ネクライトーキー「過去の音楽から引き継がれてきた文脈」古典から生み出す新しさ
INTERVIEW

ネクライトーキー「過去の音楽から引き継がれてきた文脈」古典から生み出す新しさ


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年12月05日

読了時間:約15分

このアルバムを作っていいバンドになれた

朝日(撮影=村上順一)

——「オシャレ大作戦」では<嫌いな、テレビやら音楽が こっちを見たまま 笑っていた 止めていいかな>というリリックがあります。これは今感じていることですか?

朝日 思っちゃったりもしますね(笑)。やっぱり、あの曲はすごい楽しい曲なんですよ。楽しい曲なんですけど、なんか「楽しいな」って足を踏み入れた人たちが、よくよく読むと「なんだこの歌詞?」と思ってくれたら面白いなと。だから、すごいポップでキャッチーな部分と、一番尖っている部分をセットにして作ったんです。それもあって、歌詞の要所が暗いんですよ。

 これはオマージュというより、後から気づいた影響なんですけど。「Some Might Say」というオアシスの曲があって。その歌詞が「人気のない駅で待ってる」みたいな内容なんです。でも「オシャレ大作戦」は<ホームに居たって 始発ならこの先もまだまだ来やしないんだ>で始まるんですよ。「まんまオアシスやんけ」って思いました(笑)。オアシスは辞書を引っ張って和訳したりしていましたから。英語は苦手でしたけど。

 「ものづくりって孤独感がつきまとうんだろうな」と思ってます。僕が作る曲もメンバーでさえ、本当の根本までは理解できない。もっさが作る曲も僕じゃわからない部分が絶対どこかにあって。それはどうしようもない、という気持ちをここで歌詞には込めています。

——「遠吠えのサンセット」では<友だちとか 元カノ、元彼やら 結婚してくぜ>とありました。これは朝日さんの年齢的なリアルでもあると思います。これを歌う、年下のもっささんはどんな気持ちのでしょう?

もっさ 多分これからそういう時期が来るんだろうなと思います。

朝日 まだね。多分それが来たら、歌がもっとよくなるんじゃないかな。

もっさ 歌詞は暗いけど、私はフラットな気持ちで歌っているので、重くは聴こえないんじゃないですかね。歌詞は暗いところもあるけど、曲はポップだし。私はあえてポップ寄りに歌ってます。まるで悲しいことを歌っていないかの様に。その辺の歌詞は特にそうです。私の周りの友達はそんなに結婚してないので、歌詞については「そういうものなかなあ」というだけです。ただそれにあまり感情を乗せるとうそっぽいし、普通に曲調に合わせています。もしかしたら数年後にめちゃくちゃ感情を乗せて歌っているかもしれませんが(笑)。

朝日 そこの箇所はベース(藤田)が一番エモいんじゃないかって説ある(笑)。もっさが歌っている後ろで羅刹の様な顔で弾いてるからね。

もっさ 確かにそっちの方が感情がこもってるかもしれない(笑)。私は結構フラットなので。

——もっささんが作詞作曲した「ゆうな」「明日にだって」の2曲については?

朝日 僕はもっさがやっていたバンドを見て「俺が一緒にやらなくても売れるんだろうな」と思うくらい一つひとつの曲がよかったんです。というのも、僕の曲ってオタク向きなんです。もっさの曲は本当に普遍的で、色々な人に届く曲だと思いました。すごいストレートに脳に入って来て。やっぱ自分で作った曲を自分で歌うと、正しく熱が伝わるパワーがあるなと感じます。「ゆうな」は、もともともっさが作っていた曲で。

もっさ ネクライトーキーでやるとは思わなかった曲です。

朝日 「明日にだって」は曲はもともと「行方不明」というタイトルで。僕がメロディも作っていたんですけど、だんだん違和感を覚えたんです。悪くなっても構わないから、ネクライトーキーというバンドが固まりになるために「俺が最初に作ってた曲だけど、メロディと歌詞はもっさにまかせる。もっさがいいと思うのを出してほしい」と特殊な経緯で生まれた曲なんです。

もっさ 曲が変身したんですよ。

朝日 なんでもやっていいバンドだな、と思ってたので。アルバムに入っていても全然違和感がないし。本当にこのアルバムを作って、いいバンドになれたんじゃないかな。

——来年からは『ネクライトーキー「ONE!」リリースツアー“オーキートーキー!全国編”』もはじまります。

もっさ 初ツアーなんです(笑)。2マンで好きなバンドさんに声をかけたんですけど、みんな出てくれると返事もらえました。8カ所周ります。今まではブッキングのライブばかりでしたが、今回は「自分たちの音源ができました!」と報告しにいくのが楽しみです。

朝日 追加になったワンマンもあります。一応2回目のワンマンということで。もう一つやってるバンドでもまだソールドアウトしたことがない、梅田Shangri-Laと渋谷WWW。そのキャパをパンパンにしたことがないので、そこにたくさんの人が集まっている景色を見てみたいです。僕が第三者だったら「もっと大きいところでやってもいけるよ」と言うかもしれないんですけど、10年バンドやっててなかなか400人キャパが大変だということを知っているので。なかなか、その10年分の臆病はぬぐえないです。

もっさ 私はその広さのことがあんまりわかってないので楽しみ。

朝日 言うねえ(笑)。だからお客さんが集まってくれる様になった現状は驚きばかりです。バンドをやってきた身としては、諦めずに続けてきてちょっと報われたなという気持ちです。もちろん、まだまだ先は長いんですけど。

——ちなみに今回の作品は『ONE!』ですけど、次作は『TWO!』だったり?

もっさ もしかしたら『猪』かもしれません。

朝日 実はグッズとかを見ると犬がモチーフに使われてたりしていて、このタイトルは数字のONEではなく、犬の鳴き声の「ワン!」なんです。

もっさ 今年は戌年ですしね。後付けですけど(笑)。

朝日 なので、次作は多分『TWO!』にはならないと思います。『ONE! ONE!』とかになるかもしれない(笑)。

——では『ONE!』の後ろにサブタイトルをつけるとしたら?

もっさ 「やってしまった」とか。

朝日 どういうこと?

もっさ やりたい放題やったってこと(笑)。

——では、最後に読者に一言ずつお願いします。

もっさ どの曲も個性があって、1曲1曲が違う人みたいな。めちゃくちゃ楽しいアルバムなので聴いてください。

朝日 とりあえずアルバムを通して聴いてもらうと今のネクライトーキーがわかるし、「ここからどうなっていくのか」とワクワクできる作品になったと思います。ぜひよろしくお願いします。

(おわり)

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