今作の出来としては「いいところに行けたんじゃないかと」
――また、今回興味深かったのが、稲葉さんが劇中で歌われた歌を、原監督が自ら作詞をなさっているというところでした。今回書いてみようと思われた意図は、どのようなことからだったのでしょうか?
撮影に向けての準備の中で、まあ淳之介のことを書いていたのが自分だし、自分の何かいろんなことを投影していたりもしたし、自分が書くのが一番いいかと思い、書かせていただきました。台本の、セリフやト書きと同じです。
――そうでしたか。でもそれで書けてしまうというのもスゴイですね…。
いやいや…作曲の山本さんと、それこそ稲葉さんがメロディを作ったり、楽しかったです。
――稲葉さんが歌われる部分に関しては、何らかのご指導をされたのでしょうか?
何も。いやもう何か、詞があって曲が出来て、それを稲葉さんに持ち帰ってもらって…という感じでした。
――あとはほとんどお任せで?
そうですね。一緒に新宿のカラオケに行って、弾いてもらってみたいなこともありました(笑)。でも現場に入るまで何がOKなのか、というのはよく分からないので、“あ、いいんじゃないんですかね”みたいなこととか、何か思ったことを話して、という。で、その準備で話していることと、現場で全然違うことを言ったかも分からないようなありさまでしたけど(笑)。稲葉さんは歌詞の言葉の意味を捉えて歌われていたので、淳之介の歌にしたのは稲葉さんだと思っています。
――ではほとんど結果オーライ的な(笑)
いやもう本当に。ちょっとギターがうまく行かなかったときは、“もう一回やっときます?”みたいなことは現場ではあったけど、まあ今ので大丈夫ですかね? と、稲葉さんに聞いて判断することが多かったです。僕は見ていて、気になったところがあったら相談する、くらいなもので。基本、自分はOKだから、あとは今のどうでしょうかね? とたずねて、大丈夫そうだったら、悔いがなければOKにしましょう、という感じでした(笑)
――そういうところも含め、全体的に始まるまでは先も見えなかったけど、出来たら“ああ、いいものが出来たな”という感じで…。
本当にそう思います。僕はこの作品が本当に好きです。例えば障害に対して構える必要がないこととか、障害を持っているからといってお膳立てをされたハッピーエンドみたいなところに行きたくないという思いもあったし。かといって何か物語がないと、映画で見る価値がない、映画で見る理由がなくなっちゃう。そんな様々に思うところがある中では、いいところに行けたんじゃないかと思います。
――それは大きく実りのあるものでしたね。次はどんなものを作ってみたいというところは?
そうですね…初めて映画を撮らせて頂いてから、2本目まではオリジナルで書いていたんですけど、まだオリジナルも考えて書いていたりするので、これがやりたい! みたいなものは、いっぱいあるといえばあります。
一回やってみたいのは、すごい普通というか鉄板の王道のお話を、ドヘタクソで一生懸命な不器用で真面目な人を大真面目に撮る、ってことをやってみたいんですよね(笑)。それは申し訳ないんだけど、実は一番面白いんじゃないかと。それを大真面目に撮る。笑っちゃいそうな、でも笑っちゃいけない感じの微妙なものになるかもしれないですけど(笑)。
――それは結果がどうなるかが分からないところですね(笑)
そうですよね。バクチ。
――でも半分くらいはワクワクしそう(笑)
ハハハ。「東京ラブストーリー」みたいなお話を、ドヘタクソの本気を大真面目に(笑)。“ウケを狙うな!”って、こっちも本気で(笑)。
(おわり)