熱唱するerica。自信に満ち溢れているようだった(photo by HiranoTakashi)

熱唱するerica。自信に満ち溢れているようだった(photo by HiranoTakashi)

 ガールズロックバンドのDraft King(ドラフトキング)が格段に進化した――。22日、東京・渋谷WWWで全国ツアー『Draft King レコ発tour 2015 ~This is me.これが、Draft King~』のファイナル公演を行った。7月にリリースされた3枚目シングル「This is me.」を引っ提げ、8月から全国23公演を展開してきた。この日は「This is me.」や「贈る言葉」などアンコールを含め全15曲を演奏。これまでとは明らかに違うサウンドやパフォーマンスでファンを魅了した。当日の模様を以下にレポートする。  【取材・村上順一】

多彩なステージングで魅せるライブ

NOHANA(photo by HiranoTakashi)

NOHANA(photo by HiranoTakashi)

 渋谷WWWはスペイン坂にある比較的新しいライブハウスだ。客席フロアも段々畑のように階段式になっていてステージは非常に観やすい。開演前の会場は、西海岸のメロディアスなロックサウンドがBGMとして流れていた。ステージに配置されたドラムセットとベースアンプの間には5人目のメンバーである“ドラキリン”もスタンバイ済み。今か今かと開演を待ちわびるファンで埋め尽くされていた。

 開演時間を少し過ぎたところで、歪んだギターにリズムを溜めたドラムサウンドのSEが会場に鳴り響いた。そして、ドラムのSHIHO、ギターのMAO、ベースのNOHANA、ボーカルのericaの順でステージに登場。メンバーが入場する度にフロアから歓声が上がる。そして、すでに気合い十分といった表情のメンバー達。

 SEが終わりドラムのカウントから始まったオープニングナンバーは「エレクトリック」。出だしからエネルギー全開のステージを展開するDraft King。「もっともっと!」とトレードマークのショートマイクスタンド(通称ステッキ)で煽るerica。それに応えるかの様にファンも腕を振り上げバンドとエネルギーをぶつけ合う。

 NOHANAとMAOも所狭しと動き回る。ペース配分など考えていないようなパワフルなステージをオープニングから魅せる。ericaが「ここにいる皆でひとつになって行きましょうね」と、2枚目のシングルに収録されている「誓いの歌」を立て続けに演奏。Aメロのスカのリズムに合わせてステップを刻むファンも見える。BメロではNOHANAとericaがダンスを披露する場面もあった。

 短いMCを挟み、腹部に響いてくるパワフルなキックドラムの四つ打ちから「真夜中メリーゴーランド」を披露。MAOのソリッドなギターカッティングが心地良く響いてくる。更に間奏ではギターソロからベース、ドラムとソロを回して会場を盛り上げて行く。

 そして、Draft King的ディスコティックナンバーとも言える「罪と罰」、ライブ定番曲のWinkのカバー「愛がとまらない」を間髪入れずに演奏。「愛がとまらない」では、NOHANAのセクシーかつ妖艶なベースソロで魅せる。サビ前「JUST♪」の長めのブレイクもビシっと決め、メリハリのあるサウンドで高揚感を煽っていった。

アコースティックで「贈る言葉」を披露

SHIHO(photo by HiranoTakashi)

SHIHO(photo by HiranoTakashi)

 ここでMCを挟みアコースティックセットにチェンジ。ドラムのSHIHOはカホンに、ギターのMAOはアコギに楽器を持ち替えた。「ツアーではアコースティックでもライブをしてきて、ファイナルなのでアコースティックも披露したいなと思ってます」とNOHANAが語り始まったのは、2枚目のシングルで海援隊のカバーの「贈る言葉」。カホンの軽快なリズムにアコギの乾いたサウンドが音源とは違った趣を醸し、ericaもサビでタンバリンを加え彩りを添えていった。

 ここで、今日のライブがツイキャスで生配信されていることをNOHANAが話すとSHIHOは「知らなかった」と驚く。SHIHOが「事前に言って欲しいよね」と語ると、NOHANAが「twitterちゃんと見てよ。お酒ばっか飲んでるからこうなる」と、なかば漫談のようなトーク展開で会場の笑いを誘った。

朗読により世界観が一層強調されたロックバラード「満月」

MAO(photo by HiranoTakashi)

MAO(photo by HiranoTakashi)

 そのままのセットでミディアムバラードの「Bombs Away」を演奏。サビではSHIHOの歌声が印象的。ericaも緩急をつけ表情豊かにしっとりと歌い上げた。この「Bombs Away」は、ericaとSHIHOによるツインボーカルのハーモニーが心地良い。

 「Bombs Away」が終わるとここで虫の音のSEが流れ出した。それをBGMとして、ericaが語り始める。「東京の灰色、ふるさとの緑…」と朗読。その朗読に引き継がれるように叙情的なエレクトリックギターのアルペジオが会場に響く。

 ericaがバンド加入のため上京した時の気持ちを歌ったという「満月」を披露。切ない気持ちを歌声にのせ感情豊かに歌う。朗読によって「満月」の世界観がより一層強調され、このライブの中でも重要な1曲となっていた。

意外な選曲!?ラルク「HONEY」をカバー

erica(photo by HiranoTakashi)

erica(photo by HiranoTakashi)

 そして、間髪入れずにNOHANAのベースが8ビートを刻む。アッパーチューンの「I'm serious」。Draft Kingの真骨頂とも言えるロックサウンドでさっきまでの世界観を切り替えていく。

 ここでドラムとギターのセッションを挟んだ。SHIHOのパワフルかつタイトなドラムにMAOのマーシャル(ギターアンプ)から放たれるソリッドなギターが絡みつく。時折、フィードバックさせ多彩なサウンドを聴かせてくれた。そこに一旦捌けたNOHANAとericaがダンスで参加。NOHANAは、韓国留学の時に学んだというダンスをキレ味抜群に披露し、魅了した。

 続けて、L'arc~en~cielの「HONEY」をカバー。意外な選曲だったが、ericaのファルセット(裏声)がこの楽曲にハマっていた。間奏ではオーディエンスを巻き込み「上、横、前、くるるんぱ」と腕の振り付けで会場をひとつにした。

「OK、みんなまだまだ行けますか?」と終盤戦に突入し「ROCK YOU」を演奏。そして、この勢いのままライブ定番曲「Hey My Love」へ。お馴染みのギターリフが流れるとオーディエンスも更にヒートアップ。終盤に来てブースターをオンにしたかの様に

 バンドの勢いが増して行った。荒々しい演奏が逆にライブ感を際立たせる。

erica自身を歌った「This is me.」

SHIHO(photo by HiranoTakashi)

SHIHO(photo by HiranoTakashi)

 ラスト2曲前のMCでericaは「こんなにあっという間なんだ。やだよ、終わりたくないよ」と呟く。そして、erica自身のことを歌った曲「This is me.」を演奏。ツアータイトルにもなっている今回のライブでも最重要ナンバー。「このThis is me.を聴いて、あなたの支えになれたら嬉しいです」と語るerica。その想いがヘビーなバンドサウンドに後押しされメッセージが強く胸に響いてくる。「This is me.」は確実にこのツアーで育ってきた楽曲のひとつだ。

 そして、ラストは1枚目のシングル曲「アブラカタブラ」。「明日の未来のために全力で回してちょうだい!」とericaが叫ぶと、フロアが黄色いタオルで埋め尽くされた。テンションも最高潮のまま本編を終了した。

越智ゆらが応援に

MAO(photo by HiranoTakashi)

MAO(photo by HiranoTakashi)

 会場からアンコールを求めるドラキンコールが巻き起こると、ツアーグッズのTシャツに衣装をチェンジしたメンバーが戻ってきた。ここで、NOHANAからファンクラブが発足されたことと、11月から5カ月連続で主催ライブを行うことが発表された。そして、特別ゲストに「This is me.」のジャケットとMVにも出演しているモデルの“ゆらゆら”こと越智ゆらのがステージに現れメンバーに花束を渡すシーンも。

 最後にericaがここ渋谷WWWでの思い出を語った。以前オープニングアクトで立った時は記憶にないぐらい緊張して楽屋に戻って大泣きしたことや、不安や葛藤を赤裸々に語った。「あきらめずにこの道を進んできて、また、ここ渋谷WWWに立てたことにファンや回りのスタッフたちに感謝の意を伝えた。

 そして、最後は「贈る言葉」をロックサウンドで演奏し、約3カ月にも及ぶツアーの幕を閉じた。

成長が見えたツアー

妖艶に舞ったNOHANA=右=とアグレッシブに叩いたSHIHO=左=(photo by HiranoTakashi)

妖艶に舞ったNOHANA=右=とアグレッシブに叩いたSHIHO=左=(photo by HiranoTakashi)

 バンドはツアーで成長して行くものだ。しかし、ここまで進化していくバンドは数少ないだろう。それをまざまざと体感出来たライブであった。

 女性ならではの華やかなステージングと女性らしからぬパワフルな演奏と歌が同居したDraft Kingの世界観。

 11月に渋谷TAKE OFF 7から始まる5カ月連続主催ライブを経て、更に進化していくであろう彼女達の行く末が楽しみとなったライブだった。

セットリスト

01.エレクトリック
02.誓いの歌
03.真夜中メリーゴーランド
04.罪と罰
05.愛がとまらない(Winkカバー)
06.贈る言葉(海援隊カバー アコースティックver)
07.Bombs Away
08.満月
09.I'm serious
10.HONEY(L'arc~en~cielカバー)
11.ROCK YOU
12.Hey My Love
13.This is me.
14.アブラカタブラ
EN1.贈る言葉(海援隊カバー)

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