主演に俳優の野村周平、ヒロインに女優の柳ゆり菜を迎えた映画『純平、考え直せ』が9月22日に全国公開となる。近年若手俳優の中でも、高い人気を集めている野村と、近年女優への志向を強め、どの出演作にも体当たりで挑み、話題を呼んでいる柳。この2人が今回挑んだのは、日本一の歓楽街・歌舞伎町で、傷つくことを恐れず運命に飛び込む若者、その姿に深く共鳴する人々の姿を描いた青春ドラマ。今回は2人に、オファーを受けた経緯から撮影などを振り返ると共に、作品のテーマから感じた自身の印象などをたずねた。【取材=桂 伸也/撮影=冨田 味我】
野村周平と柳ゆり菜が体当たりの熱演
映画『純平、考え直せ』は、『イン・ザ・プール』『サウスバウンド』などの人気小説を手がけた直木賞作家・奥田英朗氏の小説が原作。新宿・歌舞伎町を舞台に、鉄砲玉になることを命じられた一人の若いチンピラと、彼に偶然出会った女性との、運命の3日間を描く。『女の子ものがたり』などを手がけた森岡利行監督がメガホンをとり、ヤクザの世界に憧れ、仁義を重んじる不器用な主人公・坂本純平役を野村、純平に惹かれる女性・山本加奈役を柳が演じる。また本作の主題歌には、the pillowsの「眩しい闇のメロディー」が起用されている。
野村は、2010年俳優デビュー、以後様々な映画、テレビドラマに引っ張りだことなり、近年では映画『ちはやふる』『帝一の國』などでさらに多くの注目を集めている。一方、柳は、2013年のオーディションで特別賞を受賞、以後グラビアアイドルとして活躍しながら、2014年に映画『うわこい』で映画初出演、初主演を果たす一方で、同年のNHK連続テレビ小説『マッサン』で、モデル役を担当した際に半裸姿を披露したことで話題を呼ぶなど、女優としても様々な注目を集めている。
本作では、歌舞伎町に巣食うヤクザ集団や様々な人間模様の中で、2人は濃厚なラブシーンやハードなアクション、バイオレンスシーンに、臆せず果敢に挑戦。特に柳は、バイオレンスシーンで自ら地毛をハサミで切ることを提案するなど、相当の覚悟をもって現場に挑んだとされている。また本作は、カナダでおこなわれる第42回モントリオール世界映画祭の「World Greats」部門に正式出品された。
「ちょっと怖い」「でも行ってみたい」街、歌舞伎町で描かれる物語
――今回は東京の歌舞伎町のお話ですが、どちらかというとこの街は、よそから訪れてくる人のほうが多いような感じですよね。
野村周平 東京自体がそうじゃないですか? あまり“東京人”という人にも会ったことがないし。“江戸っ子”という方もおられるかもしれないですけど…。
――お二人ともご出身が関西方面ですが、その点から見ると、また見え方も変わってくる感じもあるのでしょうかね…。
野村周平 いや、というか東京は別次元、例えば僕は兵庫県出身ですけど、僕らのライバルは京都か大阪、みたいな感じだったので(笑)。
柳ゆり菜 そう、みんな近場でやり合っている感じが(笑)。
野村周平 東京はみんな行ってみたいと憧れるところではありますね。向こうからはちょっと遠いけど。
柳ゆり菜 みんな憧れますよね。
――実際に歌舞伎町に初めて来られたときの印象は、どんな感じでしたか?
野村周平 自分にとってはあまり行かない場所で、夜飲むといっても「新宿歌舞伎町に集合な」みたいな連絡はあまりないですね。ちょっと怖い場所という印象があります。
柳ゆり菜 ギラついているな、という感じです、街も、歩く人も。なんかすごく色んなものが渦巻いている場所という感じで、触れるには勇気がいる場所という印象があります。
野村周平 『闇金ウシジマくん』とか見ていると、そういう感じがするよね(笑)。
――若者がいないわけではないけど、例えば渋谷とかに比べると全然…。
柳ゆり菜 その場にいる人の種類が、全然違う感じがしますよね。
野村周平 また、ちょっと年齢層が高い気がしますよね、サラリーマンとか。渋谷はちょっと若い感じ。対して新宿は“飲み屋!”という感じ、というか。
――今回はその歌舞伎町で、ある意味では任侠映画的な印象の作品ですが、東京2020大会も近く、多くの外国人観光客が訪れようとしているこのご時勢に、インパクト大な感じもありますが(笑)、反面でストーリーにはバイオレンスな描写の中で、どうしても目を向けずにいられなくなるような雰囲気を、作品を拝見したときに感じました。この話を受けられた際に、お二人はこのストーリーで何かそんな訴求する要素があると感じたことがありましたか?
柳ゆり菜 そうですね…私の役は、すごく人生に退屈している女の子・加奈で、その加奈が純平に会ってどんどん変わっていくという役なんですが、いまどきの子には、加奈自体に共感する部分が多いのではと思います。というか、加奈っぽい子って沢山いると思うんです。
――加奈っぽい子?
柳ゆり菜 無気力というか、特に目的や夢とかを抱かなくても生きていける世界で、なんとなく生きている子たち。そんな子が、その瞬間瞬間を刹那的に生きる、ということを目の当たりにできるというか。そんな熱いメッセージがある映画だと。そんな映画は、最初は“ウザイ”と思われるかもしれないけど、そのウザさの中にすごく心に残るものがある、熱血教師みたいに(笑)。そんな訴え方ができる映画なんじゃないか、と思いました。
――野村さんはいかがでしょうか? 今回「鉄砲玉」という、ほとんどの人が想像も及ばないような役柄ですが、その中でも共感できるような部分は沢山あったように思います。
野村周平 どうでしょう…例えば今回、劇中ではSNSの中で表現される世界もあって、純平という男の印象をSNSであんなに拡散されて“そんな風になるよ”っていうような、世の中になっていると思うけど、それに対して、この時代に一人、合わない熱血な人がいるというお話なので(笑)。
でも逆に、そういう人がいても面白いなと思うし。最近こんなに熱く、何かに一直線になっている人とか、あまりいないと思うんです。だからそんなところを伝えられたらというか、男として。この作品では、チンピラの話で鉄砲玉になるけど、他のものでも、例えばプロのレーサーになってもいいわけで、そういうことが伝えられたらいいな、と思っています。
――なかなかヤクザという存在は受け入れられない一方で、それでもこの純平というキャラクターには何か、共感できるところというところがある気がしますね。
野村周平 まさしくそういうところだと思います。尊敬する男のために死にに行く、というか…最後は裏切られるけど、自分がそういう憧れの男になるという意味で、“ハジき”に行くわけですから。そういう“なりたいものになる”という志(こころざし)が、俺もそうですけど純平を見習ったほうがいいのでは、と思います。