Do As Infinity「一緒に歳を重ねた曲」新たな装いで20年の活動振り返る

楽曲の新たなポテンシャルが引き出されたアレンジ

大渡亮

――リアレンジされた曲はガラッと雰囲気が変わったことに加え、キーが移調していたことにとても斬新さを感じました。

大渡亮　キーは『Lounge』というだけあって、少し落ち着いたテイストになるようにコントロールしてあります。一音、半音下がっているのがほとんどだと思います。

――今作のアレンジの雰囲気と非常に合っていると感じるキーになっていました。オリジナルのバージョンと今回のアレンジとで、伴さんが歌う際に気を付けたポイントなどはありますか？

伴都美子　私は楽器としてピアノが凄く好きでして。落ち着いた雰囲気もあり、ふくよかさもあり、ずっと聴いていたい楽器なんです。今回Sinさんにアレンジをお願いして届いた音源の雰囲気に乗っかるような気持ちで全曲歌いました。オリジナルとはまた違う雰囲気だったりするので、あまり気張らずにというか力み過ぎずというところは意識しました。

――リアレンジして雰囲気が変わっているが、オリジナルと比べるような違和感のようなものが全くなく、『Lounge』という新たな作品としてパッケージされていると感じました。

伴都美子　「聴いて心地良いと思ってもらわないと」という気持ちはあったので、そこはちゃんとアジャストしながらやりました。

――Sinさんが加わったアレンジはどのように進行していったのでしょうか？

大渡亮　もともと『2 of Us』の流れを軌道修正していくなかで、ディレクターに「昔からの知り合いでSinという才人がいるけど、どうか？」というアプローチがありまして。実際にお会いする前に「その人にお願いします」という感じで。Sinさんはかなりアカデミックで、大学院まで行った才人なのでお任せして大丈夫だろうと。最初はドラムやベースが入るちょっとジャズやフュージョン的なアプローチになってきた曲が多かったんです。

　でも、今回の主旨がどちらかというとアンプラグド寄りなものを想定していて、ウッドベースだったりブラシだったりというのはアリだけど、ベースやパーカッションが入ってきてエレクトリカルな違うアレンジを作るつもりはなかったので、そこだけちょっと修正させて頂いて、というのはありました。

――過程にはもう一つ異なる種類のアレンジもあったのですね。確かに本作ではリズム楽器はほとんど入っていませんね。

大渡亮　やはり、ゆったり聴かせたいと。「ピアノと歌だけで成立してもいいんじゃないか」というくらいのものを考えていたので。

――レコーディングについてですが、パートはシンプルな構成で演奏されていますね。歌とアコースティックギターと…。

大渡亮　あと、ベースが何曲かとブラシ系のドラムが。

――息づかいも感じるような生々しく聴こえるトラックもありましたが、同時録音もあったのでしょうか？　

大渡亮　ライブではないですけど、ギター以外の楽器がSinさんのスタジオで録られていまして。ギターのダビングは僕らがよく使うスタジオで録っているんです。

――「陽のあたる坂道」など、他の楽曲もそうですがオリジナルとはまた違った和音構成に聴こえました。

大渡亮　ええ。同じ所もあるんですけど、経過音にジャジーなアプローチがあったり、オリジナルとは違う流れになっています。

――そのなかで歌うとなると、歌詞に込める気持ちも変わってきたりするのでしょうか？

伴都美子　私は“感覚”なので、「ああしようこうしよう」と作り込むというよりは、Sinさんの音源を聴いて気持ちのままに、というところですね。確かに歌詞というところでは作った当時と今、時を経て感じ方というのはやはり変わってくるというのはありますね。

――キーが変わっても、そのキーが持つ魅力を新たに感じました。オリジナルで気持ち良く感じた調が変化しても今回のアレンジに馴染んでいて、各々の楽曲の別のポテンシャルを新たに感じられるんです。それも自然に感覚で歌ったのでしょうか？

伴都美子　じゃあキー設定が良かったのかな？

大渡亮　そうかもしれないね。まあ、感覚的なところですよね。ちょっと高音部がこれだとリラックスする感じじゃないから半音下げてみようか、みたいな。それで原曲よりは下がったということだと思います。

――全体として落ち着いた感じで、「大人になったあなたへ、もう一度届けたい。」という今作のテーマに沿っている雰囲気が収められているし、逆に今作を初めて聴いてオリジナルに遡るという楽しみ方もできると思います。

大渡亮　そうしたらこれは良いアイテムになったね。