<KEYTALK「サンライズ」インタビュー後編>
KEYTALKがレーベルを移籍してから1年が経った。「BUBBLE-GUM MAGIC」を皮切りに、4週連続配信リリース、フェス、ツアー、フルアルバム『DON’T STOP THE MUSIC』、そしてこれまでの5年間を総括するベストアルバムをリリースした。メンバーが口々に語るのは新しい環境での「手応え」だ。『DON’T STOP THE MUSIC』、そして今年3月にリリースした「サンライズ」にはそれが表れている。KEYTALKの進化が感じられるこれらの作品をメンバーはどう見ているのか。後編は新曲「サンライズ」の歌詞および歌唱と、KEYTALKの未来について。【取材・撮影=木村武雄】
二人のユニゾン、見つけた歌声の居場所
――首藤さんは「サンライズ」では歌に手応えがあったと話していました。
首藤義勝 そうですね。デモでは巨匠の歌が強く印象に残ったので、最初自分が歌うイメージがあまり湧かなくて。自分なりに巨匠の声との対比で出来ることを考えました。
――巨匠と首藤さんのユニゾンを大事にしていると過去に話していましたが、「サンライズ」でもそれが取り入れられています。がいかがですか。
寺中友将 ユニゾンは個人的にすごく好きで、2人でハモるよりもパワーが強いのかなと。2人の声質はかなり違うので、そういう2人の声が重なった時に、新しい人が出来上がるみたいな。力強くて、2人分のパワーよりもさらに強いものが生まれるようなイメージがあるので。KEYTALKのボーカル2人がやることによって、かなり良いユニゾンパートができると思っています。
首藤義勝 まさにその通りだと思います…(笑)。
――最後笑いがこぼれましたけど、どうしたんですか(笑)。
首藤義勝 巨匠が「2人の声が合わさって新しい人が出来上がる」と言っていたのが面白くて。想像しちゃって(笑)。
寺中友将 そうそう、八木くんが出来上がります。
八木優樹 え!? 俺…(笑)。
首藤義勝 実在する人じゃん(笑)。
寺中友将 八木くんが歌っているデモ音源の声が、俺と義勝の要素がちょっとずつあるんですよ。
――首藤さんは歌うことも挑戦だったと言っていましたが発見はありました?
首藤義勝 発見というか、手応えですね。巨匠が作った曲で、自分なりの歌の声の居場所を見つけられたのは良かったかなと。今後、新曲が生まれていく中で、1曲1曲で歌を振られるたび、工夫していきたいと思います。
――歌声の居場所はこれまでもあったんですよね?
首藤義勝 歌うだけで精一杯でした。ようやく抑揚みたいなものがつけられるようになってきて。
――移籍後、より歌に力を入れているような気もしますね。
首藤義勝 それはありますね。
――無意識のうちですか。
首藤義勝 プロデューサーさんが入って、作業していく段階で、歌詞の事でもディスカッションする機会が増えたおかげで、自然と歌に対する意識が向くようになった気がします。
――目標に掲げている横浜スタジアムでの単独公演に向けては大事な要素のような気がしますね。
首藤義勝 「サンライズ」が良いなと思うのは、特定の楽器が耳につくことがなく、歌がすっと入ってくる感じ。楽器がフィーチャーされるであろう曲調の中で歌が抜けてきているというのが良かったと思います。
目標は「曲をきっかけに知ってもらえる」こと
――「サンライズ」やアルバム『DON’T STOP THE MUSIC』を聴いて思ったのは、曲を作る不安はないんだろうなと。4人が作れるし、個性もある。しかも、KEYTALKサウンドを軸に様々なジャンルを生み出すことができる。だから逆にどこに目標を持っているのかなと。
首藤義勝 目標にしているのは、街中でラジオや有線で曲が流れていて、「この曲誰だろう」となってくれたらいいなと思っています。バンド名主導ではなく、曲をきっかけに知ってもらえるように、そんな曲が作れたらいいなと思っています。
――流行りも考慮しているんですか。
首藤義勝 新しい音楽は聴くようにはしていますけど、流行りを知ってから曲を作ってもその頃はもう遅いので、あくまでも引き出しを増やす意味で新しい音楽を聴いています。でもあまり気にしすぎずにですね。
――小野さんは、作ったり、弾くということにおいて意識をどこに置いていますか。
小野武正 プレーヤーとしては、楽しく弾けるものというのを念頭においています。ライブにおいては、大きい会場でもより多くの人に伝わるプレイだったり、曲、音選びというのが大事なのかなと年々思ったりします。
――ライブハウスでずっとやってきたバンドが、大きい会場に行った時に、スケールが小さいなと感じることあって。それを見て大規模な会場でやるのは演出面でも大変なことだなと思って。その点は意識していますか。
小野武正 確かにそういうのはありますよね。やればやるほど気付きも多くて、自分がやるようになってから、そういう人のライブを見ると得るものが多かったりして、意識の変え方でお客さんへの伝わり方が変わるんだなと日々思うところがあります。
――八木さんはどうですか。
八木優樹 僕らの音楽を聴いた時に、一番のポイントは歌なので、そこがよく聴こえるのが一番大事。自分もそれに気持ちを乗せて叩けたら良いなと思っています。
――気持ちが乗ったドラムは、感じ方は全然違うものなんですよね。
八木優樹 僕は全然違うんですけど、伝わっていない可能性は全然あると思います。常に全力ではあるんですけど、アドレナリンも多少変わっていて、常により強い力で乗っけて行きたいと思います。
――ボーカルに引っ張られてとかあるじゃないですか。高橋まことさんはBOφWY時代、クリック付けていないから、ライブでテンションが上がってテンポがどんどん速くなってしまったそうなんですよ。布袋さんや松井常松さん(ベース)がそれに合わせていたと。今はないかもしれないけど、影響を与えるものって何かありますか。
八木優樹 良くも悪くもあって、常に平坦でいることが正解かって言われると難しいですよね。初めて聴くときはちゃんとしていた方が聴きやすいと思うし。でも、こじんまりした演奏はしたくないですけどね。しっかりと音を出して歌の良さを伝えつつ、でも置きにいかないみたいな感じです。
――巨匠はどうですか。
寺中友将 4人が4人とも作詞作曲するというのが、KEYTALKの1つの売りだと思うので、KEYTALKらしさという1つまとまっている中で、4人が作っていく1人1人のらしさが強くなっていけば、さらに4人がまとまった時のKEYTALKの力もどんどん強くなっていくんじゃないかなと思う。ファンの方から、誰がこの曲を作ったというのを見ずに当てるのが面白いというのを聞いたりするので、そういうのも面白くやっていけたらいいのかなって。それぞれの作る曲が強くなっていけば、らしさが強くなっていく。そこを目指していきたいです。
自信に繋がった「MONSTER DANCE」と「BUBBLE-GUM MAGIC」
――ところで『BUBBLE-GUM MAGIC』は挑戦した曲で40曲くらい出し合って、それでリリースされるまでは不安もあったということを話されていましたが、その後の感触はどうですか。
小野武正 出した時から手応えはありましたね。フェスや全国ツアーを経て、僕らのものになっていったと思いますし、曲が成長していったなと思います。KEYTALKにとってはこのBPMの曲で主軸になる曲が出来たなという印象です。
――このBPMでの曲が完成したのは、KEYTALKの音楽の幅を広げる1つの要素になっている?
小野武正 BPMの曲自体はあったんですけど、表題曲としてがっつり打ち出してということは無かったので、よりKEYTALKの主軸の曲としてしっかり成長できたのではないかなと。
――首藤さんはいかがですか。
首藤義勝 思った以上に手応えがありましたね。春フェスで『ジャパンフェス』など大きなフェスで盛り上がったのでそこで自信になってワンマンに繋げていけたという記憶があります。
――「MONSTER DANCE」という不動の人気曲があって、それがある種の故郷みたいなもので、新しいことをやってたとえ失敗しても戻ってこられます。「MONSTER DANCE」などがあることによって色々な挑戦が出来るんだなと思いますが、いかがですか。
寺中友将 大きな自信になりました。あの曲で、盛り上がって楽しんでくれるお客さんを見るとすごく自信になるので、もっとこういう楽曲があって、ドカンドカンといったら楽しいんじゃないかなと。曲を作る上で、「MONSTER DANCE」とは少し違う方向性で、もっと強い曲を作りたいという考えが曲を作る時に頭の中に出てくるときがあるので、新しいアイデアが生まれる手助けになっているのかなと思います。
――今後の活動、この一年をどうしていきたいですか。
寺中友将 5月に幕張メッセで2DAYS『KEYTALK幕張メッセ2days 宇宙の果てまでレッツGO! 〜タイムトラベル漂流記〜』(新型コロナウイルス感染拡大予防のため延期)するというのが初めてのことなので、今、演出のことも含めて演奏も詰めている段階ですし、幕張メッセを終えた後に見えてくるものが絶対あると思うので、その時に新しい課題を見つけて、それに向かって進化し続ける一年にしたいなと思います。
――その経験によって、生まれくる曲も違ってくるかもしれないですね。
寺中友将 ライブ1つ1つ大切なのは間違いないんですけど、今回のように『宇宙の果てまでレッツGO! 〜タイムトラベル漂流記〜』と銘打って大きい会場でやるのは、またひとつ特別なものなんです。そういうところで生まれてきたという自負もあるというか、あそこを経験したから、この曲が出来たというものがたくさんあるので、そういうものがたくさん増えたら良いなと思います。
(おわり)