーショナルな感じ」というのは出せたかなと思っています。今バンド的には良い一歩が踏み込めた状態かなという感じです。良い意味で変化できているなと思います。
――「スタンドバイミー」はどんな想いが込められた楽曲?
TVアニメ『さらざんまい』のEDテーマで、そういう意味では書き下ろしではあるんですけど、最初にアニメの資料を頂いて「人との繋がり」というテーマを持った作品だと思ったんです。ネットやSNSが当たり前の日常を送っているなかで、人との繋がりに対する違和感や寂しさを感じることってあるなと思って。アニメのEDテーマの書き下ろしではあるけど、アニメにに寄り添って書くというよりは、テーマが自分が日常で感じることと共通していたので、私達なりに「人との繋がり」というのを「実は儚くて脆いものなんじゃないの?」という喪失感みたいなのを描けたらいいなと思って曲を作り始めました。
――「人との繋がり」について、リアルだったりSNSだったり、儚いなと思うことはありますか?
「自分がこう見られたい」「こう思われたい」「こういう人間でありたい」という、自分で作ってしまっている虚像みたいのに惑わされて素直な気持ちが言えなかったりとか、「本当はこう思っているけど、違う伝え方をしよう」とか、他人と繋がりたいがゆえに自分自身に嘘をつくというのは…日常的な会話でもそういうのはあるのに、それがネットという顔の見えない状態だともっとそういうことが加速していって、どんどんちぐはぐになってるんじゃないかなと思うんです。例えば、いわれのないことで傷付いている姿などを見ると、人と関わるってどういうことなのかなと。「何かを伝えるってどういうことなのかな?」と考えることはけっこうあります。
――「本当はこう思っている」ということを素直に出さないと、人との関わりはねじれていってしまうのでしょうか。
人間、100%素直になれと言われてもそれは不可能なことだとは思うんだけど…自分自身に嘘をついたりするのは、色んなことがねじれていって最終的に取り返しのつかないことになって後悔するよねという気持ちはあります。アニメでも、主人公が好きな子と繋がっていたいがゆえにちょっと嘘をついて偽りの自分を演じる、みたいなシーンもあるので「わかるな」と思いました。自分自身の身の周りの環境に置き換えて歌詞が書けたらいいなと。あまり悩んで書くというより、素直に心のなかにあるモヤモヤをアウトプットできたかなという感じです。
――良かれと思って本心を薄めてオブラートに包んで伝えても、それが度重なるとただの嘘になってしまうこともありますね。
そうなんです。嘘は嘘でしかカバーできなくなってしまうと。最終的に私がゴールとして言いたいのは、嘘を全くつかないこと、「こう思われたい」という自分の虚像をつくらないことは不可能に近いので、それも自分自身の欲望として受け入れたうえで、そういう欲望があるからこそ拓かれる明るい未来だったりとか、そういうものにもっと目を向けて。自分自身の駄目でどうしようもない部分というのは、もはや諦めて受け入れてみてもいいんじゃないのという気持ちも伝わるといいなと思いました。
――誰もがうっすら感じていながらも、どうしたらいいかわからない点ではないかと思います。
「嘘付いちゃだめだよ」とか「偽っちゃだめだよ」と言うつもりは全然なくて、「そうだよね、しんどいよね。それって半分しょうがないよね」みたいな。受け入れて自分で出口を見つけていくしかないんじゃないのという、そういうスタンスを表現できたらなと思います。真実というのが常に正しいわけではないし、だからこそ人は嘘をつくし、嘘をついた自分自身に苦しまされてしまってりすると思うんです。
――人は良かれと思った嘘でも、そうでない嘘でも、嘘をつくと辛くなってしまうのは何故でしょう?
みんな少なからず善人でいたいという意識があるからだと思うんですけど…悪い人になりたくない、責められたくない、怒られたくないとか、そういう気持ちがあるからこそ。怒られたくないから嘘をついたはずなのに、罪で罪を重ねているというか。
――怒られるのは基本的に嫌なんですけど、怒られたり咎められたりダメ出しを受けないと人間は成長しないという側面もあると思います。それには嘘ついてキツい指摘などを免れるより、素直に受けた方が良いのでしょうか。
素直であることが人間一番大事だと思うんです。でもそれは正直な人間であるとか良い子であることとはまた違って、自分の悪い部分やできていないところに対しても素直な気持ちで受け入れて、「自分はできないんだよね」と認めるということが一番素直な人間のあり方じゃないかなって思うんです。良いところにも悪いところにも、素直に自分からちゃんと見つめる勇気を持つ人間であることというのが大事なんじゃないかなということは、わりとライブのMCでも、やんわりとみんなに伝えられるといいなと思いながら喋っています。