ココロオークション「らしい曲をたくさん作る」メンバー間の理解深まった一年
INTERVIEW

ココロオークション「らしい曲をたくさん作る」メンバー間の理解深まった一年


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年06月01日

読了時間:約12分

好きなことに向かってためらわずに行動する

――今作のタイトルが『VIVI』ということですが、これは「ハンカチ」の歌詞にもある<ビビンときたんだぜ>から取って?

粟子真行 確かにそこもあるんですけど、今作のテーマが「好きなことに向かって躊躇わずに行動する」というのを掲げているんですけど、好きなことというところで話し合いをしている中で大野から「VIVI」という言葉が出てきました。はっきり、くっきりという意味を持つビビッドをもじっているんです。あと『VIVI』という響きが可愛くて、ビビッと来て一目惚れしてしまって(笑)。

井川 聡 凄く良い単語なので今これにあった企画をいろいろ考えてやっています。

――クイズやゲームなど今既にやってますよね。さて、お一人ずつ今作のおすすめ曲などお聞きしたいです。

テンメイ 今回、最初にビビっときたのは「ハンカチ」でした。どんな曲があったら良いかという打ち合わせの時に、「恋愛系の曲があったらいいな」と思っていたところに「ハンカチ」が来たんです。今回のテーマが「好きなことに向かって躊躇わずに行動する」なので、全体的にまだ踏み出せていない人が一歩踏み出せるような歌詞が今作には多いんですけど、その中でもキュンとする曲なんです。僕がそういう曲を欲していたんですけど(笑)。

――ちなみにギターでは新しい試みはありましたか。

テンメイ 新しいというわけではないんですけど「アイデンティティ」は、ダウンピッキングでもう腕がパンパンになります。この曲はパワー系とでもいいますか(笑)。僕はアルペジオや単音を弾くギタリストだというイメージがあると思うんですけど、今まであまりダウンピッキングのロック的なアプローチってしてこなかったなと思って。それもあって久しぶりにスタジオで汗をかきました。勝手に熱くなってしまう、曲がそうさせてくれる感覚があるのが「アイデンティティ」なんです。

井川 聡 「ハンカチ」も「向日葵」もすごく捨て難いんですけど、「アイデンティティ」が特に気に入っています。今作の中でも特にパワフルな一曲で、ドラマーとしても凄く荒々しくて叩きがいのある1曲なんです。ドラムのフィルにこだわってレコーディングしたので、曲に馴染んでしまっているので聞き取りにくいかもしれないんですけど、ドラムをやっている方はコピーして欲しいです。それぐらい熱や技術が詰まった曲になりました。

――さすがに初心者の方には難しいですよね?

井川 聡 初心者は難しいかもしれないですけど、中級者以上の方にはやりがいがあると思います。初心者の方には「手のひら」が今作の中では一番やり易いかもしれないです。この曲は昔からあった曲で、シンプルなことを追求していた時代の曲なのでやり易いかなと思います。

――そこから慣らしていって最終的に「アイデンティティ」にたどり着いてもらえたらという感じですね。粟子さんの推し曲は?

粟子真行 すごく絞るのが難しいんですけど「ハンカチ」です。この曲は0から1にするところから担当させてもらって、サビのメロディもたくさん考えて出来た曲なんです。あと『VIVI』という作品は全体的には歌い方を変えました。

――確かに凄く変わったなと思いました。意図的だったんですね。

粟子真行 意図的に変えました。レコーディングの時も「この(歌詞の)行どう思う?」と大野と相談して録っていきました。聴いてくれた人に刺さるようにというのを意識して選んでいきました。「ハンカチ」の2番のAメロの<どこかで聞いた>の語尾や、ビブラートを掛けるか掛けないとか凄く考えて歌いました。今までは素直に出たもので歌っていたんですけど、カラオケとかで他のアーティストの曲を歌う時にすごくクセをつけて歌うんですけど、自分の曲となると自分のことをあまり知らないので、自分のことをあまり理解せずに歌っていたんだなと思うところがあって、自分なりの歌い方やクセを研究して見直しました。それを今回実践してみたんです。新たな自分になれたといいますか、自分を変えるというところを体現できたのではないかなと思います。

――分析したんですね。

粟子真行 分析というところで、地元で尊敬するシンガーソングライターの先輩がいまして、一緒に飲みに行ったんです。そこで「今僕はどんな歌を歌えば良いのかわかりません」と相談しました。そうしたら「自分のこと知らないんじゃない?」と話してくれまして。それで一緒に自分の性格とか分析したんです。幼少の頃から振り返って、なぜこういう性格になっているのか、それは小さい時に入院していて寂しかったからとか、でもずっと歌っていたんだなとか、ちょっとずつ自分のことが分かるようになってきて、「それを曲にしてあげないとダメだよ」とアドバイスを頂いて「タイムレター」が出来ました。この曲が書けたおかげで、こんがらがっていた糸を紐解いていって、自分が何を好きなのか、喜びを感じるのかというのが分かったんです。この曲が生まれたというのは自分にとって大事な分岐点になるんじゃないかなと思います。この歌があるから今自分はしっかり立てているんだなと思います。

――何が好きなのか、それが歌やバンドだったりしているわけですよね。ちょっと話が戻るんですけど、「ハンカチ」はなぜこのタイトルにしようと思ったんですか。他にも色々つけられそうな曲だなと思いました。

粟子真行 <ダサいハンカチ使ってるのもすごくいい>という歌詞がキーワードになっていて、タイトルはイメージできる名詞にしたかったんです。デモのときから「ハンカチ」で、その後も色々考えたんですけど、結果的にこれを超えるものが出なかったんです。

大野裕司 「タイムレター」と「ハンカチ」は対局にあると思います。「タイムレター」は過去の自分に当てた手紙ということでそのまま読んでいっても面白いと思うんですけど、「ハンカチ」は逆で最後にこれはラブレターの下書きということが明かされるので、タイトルが「ラブレター」だとわかって読んでしまうので面白くないんです。タイトルの使い方というのは重要です。名詞をタイトルにするとその人それぞれの思い出があるので、曲への印象が変わるんです。

――確かにそうですね。 「ハンカチ」という言葉だけでもそれぞれイメージすることが変わってきます。さて、大野さんの印象的だった曲は?

大野裕司 僕は「タイムレター」です。トラック作りで一番時間が掛からなかったのが「アイデンティティ」で、一番時間が掛かったのが「タイムレター」なんです。「タイムレター」は、流れを止めない一筆書きみたいな感じにしたくて、1番を作るのが凄く時間が掛かりました。サビが3種類といっぱいあるんですけど、そういうアレンジにするというのが個人的に凄く気に入っていて『Musical』でやっていたことの延長にあって、概念を壊せた曲になったんじゃないかなと思います。

――前作からの流れもありつつ、新しいエッセンスも?

大野裕司 今回は新しいビートというのは求めてはいなかったんですけど、そこにどんな楽器を乗せるかでグルーヴに新しい、古いというのが出てきてしまうんです。一回できたんですけど、それもあってグルーヴが硬いと感じて、本当にちょっとしたことなんですけど、音符を16分音符後ろにずらすとか、それだけでノリが変わるんです。今までも分かってはいたけど、目的を持ってアレンジするところまではいけてなかったんです。それがやっとできるようになったので良かったと感じています。

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