DEAN FUJIOKA×豊永利行「History Maker」対談、惹かれ刺激し合う2つの才
INTERVIEW

DEAN FUJIOKA×豊永利行「History Maker」対談、惹かれ刺激し合う2つの才


記者:編集部

撮影:

掲載:19年02月01日

読了時間:約17分

「ユーリ!!! on ICE」とオープニングテーマ「History Maker」について

――DEANさんは「ユーリ!!! on ICE」について印象に残っていることや、“History Maker“を作るに当たって感じていたことなどありますか?

DEAN FUJIOKA この話を頂いた当時、どういう作品になるかっていうのがまだわからなかったので、始めはフィギュアスケーターたちの限界に挑戦してチャレンジし続けるっていう、すごく前向きなスポーツマンシップと言いますか、アスリートの方達に向けるような応援歌みたいなものを作ろうと思っていました。でも絵コンテを見せて頂いたり、歌詞を書いている過程で、スポーツ界に限らず、今この同じ時代に生きていて、それぞれ置かれた立場でベストを尽くして、明日に向かってそれぞれの挑戦をしている人たちに、自分たちに向けての応援歌みたいなものがいいんじゃないかと、少しずつ考えが変わっていって。

 もちろん、フィギュアスケーターだったり、アスリートの方も含めた人間への応援歌ということで、最終的にこういう形になったのですが、オンエアでこの楽曲が流れて、どんどん色が足されていくオープニング映像を見て、自分も含めて、関わっていた人たち全員の熱量をすごく感じたプロジェクトでしたね。ゼロだったところから新しいものを生み出すというパッションプロジェクトというか、思い返すと関係者みんなのモチベーションの高さが、印象に残っています。

――豊永さんも、オリジナルアニメという点で、他の作品よりも想像力などが必要な状況でやらなければいけなかったかと思うのですが、その辺りはどうでしたか?

豊永利行 ちょっと声優業の話になっちゃうんですけど、芝居をするアプローチの中でやっぱりアニメーションって二次元の中に声を当てるために必要な技術だったり、テクニックっていうのがあるんですけど、『ユーリ!!! on ICE』に関してはそれがなかったので、いかにアニメーションのなかでよりリアリティを求める芝居をできないかなって考えていて。で、そのために、アニメーションにのせるためのテクニックとかを引き算していくお芝居を挑戦し始めていた時期でした。僕自身、声優業一本でやってきたわけではなかったので。だから、『ユーリ!!! on ICE』に関して勇利くんのお芝居っていうのは、極力アニメーションの芝居ではない芝居っていうのを自分の中で課して、変な小細工は使わないで勝負するようにしていました。

――奥深い世界ですね。

DEAN FUJIOKA お話聞いていて、今質問したいなと思っちゃったんですけど。

豊永利行 どうぞどうぞ。

DEAN FUJIOKA その声をあてるときってやっぱり、見ながらドンピシャで嵌めていく感じなんですか?

豊永利行 アフレコのタイミングだと、まだ絵が出来ていないことが多くて、アニメーションって絵コンテ、それこそDEANさんがご覧になった絵コンテとか、あとは線画だったりっていうところに“ボールド”っていって、それぞれのキャラクターの名前が書かれたプレートみたいなモノが出てくるんですけど、それが出てる間だけ、口が動いてますよーっていうサインになっていて、それが消えるまでの間でセリフを言うっていう。

DEAN FUJIOKA すごいですね。

豊永利行 もちろん最近ミキサーの方の技術も進化しているので、多少こぼれてしまったりとか、ちょっと早く出ちゃたりとかはちょっとずらしていただいたりすることもあるんですけど、基本はぴったり嵌めるように訓練したり、指示を受けることが多いですね。

DEAN FUJIOKA そうなんですね。

豊永利行 なので、逆にいうとそこに嵌め込むのに、ホントはこのニュアンス芝居にいれたいんですけど、これ入れちゃうと、そのボードからこぼれちゃうみたいなとき、どうしようかな。みたいな、悩みはあったりしますね。

DEAN FUJIOKA なるほど。僕はそういうお仕事したことがなくて、本当にもう声だけの芝居じゃないですか、より繊細だと思うし、やっぱなんか声って、早いか遅いか、強いか弱いか、高いか低いかとかそれくらいしかないじゃないですか、変化の度合いが。その中で芝居だと普通に、体を動かしたり、声以外の部分でカバー出来る部分もあるんですけど、ボールドだけでそれをやるってすごい特殊ですよね。

豊永利行 そうですよね(笑)。僕もやっぱ最初の頃、あのもちろんアニメの前に舞台とかやらせていただいていて、どっちかっていうと映像系もやらせていただいていたので、どうしても体が動いちゃって。

DEAN FUJIOKA ですよね。

豊永利行 だから最初の頃、分かっていても結構体が動くことがあったので、それはやっぱ苦労しましたね。マイクから外れちゃうので。

DEAN FUJIOKA 僕も未だに自分でそのアフレコで足すときも、別に演技しなくていいのに、体動いたり、表情がこうなったり、そうじゃないと声が出てこないっていう、あてたい声が(笑)。

豊永利行 その気持ちすごくわかります。

――同じ声を使うといっても、様々な形で表現の仕方があるんですね

DEAN FUJIOKA でも、アニメのキャラクターの声をやるっていうのはまだやったことないので、すごいなと思いますね。もちろん自分が視聴者として見てる分には、すんなり入ってきて何にも考えないで、いい意味でストレスなく何も疑うことなくそこに没入していけるわけじゃないですか

豊永利行 そうですね。

DEAN FUJIOKA それができてるっていう…というか、それを作ってる側はこれ相当(笑)。役者でやってるからよくわかります。その難易度の高さっていうか。

――そうですよね。

DEAN FUJIOKA なかなか簡単にできることじゃないですよね。そういう表現は。

豊永利行 そうですね。割と最近アニメや声のお仕事が多くて、映像だったりとか、顔出しのお仕事は最近少ないんですけど、でも久しぶりにやっぱ動くってなると、逆に「どう動いてたっけ…俺」っていう(笑)。なんか変に声でごまかそうみたいな感じになっちゃう自分もいたりしてやっぱなんかそこのバランスだったりというか、葛藤も結構あったりするので

――そういうお仕事をしたことで、別のパフォーマンスに影響することってあったりするんでしょうか?

豊永利行 歌に対するニュアンスのつけかたみたいなものはお芝居の延長みたいな、僕は自分の中でちょっとミュージカルっぽくなっちゃうところがあって、自分の作る曲っていうのが、ちょっと喋り口調っぽくなったりするところがあって。逆に僕はアーティストの方だったり、ミュージシャンの方がやられている完全に音楽と溶け込むような、歌唱表現法っていうのも知りたいなって思っちゃうところがありますね。

――どういうことですか?

豊永利行 アーティスト一本でやられている方って、オケに対しての声の融合度が高いというか。自分だと「あれ?浮いてる?」みたいな感じに聞こえるときもあったりして。そこがなにか、おもしろくもあり、難しいなぁと思ったりするところもあるので、逆に武器になればいいなぁなんて思いながら、歌わせていただいているんですけどね。

――なるほど。

豊永利行 逆にDEANさんの声の、なんていうんでしょうね、パリッとした音というか、あの音感もすごいなって思います。

DEAN FUJIOKA ありがとうございます。

豊永利行 いえとんでもないです。出来上がった音源をきかせていただいて、「おお」っと思って。

DEAN FUJIOKA (笑)。

――ちなみに、今回「History Maker」で繋がった縁だとは思うんですが、「History Maker」という楽曲が今後どんな展開になっていったらよいと思いますか? 

DEAN FUJIOKA 先程の色々な国のお客様がライブ会場にいらしていたっていうところと繋がるかもしれないですけど、「History Maker」の公式のMusic Videoを最近作りまして。そのMVに対して色々な言語のコメントがあって、特にスパニッシュ系のアクセスが多いみたいなんですね。まぁもちろん英語は英語であるみたいなんですけど。僕も聞かれたりするんですよね「History Maker」っていう曲はスパニッシュのオーディエンスからの反応が多い理由を、あなたはわかります?」って。いや。全く心当たりがない全くわからない。むしろ自分も知りたいみたいな。

豊永利行 あーそうなんですね。スペインが多いんですねぇ。

――日本のアニメ自体が、僕らが知らないだけで広がっているところがありますよね。

豊永利行 実在のフィギュアスケーターの選手の方々がツイッターとかで反応してくださったり、さらにユーリ!!!グッズをもって写真撮ってくださってりしているところで、さらに反響が出ているっていう話は聞いたりしました。そういう意味では、スポーツの中美しさと過酷さみたいなものの感じた方も世界共通なんだなと思いました。

DEAN FUJIOKA そうですね。あと、競技の世界にいる方やその世界に魅了されているファンの方々は、一つのバイブルみたいなものが欲しかったのかもしれないですね。サッカーだったら「キャプテン翼」、バスケットボールだったら「スラムダンク」みたいな。日本もだし、他の国も共通言語であるじゃないですか。だからフィギュアスケートも、フィギュアスケートといえばこれ!っていうののイコールみたいなものが欲しかったところに「ユーリ!!! on ICE」というのがドンピシャで、届けられたっていうことかもしれないですね、世界的なレベルで。

豊永利行 そうかもしれないですね。いやすごいことですよねー。

DEAN FUJIOKA うん、すごいことですね。

――比較的クラシックを選曲するフィギュアスケーターの方々多い中で、ある種コンテンポラリーな感じのこの曲がはまったのかもしれませんね。

豊永利行 そうですね。だからほんと「ユーリ!!! on ICE」も「History Maker」もそうですけど、サウンドトラックとかもつくって、劇伴の全部の楽曲がそれぞれのプログラムの曲とかもあるので、本当にアイスショーとかでやってほしいと思っちゃいますね。

――少し飛躍的な話もしてしまいますが、例えば今回の曲を披露する場があった場合に、どんなところでやってみたいですか?

豊永利行 いやー、History Makerってやっぱりアイスショー。

DEAN FUJIOKA 絶対スケートリンクのあの会場がいいですよね、寒いけど(笑)

豊永利行 ねー。絶対寒いと思いますけど(笑)

――お二人でセンターステージだったりとか?

豊永利行 あーいやもう機会があればぜひぜひ、絶対おもしろいですよ。

DEAN FUJIOKA ですね。

豊永利行 それでアイスショー開幕してもらってもいいですよ(笑)。

DEAN FUJIOKA それでコンペティションがはじまってね。そうなるとまた一つの象徴になりそうですね。そのフィギュアスケートの歴史というか「ユーリ!!! on ICE」のファンの方々にとっても。

豊永利行 そうですね

DEAN FUJIOKA アメフトだったらハーフタイムショーみたいなのあるじゃないですか。バスケだったら国歌斉唱みたいな。そういうニュアンスで、「History Maker」がフィギュアスケートの世界で象徴的な、みんなが一緒に共鳴しあえるようなアンセムみたいなものになれたら嬉しいですよね。

豊永利行 それは本当に素晴らしいことだと思いますし、英語詞だっていうこともそうなんですけど、DEANさんが歌った「History Maker」だからこの企画は成立するんじゃないかなぁと思います。

――夢が広がりますね。他にもイメージはありますか?

豊永利行 えぇ。教科書にのるとかそういう?

DEAN FUJIOKA それやばいですね。(笑)

豊永利行 それ起きたらすごいと思います。

DEAN FUJIOKA でも、僕この曲結構オリンピックとか、そういうのに向いてるんじゃないかって思います。手前味噌になっちゃうんですけど、運動系とか、頑張るぞ!みたいな感じになるから、すごく合ってるんじゃないかなと思って。

豊永利行 いや、そう思います。

――そうですね。ある種のエールソングって、世界中の誰しもが求めたいものというか。

豊永利行 そうですね。なんか全然イケる気がしますね。

――すごいですね。2個でてきたのが教科書とオリンピックっていう、だいぶ公式感が強い感じで(笑)

豊永利行 でも、それこそ「History Maker」の「Born to make History」だなぁって思っちゃう。

――これ見出しですかね。

豊永利行 ありがとうございます。(笑)

DEAN FUJIOKA 素晴らしい!

豊永利行 いやでも、それぐらい日本国内だけじゃない広がりの強さをみせてくださったというか、そういう楽曲なんじゃないかなとは思うので。

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