ネクライトーキー「過去の音楽から引き継がれてきた文脈」古典から生み出す新しさ
INTERVIEW

ネクライトーキー「過去の音楽から引き継がれてきた文脈」古典から生み出す新しさ


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年12月05日

読了時間:約15分

 ロックバンドのネクライトーキーが12月5日、1stアルバム『ONE!』をリリース。ネクライトーキーは2017年結成。朝日(Gt)、藤田(Ba)、カズマ・タケイ(Dr)、もっさ(Vo、Gt)の4人組。以前からミュージックビデオなどで注目を集めていた彼らの待望の初アルバムは、「1曲1曲が違う人みたいな。めちゃくちゃ楽しいアルバム」と話す。この作品について今回は朝日ともっさの2人に出会いから、引用に込められた意味、歌詞への想い、ネクライトーキーの背後にある文脈とは一体なんなのか、朝日ともっさに話を聞いた。

勘だけで動くのも必要だ

——いよいよ1stアルバム『ONE!』が発売となりますが、今のご心境はいかがですか?

朝日 今まで自主制作で作ってきたものが、ちゃんとしたパッケージで出せるということが嬉しいなと思います。

もっさ めちゃくちゃいいものができたなと思ってます。バンドでアルバムを制作するのも初めてで、12曲もレコーディングできるのかどうか心配でした。でもスタジオもいいところで録れてよかったです。

朝日 間口をできるだけ広げようということでミュージックビデオも上げています。以前は自分のPCのフリーソフトで動画を編集して作っていました。誰かに頼む予算もなかったんですよね(笑)。

もっさ 壁に画用紙を貼って撮影してました。

朝日 DIYですよ。普通のリハーサルスタジオでやってましたから(笑)。

——そもそも、お2人はどんな風に出会われて、バンドを結成されたんですか?

朝日 僕が「石風呂」名義で作っていたボーカロイドの曲を彼女がカバーしているのを見つけたんです。その声が本当によくて。とにかく一緒に何かやってみたいと思ったので、真っ先にコンタクトしました。でも連絡を取った6年前、彼女はまだ高校生で。「高校生の判断力で音楽の世界に引きずり込むのは、よくないな」と思ったので諦めたんです。

 そこから4、5年経っても「女性ボーカルのバンドをやりたい」という想いはずっとあったんです。もうひとつ組んでいる、コンテンポラリーな生活というバンドのライブの日に「そういえばあの子どうしてるかな」と思って、ツイッターで検索したんですよ。そうしたらバンドをやっていることがわかって。自分から音楽の方に来てるなら、また誘うのもありかなと。しかも、その日のライブにちょうど彼女が来てたんです。「え!」と思って、会場を探しに行ったらいて。それからその日のうちに「バンドやろう」と誘いました。

もっさ 会う気もなく、たまたまライブをこそっと観に行こうと思ったんです。バレると思わなかったし、バンドに誘われるとも思ってなかったので、びっくりでしたよ。普通に。私は4、5年前のことだし、忘れられてると思ってたんです。挨拶するのもおこがましいなと(笑)。たまたまツイッターでチケットの予約をして、それを朝日さんが見たらしいんです。
朝日 それでツイッター見たら、僕らのバンドじゃなくて、対バンのバンドを見に来ていたんですよね。

もっさ 言いにくかったです(笑)。

朝日 その日は勢いで誘ったんですけど、後でも連絡を取って、今活動休止しているもっさのバンドを見に行きました。そのライブを見て、初めて決まったんですよね。声がいいだけじゃなくて、音楽に対する姿勢が本当に僕の一番好きなタイプのバンドマンだった。それがかっこよくて、音楽家として尊敬できると思ったから、改めてバンドに誘いたいと。それから後日「しんどいし、大変だし、時間も削られたり色々あるけど、一緒にバンドをやろう」と伝えて、そこで正式加入ということになりました。

——もっささんはどう思いました?

もっさ 私は朝日さんの曲は絶対大丈夫というか、もともとファンだったので。まじで好きだったんですよ。だから「朝日さんなら大丈夫」という自信はありました。むしろ「私で大丈夫ですか?」っていう感じ。本当に地元のライブで細々と活動しているくらいの田舎の女が、そこに入って大丈夫なのかなと思ってました。カバーした曲は「夕暮れ先生」という曲でしたね。今ライブでもやっているんですけど、その曲をむちゃくちゃ下手くそな歌でカバーしてましたから。

朝日 下手くそ、でしたね(笑)。

もっさ 信じられないレベル。よく声をかけようと思ったないうくらいのカバー。でも私は、その曲が単純に好きだったんです。その頃、歌うことは好きだったけど、他人の評価が知りたかったんです。ネットって、第三者の意見がシビアに入ってくるかなと思って、好きな曲のカバーを上げました。

朝日 第三者の意見がほしかったのに、作曲者から連絡が来るとは(笑)。

もっさ そうですよね。

——「声をかける」という行動力にもぐっときました。

朝日 普通は新しいバンドを組む時、実績もあって、そのバンドも割と有名でという人を誘ったりもしますよね。名が知れてるモデルだったりとか、フォロワーが多いネットで活動しているシンガーだったりとか。2つ目のバンドをやる時は「盤石の布陣でいこうぜ」という感じじゃないですか。でもボーカルは経験も浅い、フォロワーも僕の100分の1くらいしかない、めちゃくちゃ上手いわけでもない。

 「いいな」という勘だけで動くのもバンドには必要なんじゃないのかな、とその瞬間に思ったんです。「ええやんそれで」と。その時に吹っ切れた感じでした。周りからは「大丈夫なの?」という意見もありましたけど、全部無視しようと思って。自分と自分が信じたいと思ったものだけを信じればあとどうにかなると。瞬間的に決めて動き始めました。

——そんな盤石なバンド結成に疑問を持たれているところも?

朝日 ありだとは思うんですけど、僕は別にやらなくてもいいなと。そういうやり方でこっちが楽しかったり、喜んだりする人がいるなら、それは人に幸せにしているからいいなと思っています。ただそれはもう他の方がやっていることなので。それはすでに誰かが開けた後の宝箱みたいな感じがするんですよ。宝箱があるかわからない、誰も行ったことのない道の方が面白そうだなと。ゲーム感覚なんですよね。

 そういう気持ちになってから、人のやり方とかはそんなに気にならなくなりました。感心するところは感心して、面白いことは面白いと思って、それはいらないと思えばいらない。何かに嫌悪感みたいなものは、まあ、あるにはあるんですけど。でも今は自分の事をどうにかしたいという気持ちです。最初はいびつな集まりでも、チームとして動いていったらそれがハマっていくということもきっとあるでしょうね。

もっさ 私もどちらからというと、ゼロから始めるのが好きなんです。既にある力を借りるよりは、作り上げていきたいというタイプなので。だから今の話はわかるような、わからないような(笑)。

朝日 だからもっさは僕がやっていた音楽のやり方をネクライトーキーで使われると、露骨に嫌そうなんです(笑)。

もっさ そんなことないですよ(笑)。

朝日 例えば売り文句とか考える時に、普通に音楽活動しているメンバーがいたら「○○のメンバーとしても活動している××」と書いた方が安心感があるじゃないですか。

朝日 その知名度で興味を持つ人も絶対いると思います。だからやってきた活動や実績は経験値としてあった方がいいけど、別のものを宣伝する時にそれを使って引きあげようとするのはあんまり好きじゃない。

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