(後列)猪塚、栗山、丸山、山口、藤本、村井、松田、玉城、木村(前列)マキノ氏、浅野、松平、上川、溝端、高岡、堤監督

 俳優の上川隆也と溝端淳平が19日、都内でおこなわれた、日本テレビ開局65年記念舞台『魔界転生』制作発表会見に出席、舞台上演に向けた意気込みなどを語った。この日は上川のほか、共演の溝端淳平や高岡早紀、村井良大、松田凌、玉城裕規、木村達成、猪塚健太、栗山航、丸山敦史、山口馬木也、藤本隆宏、浅野ゆう子、松平健、そして堤幸彦監督と脚本家のマキノノゾミ氏らも出席した。

左からマキノ氏、浅野、松平、上川、溝端、高岡、堤監督

 本作は「魔界転生」という妖術で甦った、1637年の「島原の乱」における一揆の最高指導者・天草四郎率いる「魔界衆」と、剣豪・柳生十兵衛率いる「柳生衆」との死闘を描いた物語。1967年に『おぼろ忍法帖』として単行本化された、作家・山田風太郎氏の人気伝奇小説を舞台化したこの作品。1981年には柳生十平衛役に千葉真一、天草四郎役に沢田研二を迎え映画化、以降も数多くのジャンルにてリメイクされ、高い知名度を誇っている。

 今回はメインキャラクターである柳生十平衛役を上川、天草四郎役を溝端が演じ、10月に作品の舞台となる天草・島原の周辺地・福岡で上演を開始する。演出をドラマ『SPEC』シリーズや映画『20世紀少年』シリーズを手がけた堤監督が担当、堤氏がかつて手がけた2014年の舞台『真田十勇士』で脚本を担当したマキノ氏が、本作で再びタッグを見せる。

「ムチャクチャをしてやろうと」波乱の舞台に身構える上川隆也

 「山田風太郎の原作小説、なおかつ深作欣二監督の手による映画版、どちらのファンにも納得してもらえる作品でかつまだ誰も見たことのない芝居」というプロデューサーの要望に応えるべく脚本を執筆したというマキノ氏は「結果、スタッフが読むと激怒するような、かなり無茶なことをいっぱい書きました。ただ堤監督は、萌えてくれると思いましたけど」と書き上げた脚本の内容をほくそ笑む。

上川隆也

 一方、その難題を受けた堤監督は「見たことのないものを、どうやって見られるようにしようかと日々頭を悩ましており、ご飯を食べていてもそのことばかり考えている」と早くも産みの苦しみを味わっていることを告白しながら「今できる舞台技術の最高峰を結集しつつ、とにかくやったことのないものに挑戦しようという、かなり大胆な舞台になっているんじゃないかなと。飽きずに見られる作品になると思う」と期待をにおわせるアピール。一方で俳優陣に向かって「俳優の皆様、(これを演じるのは)大変です、本当に。体調を整え、お越しいただきたいと思っております」と公の場にてプレッシャーをかける場面も見せ、笑いを誘う。

 まだ全貌が明らかになっていない演出だが、堤監督は「俳優の皆さんが、それぞれの身体の持てる限界まで。特に男性、年齢ともに関係なくチャレンジしていただくというのが一つ。二点目には装置が縦横無尽、ほとんど止まることなく対応するものを考案中です。特許を考案しようというくらいのもので」とハードで見ごたえの現場になりそうな予感をにおわせる。さらに舞台技術では、ハイテクを駆使し、映像を武器としてプロジェクションマッピングを採用。「その概念を突き破るべく」と現在使用方法を模索しているというシステムは、かなりのインパクトを見せる模様。

 山田氏の原作小説から大好きなストーリーだったと明かす上川は「一つの時代作品として語ってしまうには、枠が小さいものになってしまうと思う」と自身の考えるこの作品の魅力を語りながら「そんなストーリーを、堤さんが“見たことがないやり方でやる”ということに興味を感じ、(出演の)意味を感じています」とコメント。マキノ氏らが「ムチャクチャな舞台」というアピールに対し「ムチャクチャをしないと、演じることができないと思います。だから、ある種覚悟して請けた仕事ですし、ムチャクチャ(な舞台)にしてやろうと思います」と強く意気込む。

沢田研二の役を引き継ぐ溝端のプレッシャー

 四郎役を演じる溝端は「四郎も(歴史上の)ヒントは少ない人物」と、その役柄の決め方に課題を見せながらも「その分、とても想像力を掻き立てられます」と積極的な役作りを目指すことを明かしながら「どうせ言われるだろうから、先に行っちゃいますけど」などと前置きをし笑いを誘いながら「沢田さんのイメージが強いと思いますが、それを尊敬しつつ真似できるところは真似をして、自分なりのものを演じたい。沢田さんの演技を意識する、というのもおこがましいですけど、プレッシャーに負けないよう頑張りたいです」と四郎役に向けた自身の強い思いを語る。

溝端淳平

 また今回出演する浅野と村井は、前回堤とマキノがタッグを組んだ『真田十勇士』にも出演、それぞれその舞台で演じた淀殿役、根津甚八役として、そのまま今回の舞台に出演する。特に淀殿は『真田十勇士』では最後に、恨みを持ちながら自害するという役柄で、今回は「魔界衆」の一人として復活する一人として登場する。

 「随分前から、堤監督作品なら何でも出させていただければと」と堤作品参加への意気込みの程を見せる浅野だが、マキノ氏より「殺陣はないけど、淀殿は一人だけ殺人シーンがある。化け物なので、人を殺すシーンがあるんだけど、それが尋常じゃない」と初めて淀殿の役柄が明かされ、浅野は驚かされる。またそこに堤監督は「それは当て書き(出演者自身の性質を尊重した上でキャラクターを設定すること)をされたのでしょうか?」などとボケを入れ、浅野はツッコミを入れつつも「やりがいがある」と出演にワクワクしている様子。

高岡早紀

 一方、記者発表に先立ち、マキノ氏と堤監督、そして溝端の3人は天草・島原の原城跡を訪問。この物語は、日本の史事の一つである「島原の乱」からストーリーが始まるが、マキノ氏は特にメディアミックス化された数々の作品の中で、この訪問の影響もあり、今作が一番この部分を手厚く描いていることを明かす。対して、原城跡は2018年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)が指定する世界文化遺産への登録が内定。その事実と今回の舞台化が重なったことに対し、マキノ氏は「“おお! 俺達、持っているぜ!”って感じでしたね」とコメント。

 堤監督はこの地に対して風光明媚ながら自然の厳しさが入り乱れかつ癒やされる場所であるという印象と共に「そんな中で歴史の悲劇があったそれを感じたときに、この作品の意義を再確認した」とイマジネーション以上にモチベーションを掻き立てられた様子を振り返る。

 また溝端も「とても殺伐とした場所なのかと思っていましたが、いざ行ってみると穏やかで、とても暖かかった。こういう空気の中で天草四郎は怨念を抱えて逝った。そういう空気を感じたのはとても大きかったと思います。帰りのバスの中では、二人(マキノと堤監督)の間でイメージがどんどん膨らんでいたのが本当に印象的で、現地に訪れてよかったと思いました」と島原訪問を振り返った。【取材・撮影=桂 伸也】

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