ジャンルレスに展開する4人組バンドのYasei Collective(ヤセイコレクティブ)が2月13日に、東京・恵比寿LIQUIDROOMでSPECIAL OTHERS(通称スペアザ)との2マンライブ『Yasei Collective presents “HUNTING HOUR” vol.1』をおこなった。親交が深いインストバンドSPECIAL OTHERSとの対バンで、アンコールでのジャムコーナーでは即興セッションもおこない、お互いを高め合うような演奏で魅了した。Yasei Collectiveは夏にニューアルバムをリリースすることも発表した。気鋭の2組によって紡いだライブのもようを以下にレポートする【取材=村上順一】

SPECIAL OTHERS

SPECIAL OTHERS(撮影=Kana Tarumi)

 まずはSPECIAL OTHERSがステージに登場。インプロビゼーションで音を確かめ合うようにスタート。空間に音で絵を描くように「I’LL BE BACK」に突入。宮原 "TOYIN" 良太(Dr)と又吉 "SEGUN" 優也(Ba)によるリズム隊の上を、柳下 "DAYO" 武史(Gt)の極上のクリーンサウンドがその上を泳ぐようにメロディを紡ぎ、芹澤 "REMI" 優真(Key)の温かみのあるエレピが包み込んでいく。熱さと優しさが同居したサウンドは、いつまでも浸っていたいと思えるような空間を作り出していた。

 「barrel」ではスペアザによる独特なグルーヴ感で展開。中毒性のあるリフが心地よくループ。変拍子だがスっと入ってくるナンバーにオーディエンスも体を揺らしながら、音を浴びるように楽しんでいた。続いての「Stay」では軽快なリズムとカウンターで入ってくる宮原の歌声を堪能。情景を映し出すような、優しくそっと側で寄り添うような演奏でほっこりとするような空間を作り上げ、

 続いての、「Have a Nice Day」では時を刻むかのようなポリリズム的なトリッキーなセクションが緊張感を与え、インストという言葉がないジャンルならではの自由さで各々の心に響かせていく。MCでは宮原と芹澤のユーモア溢れるやり取りからYasei Collectiveとの関係性を語った。芹澤は過去に別所和洋(Keys)に鍵盤を習っていたことを明かした。しかし、お互いにダメ出しをするような、ちょっと変わった師弟関係だと話す芹澤に宮原の容赦ないツッコミにフロアから笑いが起こる。

 ラストはインディーズ時代からのナンバーでファンキーな「BEN」を届ける。グルーヴィーでアクティブ、そして、スリリングな演奏で高揚感を煽り、約1時間、確かな演奏力に裏打ちされたバンドの持つ自由さを存分に発揮し、次のYasei Collectiveへとバトンを渡した。

Yasei Collective

Yasei Collective(撮影=Kana Tarumi)

 そして、今日の主催者であるYasei Collectiveがステージに登場。オーディエンスの拍手に迎えられ定位置に。イントロダクションから松下マサナオ(Ds)のカウントでオープニングナンバーは「Chat-Low」。タイトなバスドラと中西道彦(Ba、Synth)のベースのシンクロが心地よく、そこに乗る斎藤拓郎(Gt、Voc、Synth)のボコーダーを使用した声、別所和洋(Keys)の楽曲に彩りを添えるエレピによって独特な世界観へいざなう。

 続いての「Tonight」はトリッキーなリズムに拍という概念を忘れさせてくれるスリリングなナンバー。サビは4つ打ちでで安心感を与え、再びスリップビートへ戻るエキサイティングさでどっぷりとYasei Collectiveを堪能。

 「Bong Bong Chin Chin」では、ノスタルジックな気持ちを呼び起こす、8ビットサウンドで曲を展開。中西もシンセを使用し、別所と絶妙なアンサンブルを響かせ、そのファミコン的なポップなサウンドのなかを、松下が鬼神のごとくドラムを叩きまくる、良い意味での違和感が秀逸。この後のMCで「普通に8ビートが叩きたいんです(笑)」とユーモア交えた発言で笑いを誘う。

 そして、昨年リリースされたアルバム『FINE PRODUCTS』からスペアザの影響が大きいと公言する「Quinty」を披露。Yasei Collective流ジャムサウンドで楽しませ、ここで「本物が聞きたくないですか?」と意味深な言葉を投げかける。スペアザのギター柳下を呼び込み、5周年アルバム『so far so good』で共に録音した「Arowari」を演奏。柳下を入れたこのメンバーでは録音後初めてのお披露目となり、この日ならではのスペシャルナンバーにオーディエンスも音の波に体を揺らし酔いしれる。

 ここからライブはラストスパートへ。難解な楽曲だと話しタイトル未定の新曲をいち早く届ける。バックのサウンドは複雑に絡み合うなか、キャッチーなメロディーが印象的に耳に飛び込んでくる。そしてもう一曲、新曲(タイトル未定)をプレゼント。流れるようなソウルフルな曲調、エンディングに向け音が昇華していくような感覚を与え、「また会いましょう」と本編ラストは「HELLO」。ドライブ感溢れるアップチューンでオーディエンスの身も心も躍動させ、ステージを後にした。

 アンコールに応え、再びステージにメンバーが登場。スペアザから芹澤と柳下を招き、リハ無しのジャムセッションをおこなうことに。芹沢のエレピのフレーズをきっかけにナチュラルにセッションを開始。最初はお互いを確かめ合うように音と音の隙間を縫いながら進行。徐々に会話が弾むように演奏に熱が入っていき、ケミストリーが生まれた瞬間だった。

 MCでは夏にニューアルバムのリリースを発表。しかもニューヨークでレコーディングするという。松下は「僕らにとっても次のステップに行く大事な年になりそうです。2019年がバンド結成10周年なので、この1年をまず大事にしていきたい」と意気込みを話し、ニューアルバムに収録予定の新曲「David(仮)」を届ける。幻想的なイントロから、壮大なスケール感を放つエモーショナルな新曲は、この日の最後を飾るのにふさわしいナンバーで『Yasei Collective presents “HUNTING HOUR” vol.1』の幕は閉じた。

この記事の写真

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)