KEYTALK、魅力の根源はなにか 痛快さ担保 ライブとMVの因果関係
KEYTALK
今や日本のライブシーン・バンドシーンに欠かせないバンドの1組となったKEYTALK。5月15日にリリースされた最新曲「BUBBLE-GUM MAGIC」でも、その唯一無二のサウンドメイキングとソングライティングが炸裂している。楽曲そのものももちろんだが、印象的なのがそのミュージックビデオ(MV)。メンバーによる演奏シーンをフィーチャーしたシンプルな構成が彼らのMVの特徴だが、なかでも毎回目を見張るのは映像的インパクトだ。その強烈なインパクトの根源は一体どこにあるのか、そしてそれが引き出すKEYTALKの魅力とは何なのか。「BUBBLE-GUM MAGIC」と合わせ、過去の楽曲「MONSTER DANCE」「太陽系リフレイン」「ASTRO」を例に挙げ、迫りたいと思う。【五十嵐文章】
「BUBBLE-GUM MAGIC」
2019年一発目のリリースとなったKEYTALKの、新境地とも言える新鮮なポップチューン。ピンクの背景、風船ガム、シャボン玉、泡――、楽曲の歌詞やタイトルにちなんだモチーフが印象的な映像の中で、スーツスタイルの衣装で決めたメンバー4人がセクシーな女性ダンサーと共に活き活きとした表情で魅せるパフォーマンスが印象的だ。
ポップな世界観でのダンサーとの共演というと「Love me」などにも同様のパターンが見られるが、今回特に印象深いのは、大サビ前の間奏に挟まるメンバーのソロカット。エッジーなギターソロに合わせて風船ガムを膨らませるメンバーの茶目っ気たっぷりな表情と、パフォーマンス力の高さが伺える演奏シーンとのギャップが実に魅力的。ファンクなシンセサイザーのリフが印象的な楽曲とも相まって、KEYTALK史上最高にセクシーな、それでいて非常に“彼ららしい”MVとなっている。
「MONSTER DANCE」
KEYTALKといえばこの楽曲を例に挙げるリスナーも多い、今やフェスシーンの代表曲ともいえる彼らの出世作。このMVで印象的なのは、なんと言っても独特な振付だろう。
MVのメインとなるのは、普段のライブと遜色のないパフォーマンスを見せるメンバーの姿。そして、メンバー4人が立つステージを前に一糸乱れぬダンスを見せる大勢のオーディエンスだ。振付だけでなくリフトにモッシュ、サークルとライブハウスやフェスシーンでの“あるある”を詰め込んだ演出はまさにカオス。
この楽曲でフェスシーンを席巻したKEYTALKは、以降も「MATSURI BAYASHI」などのキラーチューンで、メンバーによる演奏シーンとダンサーによるパフォーマンスやキャッチーな振付との融合をメインとしたMVを発表している。今では当たり前になった「ロックバンドの曲で振付を踊る」文化に市民権を与えたバンドの一組であるKEYTALKが、“フェスあるある”を踏み台にして新しい潮流を生み出した原点のMVだ。
「太陽系リフレイン」
インディーズリリースでありながら、現在でもライブの定番曲として熱い支持を集めている楽曲。荒涼としたアスファルトの上で演奏するメンバーの動きに合わせ、グラフィックが縦横無尽に幾何学的な模様を描く演出が印象的なMVである。その後の作品だと「パラレル」などにも通じる、シリアスな切迫感と躍動感に満ちた演出が印象的だ。
一見するとシンプルなMVのようだが、茶目っ気を忘れないのがKEYTALKらしさ。なんとギターソロを前に小野武正(Gt)がポジションから離れ、トラックの荷台に乗り込むシーンが挿入されるのだ。これはMV撮影時に小野が手を怪我しており、演奏ができないまま撮影を決行しなければならなくなってしまったことで生まれた演出だったという。
ギタリストがギターを演奏できないという緊急事態すらもパフォーマンスの一部に変えてしまう、KEYTALKの茶目っ気とタフさがこれでもかと画面から溢れ出すMVだ。
「ASTRO」
2018年1月リリースのシングル曲。シンプルでありながらパワフルな、鬼気迫る疾走感が印象的なロックナンバーだ。ホワイトバックの中で演奏するメンバーを切り取ったごくシンプルな構成だが、ブレのある映像が躍動感を演出。更に、サビでは寺中友将(Vo/Gt)と首藤義勝(Vo/Ba)のツインボーカルが1本のマイクを挟み、睨み合うようにして対面歌唱を見せるダイナミックな映像が展開される。
時に噛みつき合うように、時に縋りつくように睨み合うふたりの横顔は、歌詞の「Dreamer」「Shooter」という印象的な単語を象徴しているようにすら見える。夢を追う、“かつての自分”へ向けたエールが詰め込まれたメッセージ性の高い歌詞と骨太なバンドサウンドも相まって、たった3分に満たない映像ながらグッと胸を掴まれる強烈なMVだ。
MVはライブに向けた“トリセツ”
毎回強烈なインパクトを残すKEYTALKのMV。そのインパクトを担保するのは、他でもないメンバーそれぞれのパフォーマンススキルの高さや個性的な佇まいだ。どんなにトリッキーな演出の中でもメンバーそれぞれの個性が失われておらず、いわば、“KEYTALKでしか成り立たない”MVとして成立している。
そして、これらのMVから垣間見えるパフォーマンス力の高さやメンバーそれぞれの個性が、最も活かされるのがライブである。「BUBBLE-GUM MAGIC」のMVでも炸裂しているKEYTALKの“ライブバンド”としてのポテンシャルの高さが、すべてのMVから垣間見えるのだ。KEYTALKは、MVでライブの方向性を示している、といっても過言ではないだろう。そういうことからも、KEYTALKにとってMVは、ライブバンドである彼らが提示する、いわばライブの“トリセツ”とも言える。
そのなかで今回リリースされた、移籍第一弾シングル「BUBBLE-GUM MAGIC」が暗示するものとは何か。
彼らは同曲について「新しい世界が見えた挑戦作」だったとも語っており、「ライブが楽しみだ」とも話している。彼らの発言からも、同曲が加わったこれからのライブでは、今まで見たことがないようなKEYTALKの表情が見られるに違いないといえるだろう。
「BUBBLE-GUM MAGIC」のMVは、今後のKEYTALKのライブの“トリセツ”として、非常に重要な役割を担っているに違いない。
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