ずっと続いていく輪廻みたいな感覚があった
――歌詞の内容ももちろんなんですけど、僕からするとタイトルから既に興味深いです。例えば普通「だ」とかタイトルにしないと思うんですよ。
一同 (笑)。
大胡田なつき これは成田さんがつけてくれました。
成田ハネダ タイトルは僕が決めることがあります。大胡田は(歌詞の)中身重視なところがあって、あまりタイトル自体に興味がないみたいなんです。「タイトルどうする?」と聞いても「歌詞で言いたいことは言えたからなんでも良いよ」といった感じで(笑)。
「だ」に関して言えば、過去にやってきたパスピエのオリエンタリズム的なところとか、「アルバムで新しいことをやりました」というのを伝えたいということで、「始まりはいつも」のようなタイトルにしてしまうと、曲のテイストが変わってしまうなというのがあって、コーラスで「だだだ」と言っていたので、そのまま「だ」にしました。
――大胆ですよね。「R138」も興味深くて、これは大胡田さんが御殿場出身というところから?
大胡田なつき はい。これは私がタイトルを付けたんですけど、みんなR138を知らなかったんです。私の中では地元でよく出てくる言葉なので、当然みんな知っていると思って歌ってたんですけど…。
三澤勝洸 もう246号線ぐらいの勢いで言ってましたから(笑)。
――地元の人しかわからないという。あと「BTB」も気になりましたけど、これは何の略なんですか。
成田ハネダ 今回割とデモのときのタイトルのままの曲も多くて、「BTB」も僕が付けたタイトルなんですけど、意味はなくはないんですけど、割と野暮なタイトルなのでそのまま「BTB」って何だろう? と思ってもらえるのが正解だと思うんです。ヒントとしては何かの頭文字です(笑)。
大胡田なつき 昔の曲で「S.S」という曲もあったんですけど、それも特に意味はそんなになかったので(笑)。
――では、それぞれの“BTB”を当てはめてもらって(笑)。さて、最後に収録されている「始まりはいつも」は、この後に何か言葉が続きそうな感覚もありますよね?
大胡田なつき そうですね。でも続くとしたら「…」ですね。この曲はパスピエのことを歌っているんですけど、始まりはいつもこうやって繋がっていくよねということなんです。このアルバムの中で一番メッセージ性、決意表明の部分ががあります。
――10年という節目がこういった楽曲を入れたくなった感じも?
大胡田なつき 10年というよりもこのアルバムだからということの方が大きかったと思います。新しい音の作り方に挑戦して、またここから始まって、ずっと続いていくという輪廻みたいな感覚がありました。なのでジャケットのアートワークも、女の子に肉体がついて人間に戻っていくという輪廻のイメージがあります。
――またここから始まっていくという感覚も強いと思うのですが、パスピエの未来はどのようなイメージがありますか。
成田ハネダ 変わったことをやり続ける存在でいたいとは思っています。バンドというフォーマットに縛られることなく、4人のクリエイティビティが交じる音楽集団でいたいです。「グラフィティー」のアニメーションムービーみたいに、自分たちで生み出せるものをどんどん増やして、さらに人間力みたいなものを試していかなければいけないだろうなと思います。
――未来が楽しみになりました。さて、6月12日からアルバムを引っさげた全国ツアー『パスピエ TOUR 2019 “ more You more”』も始まります。最後にツアーへの意気込みをお願いします。
三澤勝洸 今作はライブで表現するのが難しいと思うんですけど、逆に僕らもそこを楽しみたいです。観に来てくれる皆さんも音源を聴いてきてくれると思うんですけど、色々なところが緻密に作られているアルバムであるが故に、ライブではそことはまた違った楽しみや、新しい発見をしてもらえると思います。
露崎義邦 音源とライブで化けると思うので、音源で好きになってもらってライブで新たに好きになってもらえると思います。曲がどんどん変わっていくことが僕らも楽しみなので、是非ライブにお越しいただいて目撃してもらえたらと思います。
大胡田なつき もう「私が歌うから聴きに来て!」という感じです(笑)。アルバムの世界観というのは、ライブまでにはみんなが各々持ってきてくれると思うので、さらにそれを超えるものを見せたいです。
成田ハネダ 『more humor』は頭で聴くアルバムだなと思っていて、リスニングミュージックとして出来る良いパスピエを突き詰めた作品です。実際に体を揺らしてそれで音楽は完成されるものだと思うので、それを体感したい人は、是非答え合わせをしにライブに来て欲しいです。
(おわり)