誰にも止められねえぜ!
――今作は、全体に明るいなと思いました。どの歌詞も前向きだし。
たとえ歌詞にネガティブなことを書いても、最終的に曲として前向きなものに落とし込みたいと思っていて。個人的にも、やっぱりポジティブでいたいですからね。
――「Toy Plane」は、バラードっぽくて、少し和っぽい雰囲気もあって、そこが特徴的ですね。
ちょっとアジアンテイストって言うか、大陸系な感じがあると思います。もともとバラードの曲で、それを今の音に落とし込んで歌い上げてみました。
――何もできない自分をおもちゃの飛行機に例えるのが、おしゃれですね。子どものころの憧れのヒーローにまだなれていないという、童心の部分も表現されている。
まだまだ目的地には辿り着いていないし、そもそも僕らが目的地までたどり着けるだけの燃料を持っているかどうかも分からないけど、とりあえず行けるところまで行きたい。それはバンドを始めたときから思っていることです。
――また「Super Sonic」は、ファンキーなリズムでジャカジャカ鳴っているギターが印象的です。
瞬間的に思い浮かんで作った曲です。ドラムがずっとループしている、いわゆるディープハウスのような1つのループで1曲通すという曲は、意外とNulbarichにはなかったんです。それでイントロのループができあがってビートを打ち込んだ瞬間に、バーっと一気に作り上げることができました。ギターのリフはベタなものですけど、アシッドジャズとか、そういうところにあるものをしっかりやった感じです。これは、ライブで早くやりたいですね。
――サビで転調して風景が変わるのがいいですね。「Silent Wonderland」も、ファルセットでガラッとイメージが変わるし。
もともとヒップホップが好きだから、一つのループでやっていく格好良さも理解しているけど、やっぱりサビは曲を象徴する代表的な場所ではあるので、サビのインパクトは大事だと思っています。明るさというわけではないけど、キャッチーさとかフック感ということは、作戦というわけでもないけど常に念頭に置いています。
――「Stop Us Dreaming」は、非常にライブ感がある。みんなで歌えて一体になれるアンセム感がありますね。
これは、今までのNulbarichが言ってこなかったメッセージをリリックに落とし込んでいます。ストレートに「今楽しいぜ!」みたいなことを歌ってみた感じです。
――武道館をやったからこそ生まれた曲ですね。
そうかもしれないです。今まではこっ恥ずかしくて言えなかったこと…例えばサビには「誰にも俺らの夢は止められねえぜ」という意味の歌詞があって、曲名もそこから取ったんですけど、以前の自分たちなら絶対に書かなかった歌詞ですね。
――それをあえて全部英語で言っている。
日本語にするといなたくなるかなと思ったし、こういうストレートなワードは、英語のほうが言いやすいのもあって。英語のほうが、より想像してもらえるんじゃないかと。僕のヒップホップに対する憧れも、そういう部分にあって。ちょっと恥ずかしいストレートなメッセージでも、ラップで表現するからこそ成立するものになると思うし。歌詞だけを読まれると恥ずかしいけど、歌と一緒に聴いてもらうとスッと入ってくると思って、それが上手くできたかなって思います。
――イントロの「Blank Envelope」には車が走っている雑踏の音が。アウトロの「I’m Home」には、鍵の音を鳴らしながら歩いている音が入っていますね。
全曲が仕上がったときに、イントロとアウトロを付けたいと思ったんです。それで、全曲のミックス作業が終わったスタジオから、家に帰るまでの自分の足音をボイスレコーダーで録ったんですね。それを翌日聴き返してみたら、アルバムを仕上げた帰路の音ということもあって、自分的にしっくりきたし、制作が締まった気がしたんです。最初は、それを聴きながらアウトロを作ろうと思っていたんですけど、面白いからそのまま使ってしまえ! と思って。
――ドアを閉める音が、開けるときの音にもなって、また1曲目にループする感じがあっていいですね。
そうですね。今回は大合唱系で終わるよりも、「まだまだ行くぜ」という、続く感じで終えたかったんです。アウトロは、ドアを開けて鍵を置く音で終わるんですけど。まだまだ続きそうな感じがするアルバムだなと自分でも思ったので、そうやって聴いてもらえたらいいですね。
――「止められねえぜ」ですからね。
そうそう(笑)。去年のアルバムは制作期間が年をまたいでいて、すぐツアーが始まったのもあって、自分で一旦ゆっくり聴く時間もなかったんです。今作は昨年中に制作を終えたので、お正月期間にゆっくり聴くことができて。振り返りながら聴くと、2019年2020年、この先に続く意思みたいなものが、個人的に強く感じられました。なので今年は、より自信を持って、このアルバムと共に突っ走りたいなと思います。
(おわり)