歌手の森山愛子が8月24日、東京・草月ホールで単独公演『十五周年記念コンサート“夢街道まっしぐら”』をおこなった。デビュー15周年と昨年リリースされたシングル「会津追分」のヒットを記念しておこなうというもの。ゲストに篠笛奏者・佐藤和哉、東京都立白鴎高等学校・附属中学校長唄三味線部を招き、「会津追分」、ちあきなおみのカバーで「冬隣」などアンコール含め全22曲を熱唱。圧巻の歌唱力とバラエティに富んだ楽曲で観客を楽しませた。そのコンサートの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

ズシッと響くように思い切って歌わせていただきます

森山愛子【撮影=渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)】

 ステージには楽器の他にもひまわりの花が鮮やかに飾られ夏を感じさせる。開演を告げるアナウンスが流れるたびに、これから始まるコンサートへの期待感が高まる。そして、開演時刻になり司会の生島ヒロシによるナレーションから、デビュー曲「おんな節」でコンサートの幕は開けた。歓声と拍手に迎えられ、満面の笑顔で登場した森山は、事務所の先輩である坂本冬美から譲り受けたという真っ赤なドレスに身を包み、伸びやかな歌声を会場中に響かせ、観客を魅了していく。「オープニングから胸がいっぱいです」と感謝を告げ、「冬美さんに包んで頂いているようでとても心強いです。皆さんの心にズシッと響くように思い切って歌わせていただきます」と宣言し「恋酒」、「しあわせ一番星」、「風樹の母」などデビュー初期の楽曲を表情豊かに歌い上げる。笑顔で観客に手を振る森山の姿も印象的だった。

 生島の“名MC”から、白鴎高等学校・附属中学校長唄三味線部を招き、「会津追分」をコラボレーション。イントロで奏でられた長唄三味線の演奏に続いて、着物に衣装を変えた森山がステージに登場。和のテイストを存分に取り入れた「会津追分」を披露。会津磐梯山を彷彿とさせるスケール感で聴かせてくれた。森山も演奏終了後に「若いエネルギーって強いんですね。みんな一生懸命練習してきてくれて、私もそれに応えられるようにと力が入りました」とその躍動感のある演奏について嬉しそうにコメント。

 ここで森山の憧れの歌手の曲をカバーするコーナーへ。1曲目は西田佐知子のカバーで「東京ブルース」、続いては藤 圭子の「京都から博多まで」、「私の大好きな曲のひとつです」と告げ、ちあきなおみの「冬隣」を情感豊かにカバー。目を潤ませながらの歌唱に司会の生島も涙。どの曲もリスペクトに溢れたパフォーマンスで魅了した。

森山愛子【撮影=渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)】

  続いては郷愁を誘う楽曲のセクションへ。TBS系『王様のブランチ』でリポーターを務めていた時代に、シンディ・ローパー(米・歌手)が森山の歌声で涙を流したという童謡の「赤とんぼ」を披露することに。ゲストの篠笛奏者・佐藤和哉が客席から笛を吹きながら登場し、森山と2人でその「赤とんぼ」を熱演。歌に寄り添うような笛の音の上で、自由に表現する森山の心震わせる歌声に観客も静かに耳を傾けていた。そのまま続けて「赤い花白い花」、「柿の木坂の家」とコラボした佐藤は「一緒に笛を吹かせて頂いていると、笛の音も艶っぽくなってくるような気がします」とその歌に惹かれたことを述べた。佐藤は中島みゆきの「糸」を篠笛で郷愁を誘う音色を紡ぎ、声とはまた趣のある演奏で観客をその世界へいざなった。

1日1日、一生懸命歌っていきたい

森山愛子【撮影=渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)】

  黄色のワンピースと黒縁メガネ、そして、そろばんを手にした森山がステージに登場すると始まったのはトニー谷の「さいざんす・マンボ」。そろばんをリズミカルに掻き鳴らす森山。マンボの軽快なリズムと森山の活き活きとした歌声に心弾む。続いて、笠置シズ子の「買い物ブギ」へ。途中ステージを降り、“観客いじり”をしながらの歌唱に会場は大盛り上がり。笑顔の耐えない楽しさが溢れる空間を作り出した。

 再び衣装を代え、コンサートでも定番の「約束」を披露。この曲で森山の存在を知ってもらえた大切な曲だと小媒体のインタビューでも話してくれた1曲だ。しっとりとした曲調も相まって、その歌声に感情を揺さぶられる。思いを馳せるかのように遠くを見つめ歌う姿が印象的だった。そして、情景を映し出すような表現力豊かな歌で魅せた「イムジン河」、「無錫旅情」と異国の地をテーマにした楽曲で様々な景色を歌声で映し出していく森山。

 岩手県民謡の「南部牛追唄」を一節アカペラで力強く歌い上げ「南部酒」、「佐渡の恋唄」と叙情的に歌い上げ、ここで恩師である作曲家の水森英夫氏がステージに招かれ、歌について語る。「リズム、メロディ、詞と決まっている制約のなかで演出、演技をするのが歌手。今日の森山愛子はすごい。こうやって力をつけてくると何をやっても当たりそうな気配がある」と話し、森山の歌手としての成長を讃えた。そして、純白のドレスに身を包んだ森山は「雨の信濃路」を披露。森山は水森氏へ「これからも付いていきます」と美しい師弟愛。本編最後に再び「会津追分」を全身全霊で歌唱し、凛とした歌声を聴かせステージを後にした。

 アンコールの声や手拍子に応え、森山がステージに。届けられたのは「愛子のソーラン節」。森山も<どっこいしょ どっこいしょ>と力強い掛け声。体全身を響かせダイナミックな歌は、聴くものに活力を与えてくれるようだ。観客も一体感のある手拍子で盛り上げた。「幸せで胸がいっぱいです」と感謝を告げ、「1日1日を大切に一生懸命歌っていきたい」と決意も新たにした。さらに「今日のこの日を一生忘れません。最後は自分もこの曲と同じように一生懸命昇っていこうと思える曲です」と紹介し届けらたのは、キム・ヨンジャのカバーで水森氏作曲の「陽は昇る」。さらなる高みを目指す決意と、ここまでの感謝を感じさせる気持ちが乗った歌唱でコンサートは大団円を迎えた。最後は笑顔で「ありがとうございました」と感謝を伝え投げキッスで幕は閉じた。

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