日本でやれば破綻してた、Yasei Collective ライブ感捨てた新作
INTERVIEW

日本でやれば破綻してた、Yasei Collective ライブ感捨てた新作


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年07月15日

読了時間:約11分

日本でやったら破綻していた

別所和洋(撮影=冨田味我)

——斎藤さんはいかがでしょう。

斎藤拓郎 僕が一番よく聴くのは「Trad」と「Silver」です。「Trad」は結構古い曲で、3年前くらいにデモを作ったと思います。それをいい感じに仕上げられたのは個人的にはとても嬉しいですね。「Silver」は自分の趣味全開というか、2ビートにディストーションギターも入れて。そういうの昔はをやりたいと思っていたんですよ。メロコアが大好きだったので。

松下マサナオ 大きなインフルエンス(影響)ですよね。僕らの背景として世代的にメロコアは強くありますから。拓郎がディストーションギターで俺が2ビート叩くとかって僕らの周りのミュージシャンからしたら違和感があると思うんですけど、地元の友達とかから「やっとやりたい事できたじゃん」という感じで納得してもらえると思うんです。2ビートをちゃんと録音したのは初めてでした。

——今挙がった1曲目「Trad」は5/8拍子ですよね。これが古い曲で最後にできた曲が「Splash」。となってくると段々と曲作りの方向性が変わってきた?

斎藤拓郎 変拍子の中でどういう風にキャッチーにしようかなと考えて作っていましたけど、最近は興味が変わってきているかもしれません。

中西道彦 「Trad」についてはマスマティック(数学的)になりすぎていない所もよさだと思います。松下マサナオ リズムで変拍子を押し通しすぎるとプログレになっちゃいますからね。色々なところで話していますけど、僕らは全然プログレを聴かないので知らないんですよ。好きなバンドがプログレの影響があったりするので、その影響はありますけど。結果変拍子だと思って演奏していないというか、インドの人がやっている様な事を真似てやっています。

別所和洋 「Splash」は曲として、すごい開いた感じがあったんです。タイトルの
『stateSment』は「提示」という意味もあり「ここからYasei Collectiveはこういう事をやりたいんだ」という事を表しています。そういう意味で「Splash」には今までやってきた事とは違う新しく開いた感じを持ちました。ダビングでシンセも入れてるし、そういう部分も新鮮でしたね。

——アメリカでのレコーディングについて今振り返るといかがですか。

中西道彦 例えば日本で割と予算と時間があって、このプロセスでやると破綻すると思うんです。なぜかというと、いくらでも詰められるから。日本でこれをやったら完成しないんじゃないかと。どこで終わりにしていいかわからないので。ちゃんとリミットがあったので、その中でどうやるのかが今回のテーマでもありましたし。もちろんアメリカに持っていくまでにかなりの時間をかけていますけど。

松下マサナオ 日本での準備期間に比べたら、録りが“あっさり”だったからもう終わっちゃうんだな感があったよね。

中西道彦 あと僕らはアナログなので、デモのトラックに入った音をレコーディングしたものと置き換えていく、という作業ではなく覚えて演奏しています。覚えられなかった場合は書い
てます(笑)。そういう意味では効率が悪いかもしれませんけど、僕らは効率を求めていないんですよ。変拍子のクリックを作って、それに当てはめていくとかヤセイにとっては非音楽的。あとは今後の期待としては、録音だけじゃなくて制作からアメリカでやれたら最高ですね。

——改めて思った日米の違いなどありましたか。

斎藤拓郎(撮影=冨田味我)

中西道彦 「電圧が違うからアメリカではよく録れるんだ」という意見があるんですけど、大ウソだと思います。今回ふと気が付いたんですけど、マイクを向ける対象物が全然違うんですよ。日本人は大概物を狙うんです。今回のマット含め、あっちのエンジニアは多分空気を録るという感覚なのかなと。アンプやドラムの振動を録るという。だからそこが違うから音が違うのかなと感じました。

斎藤拓郎 僕は初めてアメリカ行ったので、単純に全部でかいなと思いました(笑)。ニューヨークに関してはあそこで絶対運転したくないですね。車はかろうじて信号を守ってますけど、歩行者は守りませんから。

別所和洋 今回のスタジオは完全に密閉されていなかったので音が結構もれてるんですよ。奥の部屋で日本から同行したエンジニアの葛西さんがミックスしていたんですけど、作業してる音がたまに聴こえてきて、静かな曲の録音中は作業を休んでもらう事もありました。でもレコーディング時に雑音が入ってしまうとかはあまり気にしてませんでしたね。大ざっぱにやるところと綿密にやるところの価値が日本と違うなと。たまたまこのスタジオがそうなのかもだけど。

中西道彦 細かいところは日本の100倍細かいですよ。ギターアンプの2つの位相(波形)を合わせるのにブースを10回くらい行ったり来たりして。マイクを1センチずつずらして調整するんです。でも「ジー」ってアンプノイズとかはそこまで気にしないっていう(笑)。

松下マサナオ 音楽に対する考え方がだいぶ違うので、普通の家のリビングにドラムがあって、日中練習してたって近所の人は多分何にも言わない環境。寝る時間はさすがに言われるかもしれませんけど、ピアノとかサックスと同じようにドラムって楽器がある感じ、いいなと。

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