佐野岳、将来は焚き火を囲み音楽を――「ふたつの昨日と僕の未来」板についたランナー役
INTERVIEW

佐野岳、将来は焚き火を囲み音楽を――「ふたつの昨日と僕の未来」板についたランナー役


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:18年12月17日

読了時間:約16分

撮影を経て、今という時の大切さを知った

――映画に関しておうかがいしていきたいと思います。今回の撮影は、愛媛でおこなわれたということですが…。

 はい、今年の2月にオール愛媛ロケで撮影しました。

――それは寒い時期でしたね、いかがでしたか、愛媛は?

 とても寒かったですけれど、どの現場にも現地のボランティアの方が、温かいホットミールを作って、炊き出ししてくださったので、身も心も温まりながらの撮影でした。本当に感謝です。

――それはとても良い撮影でしたね。私は映像の場所として一番インパクトを感じたのは、やはりマイントピア別子の端出場(はでば)ゾーンのシーンかと思いました。ただパッと見ただけでは気づかなかったのですが、ロケではいろんな名所に行かれているんですよね。

 そうなんです、本当に色んなところに行かせて頂きあまり見たことのない景色に“日本にこんなところがあるんだ!?”みたいな驚きばかりでした。。たとえば同じマイントピア別子の東平(とうなる)ゾーンなんかは「東洋のマチュピチュ」と呼ばれたりしていますし。

――「東洋のマチュピチュ」ですか? なるほど、写真を見ると確かにマチュピチュ遺跡を髣髴させるエキゾチックな雰囲気がありますね。

 今作はファンタジーな要素も持ち合わせた作品なので、こういうスピリチュアルな建造物などは説得力が出ますよね。

――佐野さんがいちばん印象的に感じられたところは、どのようなところでしょう?

 僕はやっぱり“新居浜太鼓祭り”の会場ですね。ここは本当にすごかったです! 当日は2台の太鼓台を出していただいて、エキストラも5000人ほど集まってくださって。

――エキストラで5000人ですか!?

 愛媛の方々は太鼓台が大好きらしくて“太鼓台が出ているぞ”と聞くと、続々と沢山の人が集まってきて。それで、最終的には5000人ほどの方に集まっていただきました。

――それは本当にスゴイですね。まさしくこの映画のために、集まっていただいたというような。

 本当にそうですね。地元の方々が本当にすごく協力的でしたし、本当に感謝しかないです。。

佐野岳

佐野岳

――そんな環境で、この作品のテーマは、いわゆる「タイムパラドックス」系といわれているものかと思います。題材としては、時間軸とエピソードを整理するのが、かなり難しいジャンルだと思いましたが、よく流れを綺麗にまとめられたと感じました。複雑なストーリーほどセリフによる説明が多くなる傾向がありますが、それを極力排してかつバランスよく展開されて。一方で佐野さん的には演じていて“あれ? 今どっちの世界の海斗だっけ?”と迷ったりしませんでしたか?(笑)

 確かに僕も、最初はこんがらがってしまうかも、とは思いました。なので入る前には台本で一応チェックを入れて、“今はこっち”という認識を持ちながらやっていました。また完全に分かれた二つの世界だったらいいんですけど、今回の作品では、どちらの世界でもない“真ん中”といえるような世界もあるので、そのどっちつかずというところをA,Bの中の“C”と名前をつけたりして。

 合わせて“監督と要相談”と思えるような箇所もCにして、その場面での塩梅や、微妙なさじ加減を監督と常に話しながら、詰めていった感じでした。言われるとおりそれこそ“説明”が必要かな、と思いながらも、そこまで丁寧に説明をしない、というのはすごくいい塩梅だと思いましたし、それを、「見えるもの」「見えてくるもの」という線引きみたいなところがすごく綺麗だな、という感覚は、完成して出来上がりを見たときに思いました。

――その複雑な展開の中で大きく描かれているポイントとして、佐野さんが演じられた海斗という役柄の、過去に対する後悔のような部分があると思います。おそらく世の中の人々はみんな、過去に何らかの後悔というものを持っていて、それが取り戻せたらなあ…と思うところって、必ず誰しもが持っているんじゃないかと思うのですが…佐野さんご自身はそういったものは?

 “取り戻したい”過去ですか? そうですね…ひとつ思っているのは、高校時代に留学とかができていれば、と考えることはありますね。

――それは何か今進んでいる道とは違って、実は高校時代に“こういうことをやりたかった”という思いがあったから、なのでしょうか?

 いや、実は周りの人に言い出す勇気がなかったんです。当時はサッカーもやっていたということもあったし、そんな中ではなかなか言えなくて。

――それはちょっと複雑な感じでしたね。でもある意味、佐野さんご自身のその時期に、色んな選択肢があった上でのものというか…前向きな方の後悔、という感じもしますね。たとえばこの映画の海斗みたいに“マラソンランナーとして活躍しながら、途中で断念した”というような、後ろ向きな感じの後悔は、逆にあまりないような感じでしょうか?

 いや~、正直今のところはないと思うんですが…どうなんでしょうか、自分的には無いと言ってしまうこともなんだか…(笑)

――うらやましい(笑)。でもたとえば映画のこの役柄みたいに、佐野さんがある日、別の世界に行けることがわかって、先程言われたように“自分が留学する”世界に行けるとしたら、佐野さんは果たして今の世界とどちらを選ばれるでしょうか? 劇中の海斗は、やっぱり今のまま、という世界を選びましたが…。

 やっぱり誰しも思うじゃないですか? パラレルワールドというものがもしあったとしたら、こういう人生を歩んでみたい、とか。僕も撮る前はどちらかというとパラレルワールドの方がいい世界だったら、そっちに行きたいな、って思っていました。

 でも撮影が終わった後は、結構海斗とリンクする部分が多くて。そういう撮影を経て今という時の大切さとか、今あるもの、周りに居る人たちの大切さというのを、自分自身改めて気づかされました。だからこの映画を撮った後は、現状で頑張り続ける、という気持ちになりました。

――海斗という現状を選んだ人物に、深く共感したと?

 そうです。だからその意味でも、この作品が観た人の背中を押すことができたらと思います。もちろん人それぞれ自分なりの解釈もあると思うけど、どんな解釈でもいいので見てもらいたい。作品はその瞬間、ようやく成立するというか、完成すると思うんです。そう考えると、やっぱり少しでも多くの人に見ていただきたいなという思いは、どんどん増してきています。

――では、今、後悔の念を持っている方々には“前を向いて欲しい”というメッセージも込められている感じでもあるのでしょうね。

 その中で、やっぱり人とのつながり方をすごく大切に描いている映画だと思います。簡単に携帯電話なんかでつながれる時代だからこそ、この映画を通して「そこにいなくても、つながっていられるような関係性」みたいなものを、もう一回改めて考えてみるのもいいのかな、という気にさせてくれる映画になっていると思うので、少しでも感じ取ってもらえるものがあればと思います。

――なにかいろんなことを考えさせてもらえるような映画だと感じました。多分、みんな“俺だったら”みたいな事を考えさせられるような感じですよね。

 そんな見方をしてくださるのは嬉しいです。色々な人の立場で見られるような、共感性の高い映画にもなっていると思うので、老若男女問わず沢山の方に観ていただければと思います。

(C)2018「ふたつの昨日と僕の未来」製作委員会

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佐野岳
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