過去が思い出せない
――まずはリード曲の「オレンジバタフライ」からお聴きします。この曲の歌詞は矢野まきさんとの共作ですね。
そうなんです。過去の自分と今の自分が手を繋いで羽ばたきたいというのがテーマだったんですけど、過去を振り返るんですけど、全然まとまらなくて…。
――その過去とはいつ頃の自分?
15歳頃ですね。音楽、作詞や作曲に目覚めた時ぐらいの自分です。その時、自分は結構荒れた環境の中にいて、その時は子供ながらに大人たちのヤバい部分も見ていたし、自分の言葉も押し殺していた時代がありました。今回、その時の自分と向き合ってみたんですけど、全然まとまらなくて、まきさんにカウンセリングに近い感じで話を聞いてもらって。
――過去と向き合うのも辛いですよね。
そうなんですけど、私忘れちゃうんですよ(笑)。だから向き合いに行くのが難しくて戻れないんです。きっと、あの時のことを忘れたいと思っていたんでしょうね。
――アーティストの方は過去の自分と今の自分を照らし合わせて曲を書く人も多いですからね。
多いですね。なので向き合ったわけなんですけど、全然詳細が思い出せないという。それをまきさんが上手くまとめてくれまして。歌詞にもあるように<不器用に羽をばたつかせて>というのは、今も本当にそうで。このフレーズがすごく気に入っていて、まきさんには本当に感謝しています。
――作曲は矢野さんですが、メロディには大城さんは全く関わっていないんですか?
この曲はまきさんが全部作ってくれて完成してました。自分のメロディも試しに入れてみたんですけど、やっぱりプロの方が作ったメロディには敵わなくて、そのまま歌わせていただきました。
――自分じゃない誰かが書いた曲を歌うのは新鮮だったんじゃないですか。
新鮮でした。でも、私もシンガーソングライターとしてのプライドがあるじゃないですか? 最初は反骨精神みたいなのもあったんですけど、まきさんとモトキさんが本当にいい人で好きになってしまったので、それはどこかにいっちゃいました(笑)。この曲を大切に歌いたいという気持ちに変わりました。
――レコーディングはいかがでした?
私、歌のテクニックがないんですよね。なので、レコーディングの2日前にまきさんと練習してから本番に臨みました。ギリギリだったんですけど、やれるだけのことはやりました。
――そうだったんですね。サビのハモりのバランスも、メインに寄り添うような感じで心地よいんですよね。入ってるか入ってないかぐらいの絶妙なバランスで。
そこはモトキさんとまきさんが凄くこだわって、シビアに調整していた記憶があります。
――この曲はMVも撮影されていますけど、ロケ地は沖縄ですね。
私の地元です。地元PRビデオと言ってもいいくらいの(笑)。自分の住んでいるところですけど、改めて綺麗なところだなと思いました。
――このMVで見どころを挙げるとしたらどこになります?
自宅でのシーンです! あそこで音楽とか色々やっているんです。一発目は絶対自分と関係性があるところで撮りたいと思っていたので。
――あれは大城さんの部屋だったんですね。てっきりそういう場所を借りたのかと思ってました。最後の方で浜辺で蝶を砂浜に描いてましたが、あれは大城さんが?
私と監督さんとで一緒に描きました。結構大きかったので計算して描かないとダメなので大変なんですよね。
――さて、続いては「一帆風順」なんですけど、四字熟語にハマって、付けられたタイトルなんですよね。
そうなんです。今はもうハマってないんですけどね。ちょうどハマっている時にこの曲のトラックをもらって、すぐにこのタイトルがつきました。
――順風満帆はよく聞きますけど、「一帆風順」はあまり聞き馴染みないのですが、造語ですか。
中国に本当に存在する言葉で、あちらでは金魚にも彫るくらいみたいです。
――金魚に四字熟語が彫ってあるって凄いですね。他にも好きな四字熟語は?
この「一帆風順」だけです。
――四字熟語にハマっていたのに?
この言葉に魅力を感じてしまって。なので、もう四字熟語のタイトルは出てこないと思いますよ(笑)。またハマったらわかりませんけど。
――この曲はトラックが先に来ていたということですが、メロディはそのトラックに合わせて付けていく感じ?
そうです。実はこの曲、メロディもある状態で頂いたんですけど、作家さんにお願いして自分で付けさせてもらいました。自分のメロディを乗せたくなってしまって、作曲家さんが優しい方だったので、OKと言ってもらえて。もう本当に感謝しかないですね。
――それもあってお気に入りの1曲ですね。
うーん、今思えばちょっと構成がもっといい感じに出来たかも知れないですけど、それは次に活かします(笑)。
――完璧はなかなかありませんからね。伸びしろということで(笑)。
伸びしろ(笑)。