時代の音は自分が作る、清水翔太 簡単に消費させない真白な新作
INTERVIEW

清水翔太


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年06月29日

読了時間:約10分

10年後に聴いても良い曲だと思える音作り

清水翔太(撮影=冨田味我)

――ところで「Friday」はシングルとしてリリースして、反響も多かったんじゃないですか。

 あまり気にしてないですね。今は『WHITE』に全力なので。とにかくアルバムで全部ひっくり返してやろう、という気持ちです。だから良い評価も悪い評価も、シングルに関しては気にしていません。アルバムの評価や感想は結構気にするかもしれませんけど。

――曲順へのこだわりは?

 何となくの感覚ですね。アルバムを作る時はその曲だけ毎日聴くんですよ。順番を毎日変えてみたりして、その中で1番しっくりくる順番というだけです。特に意味とかは付けないです。最後に持ってくる曲とかは考える事はあるかもしれません。

――Twitterで「WOW WAR TO NIGHT 〜時には起こせよムーヴメント〜」の動画をシェアして<この頃はもうなんか、音楽が時代を作っていた>と呟いていらっしゃいましたが、『WHITE』にもその様な気持ちが?

 「簡単に消費されない作品」というイメージは何となくありましたね。流行りだけの音はなるべく作りたくないですし、10年後に聴いても良い曲だと思える音作りは割と意識していて。そういう事を考えていない「Friday」や「踊りつづけよう」みたいな曲もありますが、全体的には「ずっと聴けるもの」という気持ちが今まで以上にあった気がしています。

――ちなみに「現代の音」と思える様な音楽はありますか。

 僕が作りたいと思ってはいます。それができるのかどうかというのは置いておいて、そういう意識を持って作らないと駄目だなと。流行りを取り入れるのではなく、「切り開く」「自分が最初に行く」というくらいの感覚。

 『WHITE』は最近の作品の中でも、R&Bやヒップホップのトレンドを少な目にしています。それより不思議な音作りとか、邦楽感も割と意識したりして。「Range Rover」も90年代Jポップの雰囲気があったりとか。それを今の歌詞やサウンドでやる、というのが僕としては新しい。

 それが流行りとかスタンダードになるかわかりませんが、僕としては新しい事をやったつもりです。そういう事でしか作れないと思うんですよ「時代の音」というのは。でも僕がツイートしていた様な事は、今の時代にはほぼ不可能なのではないですか。当時はそれしかなかった。皆が同じドラマを見て、同じシーンに感動して。だからその曲がべっとりと焼き付いた訳です。それを今やるのは難しい。

――そういう音楽を今作っていると思う様なアーティストは?

 「時代の音」かどうかはわかりませんが、一番リスペクトしているのはフランク・オーシャンですね。日本で彼の様な立ち位置、存在になりたいなと思います。このアルバムにも彼を意識した部分が少しありますよ。全体的にヒーリングミュージックの様な雰囲気があって、且つ格好良いみたいな。

 (ビートが)トラップで、暗めな雰囲気で同じ事を繰り返す、みたいな音楽は何回も作ろうかと思ったんですよ。でもちょっとそこから出たかったんです。日本で自分にしかできない事をもっと突き詰めたいなと。それこそ若いラッパーがトラップで面白い事をやっていますし、僕がそこをやっても「もう29歳だしなあ」と(笑)。もう少し大人しかできない、音楽スキルを培ってきた自分にしかできない物をやってみたつもりです。

――海外に目を向けたら、若いラッパー以外だけでなく、清水さんと同年代のアーティストもユニークな作品を生み出しています。

 海外はヒップホップの市民権がありすぎるというか、ヒップホップがナンバー1だし。日本はまだリスナーが少ないという事もあります。若い東京のお洒落な人は割と敏感ですけどね。今の自分のサウンドで、そういう今時の感覚は「踊り続けよう」で表現してみたりはしています。

 制作中もそういう音楽をあまり聴かなかったですね。今回は「流行り」という概念を遮断しているので、最新の音楽に詳しい必要はないなと。聴きたい物は聴きますけど、常に気にしているという事はなかったです。

――7月からのツアーで新曲を披露するのも楽しみですね。

 まだライブのイメージがわかないんですよね(笑)。サウンドも今回はリズムが前にでない、アンビエントなものも多いですし、どうしようかな…。

――是非、演出としてSALUさんと鉄骨を渡ってほしいなと思いましたが(笑)。

 渡らないでしょ(笑)。今までも『SLAM DUNK』から「Impossible」という曲を作りました。恋愛物なら『めぞん一刻』も好きですね。世代ではないんですけど。というのも、あの時代の恋愛観が面白いんです。待ち合わせするしかない、というところのすれ違いとか。今じゃ起こりえないすれ違い、今じゃ感じられない切なさとかを見ると刺激を受けますよね。それを今に置き換えて書いたり。

 あと『ツルモク独身寮』でKANさんの「東京ライフ」の歌詞を参考にしてるシーンがあるんですよ。それにすごい憧れていて。いつか自分の曲も何かのマンガに歌詞を使ってほしいです。最近だと、浅野いにおさんとかたまに歌詞を参考にしたりしますよね。

(おわり)

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