歌うことが運命なら必ず導かれる、森山愛子 葛藤もあった15年
INTERVIEW

歌うことが運命なら必ず導かれる、森山愛子 葛藤もあった15年


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年08月11日

読了時間:約12分

自分で演出、演技をするから演歌

──髪も切られましたが、何か決心みたいなものもあったのですか。

 何か変わりたいな、と思ったのは事実ですね。新しい自分で、「会津追分」にぶつかっていきたい。歌手として“新生・森山愛子”でいくために、髪をバッサリ切ってみました。とても悩みましたが、自分は変わるんだと思ういう表現が一番わかりやすいのかなと思いました。事務所の方も、何かのきっかけがあればあったら切ってみたら? と言ってくれていたので、ジャケット撮影の前の日に切りました。

──ファンの方も驚いたと思うのですが、みなさんの声とか気になりますか?

 多少は気になりますね。時代的にネットで沢山見れてしまいますし…。いい言葉も悪い言葉ももちろん両方ありますよね。今は結束力の高いファンの方が多くて、お互いがとても仲良くしてくれているのを見ていると嬉しくなります。

──2005年から2012年にかけてTBS系『王様のブランチ』にも出演されていましたが、リポーターをやってみて周りの変化はありましたか。

 ありました。ショッピングセンターや下町のレコード店などで歌っていると、割と若い方でも「ブランチに出てた人だ!」と言って足を止めてくれたり、声かけてくれたり。

──ところで、歌っているときと喋っているときで声色がすごく変わりますよね。歌うときはどのような響かせ方しているのですか。

 うーん、自分でもわからないんですよね。発声方法が違うのかな? 「どうしてそうなるの?」と聞かれることもありますが、自分でもわからないんですよね。私も「何でだと思いますか?」と聞きたいです(笑)。

──演歌にはポップスとはまた違う、“こぶし”など独特な表現方法もあり本当に歌の上手さが問われますよね。

 こぶしは難しいですよね。私もずっと出来なかったんです。小学4年とか5年の時にテレビでちびっ子歌大会みたいなのを見ていて、同い年くらいの子が何でこんなにこぶしが出来て私には出来ないんだろうって。やり方がわからない中、自分なりに色々試していたら、出来るようになっていました。

──見様見真似だったのですね。

 なかなか教わって出来るものではないですからね。誰にでも出来るわけではないし、感性なんだと思います。

──森山さんはどのようなイメージでこぶしを回しているのですか。

 それが自然に回しているので自分でもわからないんです(笑)。やっぱり感性なのでしょうね。演歌をやってる方でもこぶしまわせない方もいますし。演歌=こぶしが絶対というわけではないと思います。私が決めることではないんですけど(笑)。

──では森山さんが歌うにあたって一番大切にしていることは何ですか。

 歌詞の世界観や、言葉をきれいに届けることです。

──デビュー当時の19歳ですと、経験したことがないこともあると思いますし、演歌の歌詞の世界感は難しくなかったですか。

 意外とわからないということはそんなになかったです。知らないことは自分で調べたり作詞家の先生に聞いてみたり。言葉というより、この曲の世界観はどういう意味なのかなと思っていて、レコーディングの時に作詞家の先生が教えてくれたりだとか。私の師匠は水森先生なのですが、「自分で演出、演技をするから演歌なんだよ」と教えてもらいました。だから、自分なりの解釈で歌うというのを意識しています。切ない歌詞だけど、笑って優しく歌おうとか、それは歌手それぞれの演出の仕方があると思います。

──同じ曲を歌っても、人それぞれ違うのが面白いところなのですね。

 そうですね。だからこそ演歌は歌っていて面白いです。自分の経験したことのない、例えば女性が男性の歌を歌うとか、それは演出、演技しているから人に伝わるんだと思います。

──今年の2月23日から3月29日にかけておこなわれた、明治座での『五木ひろし特別公演 特別出演坂本冬美』では、五木ひろしさんの妹役で出演されていましたが、お芝居も歌と近い感覚はありますか。

 そうですね。もちろん演出家の先生からの指示もありますが、例えば台詞がなくても、表情やちょっとした仕草など、自分で考えてやるというのは共通点があるかもしれません。

──全46公演と長い公演でしたが、回数を重ねる度に変化などはありましたか。

 舞台を重ねる度に解釈が変わっていったりだとか、自分自身が成長していく感覚はありました。自分のお芝居を客観的に見ることは出来ないけれど、私はそう思っています。

──歌も同じように成長していくのでしょうか。

 19歳の時と今の33歳でデビュー曲「おんな節」を歌った時とでは全く違います。何年もずっと同じ曲を歌う中で、その時に思う自分の表現で楽しんでいきたいですね。

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