自分と他人の違いを認め合う、Anly 楽曲に込める平和への願い
INTERVIEW

自分と他人の違いを認め合う、Anly 楽曲に込める平和への願い


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年08月01日

読了時間:約13分

エネミーちゃんはみんなの心にいる

Anly

──「DREAM ON」は、非常に空間的で生々しい雰囲気だと思いました。

 アリーザの部屋で録った、一発レコーディングです。ベースもピアノも全部、アリーザが自分で弾いてくれています。録り直しもなくその場で弾いたものがそのまま収録されていて、そういうライブ感を活かしたかったので、私の声もデモの音源をそのまま使っています。

──ドラムの音が、リズムマシーンみたいで面白いですよね。

 あれは、キャンバスとか机を叩いた音をサンプリングして、組み合わせて使っているんです。アリーザの部屋に行ったらキャンバスが転がっていて、「絵を描いてるの?」と聞いたら、「これを叩いて音を出しているんだよ」って。私も「そうだったんだ〜」って、すごく驚きました。その場で叩いた音をサンプリングして組み合わせるという部分では、私がライブでループペダルを使って演奏しているのと通じる部分があるし、意外な共通点が発見できて面白いな~って思いました。

──「DREAM ON」の歌詞は、夢を語り合っているような雰囲気ですね。

 若いふたりが、今は想い描いていた生活じゃないかもしれないけど、一緒に夢を見ているだけで幸せだし、未来にその夢が待っているとしたら頑張れるよねと歌っています。「DREAM ON」には「夢見ていればいいんじゃない?」みたいな嫌味っぽい意味もあるんですけど、そんなことを言われても関係ない、ふたりで夢を観られればそれでいいんだという、強い気持ちも込めています。歌詞にはコインランドリーとか出てきて、日常的なものを盛り込んでいるんですけど、トラックはすごく尖っている、そのギャップがすごくいいと思います。

──「DREAM ON」の構成は、「COFFEE」にしても「ENEMY」にしても、メロディが少なくて。それはAnlyさんが作ったときから、そういうものだったんですか?

 そうです。例えば「ENEMY」は、「ENEMYしか言いたいことがない」と思って、それで「ENEMYはいつでも心の中にいるんだ」と、自分の中でループさせていれば、日々を頑張れるんじゃないかと思って同じフレーズを繰り返すような形にしました。ライブでも同じことを繰り返す構成のほうが、初めて聴いてもすぐ歌ってもらえるんです。シンプルだと、言葉がより入ってくるし。

──SNSで観たんですけど、ファンの間では“エネミーちゃん”という言葉が使われていて。これは「ENEMY」のことですよね。

 エネミーって、エイミーとかエミリーみたいで、女の子の名前っぽいと思ったんです。それでライブのMCで、「みんなも自分の中にいるエネミーちゃんに負けないで」って話していたら、みんなが自分の心の中にいる敵のことを“エネミーちゃん”と呼ぶようになりました。つまり“エネミーちゃん”は、みんなの心の中にいる弱い心の象徴です。「今日はダルいから会社に行くのを止めようとか」、そう思ってしまう弱い自分の心=エネミーちゃんに、みんなも負けずに頑張ろうとメッセージを込めています。

──「COFFEE」は、Anlyさんのライブにはサラリーマンの方も多く来るので彼らにとっても身近な存在ということで?

 そうですね。実際にスーツ姿の方や、会社でパソコンのキーボードを叩いている方がたくさんいて。そういう人たちに向けて、「今日もお疲れ様でした。来てくれてありがとう」と言いたくて作りました。だからライブでは、最初に歌うことが多いです。テレビのCMでも、サラリーマンの人がコーヒーを飲んでるイメージがあるし、私自身もレコーディングが夜深くなると、眠気覚ましにコーヒーを飲むことがあって。コーヒーは、働く人の必需品みたいなイメージです。コーヒーの苦みが、人間関係や人生の苦みとも言い換えられると思ったし。要は、働く人への応援歌ですね。よく聴くと、パソコンのキーボードを打つカタカタ鳴っている音が入っていたり、私が実際にコーヒーを飲んで「あ〜」って一息ついている音も入っています。

 ライブではサラリーマンに限らず、学生の方とかでも「好き」と言ってくれる人が多くて。学生さんは、受験勉強の時にコーヒーを飲む経験をしているからなんだと思います。大阪では、特に「COFFEE」と「ENEMY」が人気ですね。そうやってまだ音源化される前から、この曲は好きだと言ってもらえるのはうれしいです。ライブの現場で、しっかり聴いて楽しんでくれているんだなって伝わります。

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