藤野涼子、音楽は「メモリー、思い出のようなもの」:映画「輪違屋糸里」
INTERVIEW

藤野涼子、音楽は「メモリー、思い出のようなもの」:映画「輪違屋糸里」


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:18年12月11日

読了時間:約14分

演技を強く支えてくれた松井玲奈の存在

――ラブストーリーという面ではいかがでしょう? 16歳というと「もっと等身大のラブストーリーから始めたい!」というか(笑)。かなり情熱的で大人なラブストーリーでしたが、これをいきなりというのは、かなりプレッシャーもあったのではないでしょうか?

 なかなか熱い映画になっていると思います。時代劇初挑戦の中、恋愛映画も初挑戦で不安もありました。

――また、ラブストーリーの中心というか、糸里という女性と土方歳三との関係は、一筋縄ではいかないですよね。本当に好きという感情だけではないところもあり、かなり難易度も高い感じがしました。

 はい。最初に脚本を読んだ時、糸里は精神年齢が25~6歳くらいの大人びた強い女性という印象がありました。しかし、加島監督とお話させていただいた時に、“今の涼子ちゃんと同じくらいの精神年齢で天真爛漫、ちょっとおっちょこちょいで、いたずら好きな性格が、糸里なんだよ”とアドバイスをいただき、 “あ、糸里と私の共通点って、そこだ”ということに気づくことができました。それからは、糸里の感情を読み解くことが、できるようになっていきました。

――その“おっちょこちょい”の奥にある性格がまた深い、と私は見て感じました。たとえば松井玲奈さんが演じられた吉栄と比べてすごく対照的なキャラクターですよね。

 “お姉ちゃん”をしている吉栄に対して糸里はある日、甘味処のご隠居さんと将棋で勝負し、それに勝ってテンションが上がり、たくさんみたらし団子を食べて、さらにそのたれを口の下につけたまま気がつかないというシーンもあり、とても子供っぽいです(笑)。対照的な性格ですが、糸里が成長していく中で、性格が逆転していくところがあります。

――その2人の違いは、成長の中で逆転すると?

 最初のうちは、まだ糸里のほうが子供っぽく、吉ちゃん(吉栄)のほうが平山五郎さんとの関係もあり、大人びた女性でした。しかし、劇中で、糸里が橋の欄干で涙を流すというシーンがあるのですが、あそこで私の中では、糸里の感情が大きなターニングポイントにきたというか、大人に変わっていったところなのだろうという解釈をしました。

――では、成長という部分でも、いろんな読み解き方があったと?

 はい。そこからは逆に吉栄のことを糸里が守るという、強い女性に成長していったなと脚本を読み解いていきました。

藤野涼子

藤野涼子

――クライマックスでは、最初におっちょこちょいだった糸里が啖呵を切ってみたりしているのに対し、逆に表に立つ雰囲気のあった吉栄が弱いイメージになったりとか。それは何か表向きとは対照的なものが見えるタイミングがあると思ったのですが、それはどちらかというと成長により、そういうほうに変わっていった、というところなのでしょうか?

 私は、そういう風に解釈をしました。しかし、実際松井さんは年齢も先輩ですし、本当にお姉さんみたいに優しく接してくださりました。

――すごいですよね。本格派女優という演技を見せられていましたね。

 本当にそう思います。私は松井さんを、女優さんとして自分の芯のあるところを持っている方だと感じました。撮影をする1~2カ月前からリハーサルと所作、お琴などの稽古が沢山ありましたが、その時に松井さんと一緒にお稽古をさせていただき、その時から友達のように“ここの手の位置、わからないよね?” “すり足って、どうやってやるんだろうね?”と松井さんのほうからどんどん話しかけてくださりました。その一方で撮影時期が12月だったこともあり、クリスマスのプレゼントに何が欲しいかという話になり、松井さんは「仮面ライダーのベルトが欲しい!」と(笑)

――仮面ライダーのベルト!?(笑)

 仮面ライダーと電車が大好きみたいです(笑)。その時に仮面ライダーが好きだということを初めて知りました。すごく衝撃的でしたが、いろいろな趣味をもっていて、とても素敵だなと思いました。

――一番共演されるシーンが多かったと思いますが、どんな感じで?

 吉栄がある決断をする重要なシーンがあるんですが、そのシーンの撮影がすごく印象的でした。

 それまで私と松井さんは、カメラを回ってないところでは撮影の合間にもお話しをしていました。しかし、その時は私が集中しないと自分の役に入っていけず、なかなかセリフを言ったりその気持ちになったりすることができなかったため、カメラが回っていないところでも落ち着いて、自分の役と向き合っていたいと思い、一人になって考えている時も、何も言わず、見守っていてくださり。さらにそのシーンで私が吉栄を抱きしめるところでも、カメラ位置のチェンジをするタイミングで抱き合ったまま待たなきゃいけない時がありましたが、そのシーンの撮影が終わるまで、力を弱めずギューっとしたままでも何も言わずにいてくださりました。だから気持ちの感情が続いたまま演じることができました。松井さんの心遣いがあったからこそ、私も糸里の難しい感情を追っていけたと思います。

――たとえば劇中で糸里と吉栄がいるシーンで、松井さんが号泣する姿なんかが見られましたが、本気で泣いてくれないと、糸里としても凛とできないところがあったと思いましたし、その点では私も見ていて“松井さんは藤野さんを大分支えられているな”という感じが見られましたね。

 本当にいろいろなところで助けていただきました。また溝端さんとの共演も今回は多かったのですが、最初にお会いした時には、私の緊張を解そうと、関ジャニ∞の無責任ヒーローを歌ってくださいました。

――さすがイケメン! カッコいいことをしますねえ(笑)結構フランクな方ですね、自分から歌ってくれるなんて。

 そう「お勧めの食べ物屋さんはここだよ! 行ってみて!」と何気ないお話をしてくださり、本当に心の支えになっていただきました。温かみのある現場で、本当に楽しかったです。

――一つおうかがいしたいのですが、今後やってみたい役はありますでしょうか?

 今までまじめな優等生や糸里のような強い部分を持つ役を演じさせていただくことが多かったです。まじめなしっかり者の役はこれからも演じさせていただきたいですが、コメディチックなテンポのある芝居も興味があり、挑戦させて頂きたいと思っています。

――何かイメージが思い浮かんでくる気がします。

 是非挑戦してみたいです!

藤野涼子

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