武田梨奈、音楽は自分をコントロールしてくれるもの:映画『殺る女』
INTERVIEW

武田梨奈、音楽は自分をコントロールしてくれるもの:映画『殺る女』


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:18年11月28日

読了時間:約15分

男性と女性で見え方が変わる“復讐モノ”ストーリー

――『殺る女』は、タイトルからにして物騒な作品ですが(笑)。“殺し屋”というキーワードだと、たとえばリュク・ベッソン監督作品の『レオン』『ニキータ』みたいな、少しシックな雰囲気を想像したのですが、映画の頭と終わりにはクエンティン・タランティーノ監督作品を思わせるような演出があったり、なかなかに見所が多い作品ですね。最初にお話を受けられた際には、どのような印象でしたか?

 いわゆる“復讐モノ”で、特にこのストーリーに登場する女性は皆、闇を抱えているんです。だからきっと男性と女性では、見終わった後の感想とか、作品自体の見方が異なってくる作品だろう、と思いました。その意味では、私たちは女性の見方で演じなければいけない、とかいろいろ考えました。

――ちょっと予断になりますが、武田さんが空手を始められたきっかけは、実は“お父さんが空手の大会で敗れたのを目の当たりにして、仇を打とうとした”というのがきっかけだったとおうかがいしたのですが、その意味では共感する部分が?(笑)

 いや、それは違いますね(笑)。実はどちらかというと、“父を倒した相手の方への怒り”というより、“父自身”に対しての怒りでして(笑)

――お父さんの?

 その時まで父は私の中で、すごいヒーローという存在だったんです。そんな父が“すごく頑張ってやっている。だから見に来てくれ!”って気合いを入れて試合に誘ってくれたのでと見に行ったら、もう一瞬で負けてしまって…その瞬間、私の中のヒーロー像の父じゃなくなってしまって…(笑)それがすごく悔しくて“だったら私がやる!”って。それで空手を始めたんです。

――それは意外に壮絶なお話で…でも空手って、すごくシビアですよね。本当に一瞬で勝負がつくこともありますし。

 そうなんですよね。試合って本当に一瞬。でもやっている最中は、すごく長く感じたりもしたり、不思議なものです。

――確かに。お話を映画に戻しますが、主演の知英さんが女性の殺し屋という大役を演じているわけですが、知英さんの“殺し屋”振りはいかがでしたか?

 いや、もうカッコいい! 美しいし、カッコいいし、見とれてしまいます。私はああいう役をやったことが無いので、やってみたいと思いました。私はどちらかというと、これまで体を張ってアクションをするタイプ、格闘系で、汗をかくというか男臭い系なので(笑)、ああいった女性の、海外でもあるようなガンアクションなんかは憧れではあります。

――劇中では、武田さん演じる由乃とは対照な印象の登場人物として、駿河太郎さんが演じられる加賀俊介という存在がいます。兄弟ながら、かつてはヤクザに染まりながら足を洗い、家庭を持って子供までいるという…由乃とは性格的にも真逆の印象があります。

 そうですね。ただ由乃の中では一番救いとなる存在。加えて俊介の娘のカナちゃんも。普段、由乃は人に対して、いつも作り笑いを見せて過ごしているけど、カナちゃんといる時だけは多分、真っ白な状態でいられる、カナちゃんはそんな子なんだな、という心理状況は、演じていてすごく思いましたし。私にとって今回の現場は、自分の中では余り笑顔でいられる現場ではなかったけど、カナちゃん役を演じる(藤田)りんかちゃんがいるシーンの時だけ、気持ちがすごく清らかになれましたね。

――実際のりんかちゃんは、劇中のカナちゃんと同じような印象でしたか? そのままオーバーラップするような感じというか。盲目という設定になっていますが、その演技もしっかりしていましたね。

 そうなんです! すごくカワいい子で。でもどこか大人びているような。演技もすごいです。

――また駿河さんの印象はいかがでしょうか? 駿河さんも、プライベートでは子の親でもありますが。

 駿河さんはこれまで何度かお会いしたことがあって、別の作品でもご一緒させていただいたことがあります。でもそんなに頻繁に会っていないのに“すごく肩の力を自然と抜かせてくれる人”というか。緊張させないようにさせてくれるんです。本当に“兄”というか、気軽に「お兄ちゃん」と呼んでも、駿河さんだったらいいかなと思えるような(笑)、そういう雰囲気を持った人ですね。

――“本当にお兄ちゃんだったらよかったのに”って(笑)

 いや、本当に思いますね。いつもすごく優しくて。会うたびに“頑張ってるね、元気?”とか、いろんなことを気に掛けてくださるし、すごく優しい方です。

――その一方で、これほどスタイリッシュで、かつダークな雰囲気を描くことを考えられた宮野監督は、武田さんから見るとどんな印象でしたか?(笑)

 こんなダークな作品ですが、宮野監督自身はすごく柔らかくて、どちらかというと自らがガーっと“こうしてください!””こうやって…”と言ってくるより、私のほうから“こう思うんですけど…どうでしょう?”とたずねた時に応えてくれるようなタイプの方なので、イメージと違いましたね。

 この作品の前に、一度映画祭でお会いしたのが、最初の対面だったんですけど、その時から重い雰囲気の作品を撮っていても、すごく柔らかい方だな、という感じが、私はしていました。実際の本人はどんな感じかはわからないところでもありますが、由乃みたいに、実はすごく内のものは強いものを持った方なのかも、とも思えるし。優しくて柔らかい方なんですけど、実はミステリアスな部分もあるのかな、という印象でした。

(C)2018 「殺る女」製作委員会

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武田梨奈
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