阿部進之介、考えさせられた『栞』 障害を背負う役を通して芽生えた感情
INTERVIEW

阿部進之介、考えさせられた『栞』 障害を背負う役を通して芽生えた感情


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:18年10月26日

読了時間:約17分

メインストリームになるもののエネルギーは強いし、それを感じたい

――何かの記事で拝見したのですが、阿部さんは歌を歌うのがお好きだとか?

 まあそうですね、人並みにというか。昨日もカラオケに行ってきました(笑)

――得意のレポートリーは?

 斉藤和義さんとかですね。

――渋いですね(笑)。好みから人物像が見えたり、面白いところでもあります。対して普段、聴くほうはいかがでしょう?

 普段いろいろ聴いています、たとえば洋楽の、グラミー賞のコンピレーションアルバムを買って聴いて“ああ、こういう感じなのか”と思ったり。本当に日本のものも斉藤さんとか、Mr.Childrenとかは昔から聴いているし。

阿部進之介

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――ではどちらかというと本当にメインストリーム的なところを主に、という感じで?

 確かに。なかなか掘り下げるところまではいけてないですけど。

――最近は結構、俳優さんが歌ったり、アイドル系のものがヒットしたりとか、様々な傾向が入り乱れていますが、ご自身としては、やはり正統派的な趣向なのでしょうかね。

 そうですね、やっぱりメインストリームになるもののエネルギーって、すごく強いと思うし、それを感じたいというところもあります。たとえばグラミー賞の受賞式なんかをテレビで見たりするのはすごく好きで。

 もちろん音楽はそういうものだけじゃないとは思うけど、そういう一流の人たちが、どんなパフォーマンスをしているのかとか。インタビューやスピーチなんかからも感じられる。そんなところから、その人がどんな風に生きているのかを、少しでも感じられるのが、すごく刺激的でして。

――そういったものから受けた印象を、演技に反映、還元したいという思いもあるのでしょうか?

 もちろん。それほど明確に意識しているわけではないですけど、無意識的に生活の中でおこなうようにしていると思います。単純に人として強い興味がありますし。

――音楽に限らずエネルギーを感じるもの、というものは何でも受け入れたいという思いもあるのでしょうか?

 それは確かに。エネルギーもそうですけど、すごく人間的なものというか。たとえばグラミーの場面はとても華やかで、どちらかというとプロが集まっての洗練されたもの、という印象。それとはまた違って、たとえばドキュメンタリーなんかは、すごく人間の不完全なものだったり。そんな感じで色んな部分にものもすごく興味があります。もちろん普段は、そういったものを映画で描いているからこそ、ということもありますし。

――一方で、普段単純に家でくつろいでいるときに聴くとか、そんな目的で音楽を聴かれることももちろんありますか?

 移動の車の中なんかでは、結構多いですね。車の中で撮影に向かう前に、その日の撮影に向けての曲を掛けたりとか。また単純に体をウォームアップさせるために、発声をかねて歌いながら運転したりということもありますし(笑)

――気持ちを上げていくために?

 そうですね。やっぱり音楽ってすごく気持ちを左右すると思うんです。その道すがらじゃなくても、たとえば待ちの間に音楽で気分を変えてみたりということはありますね。

――では“阿部さんにとって音楽とは?”などとおたずねすると、一つには絞れない感じもありますね。よく俳優さんにインタビューをおこなわせていただいた際には、「役作りをするとき」とか「台本を覚えるとき」という際にすごく活用されることが多いことをお聞きすることもありますが…。

 いや、逆に台本を覚えるときは、僕は結構無音じゃないと無理ですね。歌詞が入ってきちゃったりして。結構そういうのが気になっちゃうと集中できなくなったりするから。聴くとしたら、あまりそういう歌詞が無いものだったりとか、そんなものが多いかな。

 実はまだ僕は音楽のことをつかめていないというか。音楽は僕の人生の中では、実は途中から始まっていて、10代の頃は、そんなにいいものだとは思っていなかったんです。小学生くらいのときにピアノを習わされたことがあって、すごく嫌いでして(笑)

――“あるある”な感じですね(笑)

 そう、すごく嫌いで。僕は外で遊びたかったんですけど、そんなこともあって音楽の素晴らしさを感じていなかったんです。単なる“音”としか思ってなかったというか。でもそれがやっぱり人生の生活の中で一つ一つ色んなことを感じられるようになってきてから、音楽に対して感性が敏感になってきて…そんな感じで欠かせないものではあるんですよね。

――感性の成長につれて、変わってきた感じなのでしょうか?

 そんな感じだと思います。映画とかを見てもそうじゃないですか? 昔見た映画が、その当時は全然わからなかったけど、今見ると“あ、こんな映画だったんだ”と思うのと同じで、昔聴いた曲は当時は全然わからなかったけど、今聴くと“なんて微妙なんだ”って(笑)。

 最近は何かそんなことが増えてきたというか。それが生活の中で気分を上げてみたり、リラックスしたいな、ということで音楽を雰囲気として使うこともあるけど、ふとした瞬間にその曲にすごく反応することがある。それで何か今の自分を知ることができるというか。“俺、この曲がこんなに響くんだ!?”みたいな感じ。それは映画も一緒なんですけど、そう思ったときに、何かちょっと自分と向き合うことができるというか。だから音楽にもそんな面があると思います。

(おわり)

阿部進之介

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