自分を彩るための音楽――、小手伸也 音楽にも似た演劇の世界
INTERVIEW

自分を彩るための音楽――、小手伸也 音楽にも似た演劇の世界


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:19年04月05日

読了時間:約13分

自分発信のものに、一緒に寄り添ってくれる音楽のほうが好き

小手伸也

小手伸也

――今回はオーケストラの役割として、単純なBGMだけではなく劇中に俳優的に参加するようなイメージの場面もあるとうかがっています。斬新な演出のように見受けられましたが、これに対するイメージはありますか?

 まあどちらかというと、BGMとかではないでしょう。役者の挙動に合わせてリズムを奏でたり、あるいは心境を代弁するような曲調になったりという風な演出があると思いますが、その意味では、やっぱり音楽というよりは共演者だと。

――鳴っている音も全部含めてということで?

 そうです、だから音楽として切り離して、あえて演出の一環、俳優を補助するニュアンスというか。プラスアルファの音楽として、というよりは身体的な表現と地続きになっている音楽表現、という印象があるので、今回の音楽の人たちはきっとBGMとしてではなく共演者としてとらえるべきだろう、というイメージはあります。

――すごくユニークですよね。あまりない共演だと思いますが、チャレンジとしてはいかがでしょう?

 面白いと思います。音楽と共演するのは、ミュージカルなんかでは往々にしてありますが、今回は歌うわけではないですし。ちょっと話は違うかもしれないですけど、舞台の音響には、僕ら役者と共演できる音響さん、できない音響さんっているんですよ。

 単純に「台本のこのタイミングだからキューを出して、決められたタイミングでフェードを下げて…」というだけの感じの人がいる中で、本当に俳優と共演できる音響さん。僕らがしゃべっているのと同じタイミングでふっと入ってきて、しかも僕らのテンションの高まりと同時にヴワーッと音を上げて、“ここで切ってほしい”というところでちゃんと切ってくれたりとか。

 そんな、こっちの空気が以心伝心できた、という体験があるんです。だからきっとオーケストラの人たちとも、そういうことをしていかなければ逆にいけないと思いますし…。

――もっとつながりが強くなる必要がありますね。

 うん。だから「一緒に板の上に立っている」ことを最大限に尊重して、分割して考えないようにできればなと思います。これはヤニックさんとのコミュニケーションでもありますね。

――なるほど。小手さんにとって音楽とは、どのようなものでしょうか?

 僕にとって音楽はわりと日常で、「No Music,No Life」な感じなんですが…(笑)

――普段はどのような音楽を聴かれたりしますか?

 わりとジャンルは特殊かもしれないですが、ハウスミュージックとか。あまりJ-POPとかロックとかではなく、エスノテクノとか、ワールドミュージックとか。

――では聴き込むというよりは、生活の中でふんわりと流している感じで?

 そうですね。あとはサントラとかも好きですし。だからあまり言葉に頼らない音楽が好きかなと思います。日本語がわかっているからこそ、言葉のイメージでガツン! と心に届く音楽もあるけど、どちらかというとイメージから伝わるものが好みであるし。それはもしかしたら、僕がわりと演出家としていろんな選曲をしたりする機会が多くて、BGMを探したりすることがあるからかもしれません。

――演出家としての活動ですか。どのように?

 僕は未だに旧型のiPodを使っているんです、150GBの。まだこの「カリカリ」言っているもの(笑)。この中に曲を6000曲くらい入れて、その状況に合わせて「BGMはこれ」と、よく演劇のワークショップとかでも使って。そんなこともあって「自分を彩るための音楽」みたいに感じたりすることがあります。だからこそ逆に、言語的にメッセージ性の強い音楽というのは、あまり聴かなかったりもするんです。

――では生活の中で、自分の雰囲気を作ってくれるとか、そういうところが自分にとっての音楽というところなのでしょうか?

 そんな感じもあると思います。メッセージの含まれる音楽に対して、一緒に共感し高めようとする瞬間ももちろんあるんですけど、僕はもう少し自分発信の人生に、一緒に寄り添ってくれる音楽のほうが好きなので、本当にワールドミュージックとか、言語がわからないようなものが逆にいいなと思ったり(笑)。トランスも好きですし、そろそろジャズやクラシックもたしなんでみたい。本当に歌詞に頼らないものが好きです。

小手伸也

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(おわり)

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