FABLED NUMBER「音源とライブがイーブンになれるものを」ライブバンドとしての矜持
INTERVIEW

FABLED NUMBER「音源とライブがイーブンになれるものを」ライブバンドとしての矜持


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年01月19日

読了時間:約14分

 大阪で結成された“エレクトロダンスロック”を提唱する6人組バンドのFABLED NUMBERが1月23日、メジャー3枚目となるアルバム『Millionaire』をリリースする。2018年はライブ活動をメインに6月にファーストシングル「I Bet My Life (or Death)」をリリース。そこで求めらているFABLED NUMBERの音楽を改めて考え直したという。そのビジョンを引き継ぎながら完成させたアルバムは、よりライブを想定した1枚に仕上がった。仮にこのアルバムの中からしかライブができなかったとしても、満足させられるライブが出来ると話す。今回インタビューではボーカルのEitaに今作の制作背景、フロントマンとして考えていること、ツアーへの意気込みなど話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

ライブを強く意識した『Millionaire』

――すごく良いペースでアルバムを出せていますね。その分すごく大変だとは思いますが。

 ありがたいことに良いペースで出せています。まあ、バタバタしてはいるんですけど。デビューしたのが2017年ですけど、もっと時が経っているかのように感じます。このデビューからの2年間の中でも葛藤があったりして、どういう風に見せて行こうかと考えた中での3枚目という感覚もあります。

――前回のインタビューの時にみんなが求めるFABLED NUMBERというテーマで曲を作ったと仰っていましたが、実際リスナーにはどのように伝わったと思いますか。

 「I Bet My Life (or Death)」はラウドでドラマチックというのが、しっかり作れていたと思います。最初はもう少し楽しい感じも出るのかなと思ったんですけど、やっぱり僕らがやると思っていた以上にドラマチックになるなと。それが僕らの強みでもあるし、どんな曲をやってもそこはブレないところかも知れないなと思いました。けっこう展開をシンプルにしたので、楽器プレイヤーの方はもっと複雑なのを求めるかもしれないんですけど、ライブではこれくらいシンプルな構成の方が伝わることがわかりました。なので、それを踏まえた上で『Millionaire』も制作していきました。

――確かに皆さんが作るとなかなかファニーな感じにならなさそうですね。でも、それが強みだなと私も思います。

 シングルからけっこうリリースが空いたのは、ライブなどやってみて、ちょっと様子が見たいというのがメンバーの中にもあったからだと思います。

――結果的にそこから半年間ぐらいで完成させた感じですか。

 そうですね。主に録ってたのは9月で10月にはレコーディングを終えて、マスタリングまで行きましたから。フェスに出ながら色々やっていたという感じです。アルバムなので色んな曲を入れようと思ったんですけど、シングルでのベクトルは振れずに制作していった感じです。

――今回はその中で「Up All Night」がリードということですが、この曲がアルバムの方向性を示している?

 リードも色々考えました。アッパーな曲というのも良いかなと思ったんですけどね。この曲は「I Bet My Life (or Death)」の時にどっちをシングルに切ろうか迷った一曲なんです。この曲にした理由は歌も演奏も全体的にFABLED NUMBERらしさが出ているなと思って。僕ら的にはめちゃくちゃキャッチーに出来たなと思っているんですけど、僕らのキャッチーがみんなからしたら、キャッチーかどうかはわからない(笑)。

――いやいや、この曲のメロディは耳から離れないですよ。

 ありがとうございます。この曲は録り終えてはいたんですけど、最初はもう少し優しい歌い方だったのを、アッパーな感じに歌い直して、それに合わせてアレンジにも成長した自分たちの部分を取り入れて、ギリギリまで音色も悩んだとたいちゃん(Taichi)は言っていました。

――昨年12月6日に開催された『クラウンフェス』でも「Up All Night」は演奏されていましたが、新曲とは思えないほど、観客に浸透するスピードが早い曲だと感じました。その中でライブへの捉え方も変わった?

 ライブに来る人たちも色々な考え方があると思います。人と考え方を共有したい、SNSもそうだと思うし、自分がやっていることを共有したいというのがあって、同調しなくても良いと考えている人はかなりマイノリティになってきていると思います。バンドのことを知らなくてもフェスに行くということが目的になっていたり、知らないバンドでも盛り上がれればいいとか、これは俺しか知らないという自尊心がある人もいるとは思いますけど。そういう意味では「Up All Night」は音源を聴いただけでは、どういった盛り上がりをするのか、わかりづらいかもしれないですけど、ライブで見てもらえれば一体感をすぐに作れるような曲になったと思います。手応えがあります。

――その一体感は確実にありますよ。

 今回のアルバム全体を通しても、音源とライブの印象がそんなにかけ離れていないものになったと思います。過去には「ライブの方が良かった」と言われることもありますけど、そうじゃない、音源とライブがイーブンになれるものを作りたかったというのもあって。

――普通はライブの方が良く聞こえるパターンがどのアーティストにもある感じはします。そもそもアレンジが違う場合もありますし。

 そうなんです。あと、アルバムというところで僕らのことを気に入っていて過去の曲を知っている人たちは、その変遷を感じて好きになってもらえる曲も多いと思います。自分が好きなアーティストのアルバムって聴いていると、リード曲より他の曲の方が好きになることが多いと思うんです。

――確かに、それは好きなアーティスト“あるある”かもしれないです。

Eita(撮影=村上順一)

 それはやっぱり、そのアーティストの変遷を知ってるからそうなることが多いと思うんです。「Up All Night」から入って来てもらって、そういう風にルーツを感じ取って聴いてもらえるようになったら嬉しいなとも思っています。もう一曲のサブリードの「Be Louder」から入ったとしても楽しめる内容にしなければいけないと僕個人では思っていました。この2曲を聴いて、アルバムを聴いてみたいと思わせる作品にしなければいけなかったんです。

――とはいっても、FABLED NUMBERは全曲リードの姿勢が強いですから。

 何かを際立たせる為に捨て曲を作る感じではないですからね。曲のタイプが違っても相当力が入ってます。リードから入ってもらっても、アルバムのどこを切り取っても気に入ってもらえると思います。

――アルバムタイトルは『Millionaire』ですが、なぜこのタイトルに?

 いつも通りたいちゃんが付けたんですけど、11月頃にこのタイトル案が来たんです。上昇志向が必要なんだというところです。大きく僕らが成功したいというのが表れています。でも、自分たちの理想は崩さずできた作品で、このタイトルに負けない作品が出来たなと思います。やっぱりパッと聴いてわかる言葉にしたかったんです。タイトルとリンクするようなバンドだと思うし、リンクする作品だなと。今まではただ格好良いから付けましたみたいな感じだったのが、しっかりとした意味が送られてきた時に書いてあったので、今までとは違います(笑)。

――良く3枚目というのは勝負作だったり、ターニングポイント的な作品になることが多いのですが、そこは意識されました?

 3枚目だからというのは、そうでもないかもしれないです。だけど、今回はどこまで個性を強く打ち出せるかというのはけっこう考えました。というのも、1枚目の『ILLUMINATE』は僕らの癖をあまり出さないようにしていて、2枚目の『THUNDER』は僕らが前からやりたかったサウンドで勝負したいというのがあって。今回はライブで今作の曲しか出来ないということになっても、それでも納得出来るような曲を出したいということぐらいで。

――ライブをより強く意識したアルバムになったわけですね。

 そうです。たいちゃんも「今後ライブでやらなくなるような曲は入れない」といったスタンスでしたから。作品自体への気合の入れ方は変わらないと思うんですが、やっぱり手応えというのはライブで演奏した時が一番わかるので、そこでどれだけ初めてのお客さんにアピール出来る曲というのは考えました。

――そこでひとつ疑問があるのですが、「Neo」という曲はエレクトロサウンドを主に構成されていて、バンドサウンド、ライブというところから少し離れている感じもありますが、この曲の立ち位置は?

 この曲は間を埋めるような曲、『THUNDER』に収録された「Ride the Sound」のような感じでやろうかという話になって。曲としてもすごく良い感じに出来て、ここからギターやベースを足したりも出来るなと思っているので、ライブバージョンとして少し変えてやると思います。このままでは多分やらないかなと。

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