大友良英氏「いだてん」音楽は規模感が違う、大河史上最大トラック 制作裏側
INTERVIEW

大友良英氏「いだてん」音楽は規模感が違う、大河史上最大トラック 制作裏側


記者:木村武雄

撮影:

掲載:19年01月05日

読了時間:約10分

 1月6日スタートするNHKの大河ドラマ『いだてん〜東京オリマラソンムピック噺(ばなし)〜』。音楽を手掛けるのは、連続ドラマ小説『あまちゃん』(2013年)の音楽を担当したことでも知られる大友良英氏だ。今回は、「走る」「五輪」がテーマともあって、音楽づくりではダイナミックさや疾走感を大事にしたという。特に、オープニング(OP)では、大歓声に沸く五輪会場を意識し、様々な楽器や歌声を取り入れた。録音した数いわゆるトラック数は実に700にものぼり、このことからも壮大さが伝わってくる。先般、同局で大友氏の合同取材会があった。朝ドラと大河の違いや時代背景、同曲に込めた思いなどが語られた。

規模感が違う、世界へ視野向ける

 オーケストラをベースに、弦楽器や打楽器、和楽器から洋楽器など様々な音色が勢い良く飛び出す。幾つも重なる歌声は実に華やかだ。曲が流れ終わった瞬間、拍手が巻き起こった。盛大な拍手をもって迎えられた曲こそ、『いだてん〜東京オリマラソンムピック噺(ばなし)〜』のオープニングテーマだった。

 取材に先駆けて、テーマソングが披露された。「どうだった?」「一緒に聴きたかったな」、関係者の呼び込みで会議室に入ってきた大友氏は笑みを浮かべてそう語った。

 大友氏の作曲スタイルはまさにマラソンランナーのようだ。「僕は助走が長いんですよ」。この物語がどのようなものなのか、時代背景はどうなのか、これに相応しい楽曲はなんなのか、この作品の音楽であるための理由を、時間をかけて考え尽くす。その答えが見つかれば、あれよあれよと曲が出来ていく。自身の特長をそう語った大友氏。

 『あまちゃん』では跳ねるようなリズムで、ドラマの世界観を見事に表現した。今回は「『あまちゃん』のごちゃごちゃ感を世界規模に広げてみました」という。五輪がテーマともあって世界に視野を向けた。跳ねるリズムも使われているが、“根源”はブラジルサンバ。中南米に1カ月半旅した際にヒントを得た。「中南米の音楽の面白いところは多くの人数が参加するアンサンブルが多い。ブラジルは何百人規模。それを実際に見て痛快だった」。楽曲の輪郭がはっきり見えた出来事だったという。

 今回の大河は、日本が初めて夏季五輪に参加した1912(明治45)年のストックホルム大会から、1932年のロサンゼルス大会、1936(昭和11)年のベルリン大会を挟み、1964(昭和39)年の東京大会までの半世紀の知られざる歴史を描く。主人公は、日本で初めてオリンピックに参加し、“日本のマラソンの父”と言われる金栗四三(中村勘九郎)と、東京五輪招致に尽力した日本水泳連盟元会長・田畑政治(阿部サダヲ)の2人だ。

 大河としては33年ぶりに近現代史を描くとあって、音楽でも当時の時代感を現代にどう落とし込んでいくか、というところも注目される。実際、どのような流れで楽曲を書き進めていったのか、ここからは大友氏が語った内容を一問一答で紹介する。

【取材=木村陽仁】

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事