池田香織、前原滉、白石聖、三浦貴大、阿部進之介、池端レイナ、榊原監督、西川悟平

 俳優の三浦貴大が主演を務める映画『栞』の初日舞台挨拶が26日、都内でおこなわれ、三浦とともに共演の阿部進之介、白石聖、池端レイナ、前原滉、池田香織と、映画でメガホンをとった榊原有佑監督が登壇、さらにスペシャルゲストとして映画のテーマソング『Winter』をプレーした西川悟平も登場し、今作の撮影に込めた深い思いなどを振り返った。

 本作は理学療法士として患者と向き合う主人公が、医療の現場で見られる様々な困難に悩み苦しみながら、希望を求めて前進しようとする姿を、医療の現場、家族とのつながりなどを通して描くストーリー。作品は4月におこなわれた『第8回北京国際映画祭』でワールドプレミア上映され、様々な関心の反響の声を起こしている。

 今回、主人公の理学療法士・高野雅哉役を三浦が担当。その父の稔役を鶴見辰吾、妹の遥役を白石が務める。そして三浦が担当する患者の一人で、元ラグビー選手ながら試合中のアクシデントで脊髄損傷となり、胸から下の感覚を失った男性、藤村孝志役を阿部が演じる。また池端は雅哉の同僚で孝志の担当看護士となる柏木真里役を務める。他にも前原、池田、福本清三ら実力派、個性派俳優が集結している。

8年越しの再共演に阿部「とてもいいセッションができた」

 いよいよ映画の公開日を迎え、榊原監督は「脚本を書いているときに、面白いからとか起伏を作りたいなどということは一切排除し、経験を元に実際に起きていることを書きたいと思っていました。この映画を見て、実際に日本の中で起きていることと考えていただけるのであれば、作った意味があったかと思います」と自身の作品に込めた強い思いを語る。

三浦貴大、阿部進之介

 三浦は「主演作品でこうやって壇上に立つのが久しぶりなので、嬉しくもあり、どんな反応があるのか楽しみ、その反面怖い部分でもある」とこの日を迎えた緊張の様子を明かす。また阿部は「僕の感覚ではもっと前に撮影した感覚。皆さんには今日が初めて、なんか不思議な感覚ですね」と公開初日の気持ちを告白しつつ、4年前に出来上がった脚本から、キャスト、スタッフが集まり出来上がったこの作品に対して、改めて「みんなの力が集まって完成したんだなと。嬉しく思います」と喜びを表す。

 一方、三浦は改めて阿部との再共演について言及、三浦のデビュー2年目頃にはじめての共演を果たしたことを振り返り「その時阿部さんから教えてもらったことが、今の演技の基盤になっている」と阿部へのリスペクトを見せる。そんな三浦の言葉に、完成披露試写会の舞台挨拶の際に持ち込んだ、阿部が三浦に金を払い褒めさせたというネタを、改めて阿部が持ち出し「2000円だと、これくらいしか言わないんだね」などとコメント、再び会場に大きな笑いを誘う。

阿部進之介

三浦貴大

 そんな楽しいコメントを出しながらも、阿部は「(三浦との共演は)もう8年前くらいだったかな?、それ以来会っていなかったけど、お互い役者としての感じるものはあったし、時間を経てもう一回一緒にやれて、凄く自然にやれたと思う。とてもいいセッションができたんじゃないかなと」と、本作の共演で役者としての仕事でも大きな手ごたえを得たことを回想していた。

池端の中国語による予想外の長いスピーチに、三浦は「長えよ!」と語るも驚愕

 まだ撮影当時は役者デビューしたばかりだった白石は、本作の撮影について「とても重厚な内容で、監督が温めてきた作品なので、本当に丁寧に扱わなければならないと思いました。経験も浅い中の出演だったので、がむしゃらでしたね。役柄では三浦さんと鶴見さんという家族間のやり取りが多かったけど、内容が嘘のない、綺麗ごとのない作品なので、自分も嘘なくやることを心がけました」と振り返る。

白石聖

 一方、同じく前回の舞台挨拶で、阿部が三浦と二人で「おちょくって笑わせていた」と語っていた池端。三浦が「愛ですよ、愛」とその弁解をすると、阿部も「そういうことですよ!」とうなずき三浦に続く。そしてその舞台挨拶時にも話題に出た、池端の得意技である中国語による挨拶が、この日披露された。

池端レイナ

 阿部は三浦に「池端の中国語を聞いたら、“ゴメンなさい”って言うようになるから」と耳打ちしたことを改めて持ち出し、池端をからかい気味の三浦にプレシャーを与えるが、池端が予想外に長く流暢な中国語で挨拶をコメントするのを見て、三浦は思わず「長えよ!」とツッコミ。阿部も「めっちゃシュールじゃゃない?」と少し目が点になり、観衆を沸かせる。

池田香織

 池端は改めて「最初の挨拶のとき、緊張しちゃって何を言ってるかわからなくてすみませんでした。こうして公開が迎えられて嬉しかったです…」と自身が長く語った中国語挨拶の日本語訳を明かすと、三浦は「凄かったです、ぜんぜんわからなかった。分からなかったけど、全然凄いな」と恐れ入った表情を見せていた。

 また今回、三浦と同僚役として出演を果たした前原は、実年齢は三浦より7つ下。当初は同僚で大丈夫かと心配していたことを明かしながら「三浦さんが気さくに話しかけてくれたので。実際劇中は三浦さんとしかガッツリやっていないんですけど、このストーリーの中で真ん中にいる人が、熱とかやりやすさみたいなものを作ってもらっていたので、僕はただそこに乗っかればいいだけでした。だから本当に感謝です」と、三浦を中心とした志の高い共演者たちへ、賞賛の言葉を贈る。

前原滉

 さらに今作では雅哉が担当する病気の少年の母親役を務めた池田は「大切な人が闘病中、入院中の人という方は、世の中に沢山いるので、そういう方が見たときに『違う』と言われたらよくないので」と自身の人生をそんな状況に置かれる人々に置き換えることを意識して、真摯に役に向き合い演じていたことを振り返った。

映画が紡いだ不思議な縁を実感した西川

 この日はスペシャルゲストとして、俳優陣と榊原監督の登壇後にステージに現れた西川は、元々「Winter」が、日本に来ることを憧れていた一人のアメリカ人高校生・リアム・ピッカーさんの作品であり、当人が亡くなる直前に書き残した作品をネットに投稿、それを西川がたまたま見つけたことで自身のレパートリーに加わり、また様々な縁でこうしてこの映画に使用されることになったという経緯を振り返る。

西川悟平

 また西川は19日に、榊原監督の地元でおこなわれたイベントに登壇、その際リアムさんの両親も会場に来ており、完成した曲を披露したことを明かし「真ん中にお母さんが座って、僕たちは3人で(映画を)見てたけど、(エンドロールで)子供の名前が出たときに、お母さんは僕の手を震えながら握りしめて、涙を浮かべながら『息子の夢が、今この瞬間かなった。ありがとう』と言われていました」と感動的な瞬間に立ち会ったエピソードを明かす。

榊原監督

 一方、リアムさんの父はアメリカでエミー賞を2回ノミネートされたことのある役者であったことを西川は語り「それぞれの俳優さんが余りにも国際的な演技力を見せていると、感動されていました」と映画にまつわる不思議な縁が、様々なところで繋がったことを振り返っていた。【取材・撮影=桂 伸也】

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