吉田山田「常に音楽を意識できている」10周年イヤーのスタートで叶えた夢
INTERVIEW

吉田山田「常に音楽を意識できている」10周年イヤーのスタートで叶えた夢


記者:小池直也

撮影:

掲載:19年02月19日

読了時間:約17分

 吉田結威(Gu/Vo)と山田義孝(Vo)からなる二人組アーティストの吉田山田が2月20日、13枚目のシングル「桜咲け」をリリースする。現在放送中のTVアニメ『火ノ丸相撲』のEDテーマ。タイアップが決まってから制作が始まったという、今作のタイトル曲は桜をモチーフに王道な応援歌として充実した内容となっている。今年10月にデビュー10周年を迎える彼ら。インタビューでは新作についてにとどまらず、2017年のアルバム『変身』、昨年10月にリリースした『欲望』に続く3部作の完結編となる新アルバムのビジョンについて、吉田の執筆と山田の絵画についてなど幅広く話を聞いた。【取材=小池直也/撮影=村上順一】

アニメに背中押されてできたリード曲

吉田結威

――「桜咲け」はお二人のシングルとして、1年9カ月ぶりの作品となりますね。

吉田結威 まだ放送される前のアニメ『火ノ丸相撲』を何話か見させて頂いて、そこから着想を得て作りました。タイアップのお話が先にあって制作が始まった感じです。お話を頂いたのももちろん嬉しかったんですけど、山田が小学生の頃からずっと『週刊少年ジャンプ』(集英社)を購読しているんですよ。このアニメの原作は今『ジャンプ』で人気連載中のものなので、僕らも誌面に載ることができたんです。まあ嬉しそうでしたね(笑)。

山田義孝 夢がひとつ叶いました。当時はマンガ家になることが夢だったので、そういう意味でもとても感慨深いです。未来でアニメに携われることを当時の自分に教えたいですよ。放送も正座しながら観ました。いい回だったんですよ、それが。

――アニメを観て制作、という流れはいかがでした?

吉田結威 相撲に限らず、スポーツの個人競技と僕らが音楽で感じる孤独感って共通しているところがあると思うんです。周りのサポートだったり、出会いだったりとか、色々なものに助けられるんですけど。最後の最後に本当に大事な戦いは孤独のなかでおこなわれる、というところがアニメを観て印象に残ったんです。仲間は増えていくんだけど、どこか主人公が抱える孤独感が魅力的で。

 僕らも二人組なんですが、おのおのが戦うしかない部分もあったりするんです。それは10年活動してきて思うこと。お互いが鼓舞しあうのでなく「自分で気付いて人間として成長していく」とお互いに思ってないと満足のいく10周年を迎えられない。そんな自分たちとアニメが重なる気がしています。「桜咲け」はこの作品に背中を押されてできあがった曲ですね。

山田義孝 ざっくり言うと応援歌の部類に入るんですけど、そういうものを歌うのに昔と比べて緊張感が出てきました。今まで作ってきた応援歌って自分に対する応援歌だったりするんですよ。「僕は走る」とか。でも今回は<輝けその力で><羽ばたけその力で>という誰かに向けたメッセージになっているんです。やっぱり人にエールを送る難しさは「じゃあ自分はどうなんだ?」ということで。どれだけ説得力を持って歌えるのか、というのが大事だなと思っています。

 今回の曲は春の歌で、特に受験生とかが自分と重ねやすい様な歌なんです。でも僕は今まで受験というものをせずにここまできたんですよ。推薦だったり、大学は行きませんでしたし。なので期限を設けて、はっきり合否が出る戦いを僕はしてこなかったなと。でもデビュー10周年に向けて初めて「ここに立ちたい」という目標を設けていたんです。初めて受験生と同じような期限付きの目標を作ったので。ちょっと背筋を正して、歌う曲になったなと思いました。

――その目標というのは?

山田義孝 二人で「このステージに立ちたい」と。公にはしてないんですけど、目標があるんです。もしかしたら公表しないかもしれません。僕らの中で挑戦として掲げているものですね。

――リード曲で「桜」をモチーフにした理由はなぜでしょう。

吉田結威 それはたまたまです。この曲の大もとになったデモ曲があって。それを作った時に「桜」のモチーフは使っていたんですよ。オファーを頂いた時もそのモチーフはそのまま使おうと思って作り始めました。でもこの季節じゃなかったら使えなかったかもしれない(笑)。夏に出すシングルで桜を使うのは難しいですもんね。偶然タイミングも合ってよかったです。最初のデモを作ったのはもう3、4年前で。今回レコーディングするにあたって、もう少し歌詞を詰めていきました。今回は作品からの刺激が、この曲に足りなかったものを補完してくれました。

 僕らは自分が作ったものじゃないものから刺激を受けて、かつ自分たちの想いも乗せて曲を作るのが得意なんです。普段も妄想で作ったりしますよ。「○○という番組のエンディングテーマの依頼がもしきたら」という設定で作ったり。ちょうどこの間作っていたのは『はじめてのおつかい』(日本テレビ系)だったり。

山田義孝 自分が見たものに感化されて、この感情を形に残したいと思うんですよね。勝手に『はじめてのおつかい』の主題歌とか『三ツ矢サイダー』のCMソングとか作ったりして。そういう作り方はよくします。感動して、勝手に歌を作りたくなるんですよ。色んなことに刺激を受けて曲は生まれますね。

――「桜咲け」は間奏で不思議な転調をして、歌に戻るのがとても興味深かったのですが。

吉田結威 あれの発想はアレンジャーの涌井啓一さんが、色々と相談していく中で提案してくれたんです。僕らとしては久々に王道の歌なので「音楽的に小難しいことをしても大丈夫なんじゃないかな?」と。それで作ってくれたのが、このコード進行のもとになるものでした。「あ、この人変態だな」と(笑)。最初はもう少しストレートでいいんじゃないかなって思ったんですけど、何度か聴いてくうちにくせになるというか。涌井さんはピアノ弾きなので、ギター弾きの僕からは絶対出てこないアイディアなんですよ。最終的に少しだけ変えてもらって、あのアレンジになりました。

山田義孝 歌うのは難しいですよ(笑)。でもちょっと不安定な感じも心境にマッチするんじゃないかなというところで、いいフックかなと思っています。

――他にこだわった点などありますか。

吉田結威 今回は「和楽器を入れたサウンド」というのがひとつのテーマでした。でもあまりわかりやすい形ではなく、オルガンとかも重ねながらサブリミナルなものにしたいと思っていて。三味線とかではなく。僕らにとっても初の挑戦でしたね。メインメロには篠笛が入っています。やっぱり和楽器ってすごく色が強いんですよ。それだとあまりにも相撲に寄せすぎじゃないかということで(笑)。自分たちらしさを残しつつチャレンジしています。

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