稲葉友が、16日スタートの島崎遥香主演ドラマ『ハレ婚。』(ABCテレビ毎週日曜よる11時55分~/テレビ神奈川毎週火曜よる11時~)に出演する。過疎化や少子化を防ぐために導入された一夫多妻制度「ハレ婚」のもとで新婚生活を送る3人の妻と1人の夫のラブコメディ。稲葉はその夫・伊達龍之介を演じる。1人目の妻・ゆずは柳ゆり菜、2人目・まどかは浅川梨奈、そして新たに加わる小春を島崎遥香が演じる。稲葉はどのように向き合ったのか。撮影の裏側と“3人の妻”の印象を聞く。【取材・撮影=木村武雄】
伊達龍之介に少年っぽさ
――過去に、どんな役でもその役を愛するという話をされていましたが、今回はどのように愛していこうと。
龍之介は、可愛くて無邪気で悪意もなく純粋さが強く、寄り添ってあげたいと思う、すごく魅力的な人物だと思います。
――映画『ずっと独身でいるつもり?』でもモテ男を演じましたが、今回もそういう面で同性から憎まれないように気を付けられたとか?
それはあまり気にしていなかったです。とにかく3人の妻と向き合うことに重きを置いていましたので。龍之介はある種、他人の目はどうでもいい人だと思うんです。自分の大事なものを大事にするためならどう見られても構わない。体裁みたいなところではない人物なので、あまり気にしていなかったと思います。
――まだ完成品を観られていないと聞いていますが、どう映っていると思いますか。
今回に関しては、どう見えるかというのは強く意識はしていないかもしれないです。龍之介にとって「こうありたい」という思いでやっていました。『ずっと独身でいるつもり?』では、こう見えるだろうなという逆算はありましたが、今回の龍之介に関してはそういう裏を取るみたいなことはしなかったように感じます。
――相手に合わせて?
相手に合わせて向き合うことと、龍之介のしたいように動くエネルギーに頼るというか。純粋が故の強引さもあるので、無茶苦茶だなと思う時もありますけど、それが通常運転のようなところもある。むしろそのエネルギーに助けられながらやっていました。
――ある種、少年っぽいところがあるような。
それはすごく強かったと思います。
――原作をそのまま投影されているような。
ビジュアルや原作ではこうだったというところは現場でみんなで話し合いながら作っていました。逆に原作の形を無理に作らなくていいかもねとか。原作の吹き出しに入っていないセリフの部分を、ふとしたやりとりに活用したり、脚本には載っていない原作の部分を「ここならできるかも」と意見を出し合いながら作っていきました。
3人の妻に仕掛けていく役回り
――過去に、現場で生まれる感情を大切にされているとも話していました。今回対峙するのが島崎さん、柳さん、浅川さんとそれぞれタイプの異なる女優さんです。いかがでしたか。
役として相手を好きになれるかが毎回重要だと思うんです。それで今回はみんなタイプが異なっていて面白かったです。それぞれ歩いてきたルートが違うからそれぞれの矜持みたいなものがあるだろうと思いましたし、強みもアプローチも全然違うから僕はみんな好きでしたね。
――相手を翻弄させるというところで、自分がどっしり構えているような感じ?
完成したものはそうなっていると思います。だけど、俳優の狙いとしては仕掛けまくらないといけないから、そこはギャップがあったかもしれないです。
――3人に仕掛けたんですか?
真ん中で受けるというよりも、主役は小春(島崎遥香)でしたので、彼女に向けてたくさん情報を投げてあげる必要がありました。小春は動じない龍之介にアワアワしてという構図で、それを演じる僕はここでこういう情報を投げないといけないなというのがたくさんあって、あの手この手という感じでした。
――共演者は同世代ですが、3人の女性を相手にするというのはどうでしたか。
女優さんが多い現場というのはこれまで少なくて、3人のバランスは気にしていました。どう接するかとか、どう自分がここにいるか、バランスを取るのは自分だろうなと思ってやっていたかもしれないです。龍之介の動きやセリフが周りに与える影響が大きいので、そこも含めて気にしていました。きっといつもの6倍ぐらい神経は使っていたと思います。
――そういう視点は、自身が演出した舞台『ともだちが来た』での経験があったからより敏感になったというのはありますか?
今回は正直余裕がなかったです。あの時の経験をという意識よりも、感覚としてやっていたかもしれないです。こうするとこういう作業があるぞというのはおこがましいですけど、狙いとしてそういう球を投げようという意識でやっていたところは結構あるかもしれないです。
――もしかしたら『ともだちが来た』を経て無意識の中で…。
そうだと思います。単純に気を遣うんだったら僕の仕事じゃないので。どうしたらいろんな作用が生まれるかとか、どうしたら人間が転がるかとか、ムカつくかみたいなところのアプローチを気にしていたと思います。
――小春に対してはムカつかせながらもときめかせる事も大事ですが、そこも意識されましたか。
そこは監督や作品の色に頼った部分はあります。ときめかせようと思ってときめかせるものじゃないから、影響を与えるというところが重きだったかなと思いました。こうするけど、こうときめいちゃうみたいな逆算はあまりしていないです。
――ということは、投げたものに対して、あとは島崎さんどう感じるか、という事になるわけですね。
そういう作用がするように撮っていただけるだろうなって。設計図は頂いているので、その中でどう動くかどう投げるかを持ち込み続けるという事が課題だったので、そういう挑戦だったような気がします。
島崎遥香、人間に嘘がない
――その投げかけたものに対して、島崎さんはどう応じていましたか。
ぱるるは人間に嘘がないんですよ。すごくフラットで、自分にはない我があるというか。僕は折れ曲がることが自分の我だったりして、どうとでもなれますという自分の持ち方。でもぱるるは圧倒的に「自分はこう思います」とか、「私はこうします」というのがはっきり自分の中で明確な線引きがあるので「うわ、おもしれえな!」って。だから何されたら嫌なんだろう、嬉しいんだろうとかを考えるのがすごく面白くて。芝居ではなく、普段の会話や、カメラの回っていない間のやり取りの中で、本当によく顔が喋る人なんです。無表情なイメージがあるんですけど、顔の表情で割とくめるタイプの方だったからいいなと思いながら対峙していました。だから作用する狙いみたいなのを考えるのがすごく面白かったです。
――分かりやすかったんですね。
自分のタイプと全然違うから、どういう事をしたらどうなるかなとかたくさん考えました。
特に2人で向き合うシーンが多かったので、逆にこうしたらやりやすいだろうなとか、こうしていいよという事を伝えると「うん」って。何か生き様みたいなものを感じていいなと思いました。
――素直なのかもしれないですね。
グループという組織を経て、どう自己が形成されていったのかもすごく興味があるんですけど、そんな事を話している時間がなかったから。そもそも手に負えるとは思わずに接していて、この方から出るエネルギーにどう自分が乗っかるかとか、引き出すかみたいな勝負をぱるるとはずっとしていました。
――エネルギーは強かったですか。
突発的に出るものの大きさはすごかったです。やっぱり大舞台やっている人なんだなっていう面白さがありました。どこを刺すとそれが出るんだろうというのも考えていましたし、とにかくぱるるは本当に面白かったです!
大人な浅川梨奈
――浅川さんはいかがですか。
大人でした。ちょっと出来すぎだよ、そんなにしなくてもいいよと思うくらい大人でした。彼女もアイドルというルートで若い時からやっているから、早くに大人にならざるを得なかったと思うんです。気の回し方とバランス感覚とサービス精神が本当に旺盛で、とても可愛らしい女の子。それだと自分が疲れない?て思うこともありましたが、それはそれで彼女の強さでもあるし、気高いなと思って見ていました。
――浅川さんの芝居での反応はどうでしたか。
まどかは難しい役で、鉄仮面みたいなところがある中でも、嫉妬みたいなものがすごく渦巻くタイプ。それをどうやるのかなと思いましたが、見事に体現されていました。僕と小春の関係性がまどかに作用する部分が多かったので浅川さんなら大丈夫だろうと思っていました。
信頼を置く同志・柳ゆり菜
――柳さんはどうでしたか。
同志という感覚に近いです。共通に仲良くさせて頂いている映画監督がいるんです。お芝居に対する姿勢や役としてのエネルギーを出し続ける脈絡うんぬんよりも、元気や活力、説明の部分を結構担っているキャラクターだったので柳さんで良かったです。クオリティーを絶対に持ってきてくれるし、現場にそういう流れや空気を持ち込んでくれるから、とても助かりました。
――柳さんは取材でも明るいんですが、現場でも明るいんですか。
明るくしてくれます。すごく腕があるというか、テクニカルでもそうですし、こうして欲しいだろうなという演出サイドからの要望を読み取る力がすごいし早い。なのに「え~」って一回言うんですよ(笑)。でもその一言が現場を明るくしますし、すごく信頼できる方でした。すごく頼りにしていました。
見つめ直す2022年
――さて、2021年を振り返っていかがですか。
いろんな作品をやらせて頂きました。プライベートで人に会うというのが本当になかった日々の中で、こんなにいろんな出会いがある仕事ないなと思いながら、いろんな人といろんな関わり方をしましたし、情報量の多い一年だったなって思います。プライベートでは、たいしたことは起きていないんですけど、そういうことの連続でしたので体感としては2年分を過ごした感じです。
――では今年は落ち着いて、どっしり構えるような?
ちゃんと自分と向き合わなきゃいけないと思っています。内面もそうですし、1月12日に29歳の誕生日を迎えますが、同世代には30歳になった人もいる。だから一個見つめ直して、どこに行くのかとか、内臓の調子はどうかとか、いろいろと向き合って見つめ直す時間にして、どう生きていくのか考えて、歩みを止めずにそれをやっていく1年にしていきたいなと思います。
(おわり)
ヘアメイク AKIHITO HAYAMI(CHUUNi)
スタイリスト SOEDA KAZUHIRO