INTERVIEW

井上芳雄

音楽で色んなものが表現できる。
ミュージカルの醍醐味


記者:木村武雄

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掲載:18年06月05日

読了時間:約13分

音楽の役割、ブロードウェイが発展できた要因

井上芳雄

――今年のノミネート作品には、『アナと雪の女王』や『ハリー・ポッター』、『スポンジ・ボブ』など日本にも馴染みが深いものが多い。

 「確かにそうですね。アニメ、漫画、小説原作のものが多いですね。『Frozen』(日本題:アナと雪の女王)は日本でも人気がありますから、それを舞台化されてどうなっているのかというのは興味深いですし、『ハリー・ポッター』も凄くヒットしているという話を聞きますし、『スポンジ・ボブ』もアニメからですしね。原作があるもの、アニメからのものを舞台化、映画化するのは世界的な流れだと思います。それを取っ掛かりとしてミュージカルの世界に入って頂いても良いと思いますし、司会のジョシュ・グローバンは日本でも有名な素晴らしい歌手なのでそこから入って頂いても良いですし、色んな切り口があって良いと思いますね」

――井上さんはディズニー好きで有名だが、ミュージカル版になった『Frozen』はどう見ているか?

 「これからニューヨークに渡ってみるので詳しいことは分かりませんが、音楽が素晴らしかったし、大ヒットにふさわしい素晴らしいミュージカル映画、音楽だと思います。『Let It Go』の作詞作曲の夫婦、クリステン・アンダーソン=ロペスとロバート・ロペスは、ブロードウェイでは第一線の作詞・作曲家なので、その人たちが手掛けているところも注目ですね」

 「また、往々にしてあるんですけど、アニメを舞台化するときは曲が足りなくて増やすんですね。舞台版にしかない曲がまたいい曲が多いんですよね。僕はディズニー好きなので、楽しみにしているのは舞台版だけの『アナ雪』の新曲。それがどんな曲なのかちょっとずつ情報は入ってきているけど、“レリゴー”を超すものがあるのかないのか。資料を見ただけでも曲数が倍になっているので興味があるところです」

 「それと舞台装置とか、ディズニーはお金をかけて豪華に作るのでそれがどうなるのか。それと、完全な注目作ですし、映画も大ヒットしているからハードルも高くなっている状態でどういう作品になるのか。こういうのは面白くできていて成功するかは別問題なんです。ですので賞レースのドラマも見どころだと思います。リアルタイムで決まっていくという。そこのスリリングも魅力です」

――曲数が増えるということですが、ミュージカルと音楽は切っても切れない間柄ですが、音楽の役割は?

 「『音楽は全て』とまでは言えませんが、ミュージカルの強みが音楽があることだと思います。もちろん脚本が良くないとどうしようもない、それが大前提なんですが、セリフだけのお芝居、いわゆるストレートプレイと違うところは音楽があるということですし、ブロードウェイがなぜここまで一大観光地になって世界中からお客さんが来て、毎年、興行収入を更新しているのかというと、それはやっぱりミュージカルがあって、例え言葉が分からなくても、僕達も含めて外国から来た観光客が楽しめるという事ですね。ストーリーが細かく分からなくても音楽はいろんなものを表現してくれるから伝わります」

 「僕がミュージカルをやっていて思うのは、音楽は何回聴いても感動するんですよね。リピートが出来る。だからミュージカルはリピーターの方が多いんです。そういう意味でもロングランを支えている一つの要素が音楽。音楽が一番の強みだと思います。演っている方としては音楽が強すぎて頼り過ぎないようにと思うぐらい、音楽の力は凄いですよね。それほど魅力的だし、やっぱりお芝居の中に音楽を入れようというのは誰が発明したかは分からないけど、凄い発見ですよね。ミュージカルを作ったのは凄い事だったと思います」

――音楽には流行しているジャンルがありますが、ミュージカルにも音楽の流行はある?

 「正直、それは分かりません。ただ、ミュージカルは流行している今の音楽を貪欲に取り入れています。ミュージカルはどんな音楽を入れてもミュージカルになるんですよね。最初はクラシカル寄りな(ロジャース & )ハマースタインとか、クラシカルな曲が多かったと思うんですけど、基本的にはポップスだと思いますし、ロックもありますし、(アレクサンダー・)ハミルトンのようにラップを取り入れた作品もありますし、『ラ・ラ・ランド』の曲とか、『グレイテスト・ショーマン』の曲、去年、トニー賞(オリジナル楽曲賞)を獲った『ディア・エヴァン・ハンセン』は、『グレイテスト・ショーマン』と同じ作曲家、ジャスティン・ポールなんですけど、彼の曲は普通にヒットチャートに入っていても分からないくらいの今の音楽です」

 「実は新しい流れが起きていて、ミュージカルからはヒットする音楽は出ないと言われていたんです。でも『アナ雪』もそうですが、映画のヒットもあってそこの境が無くなってきていると思います。僕達にとっては有り難いことです。昔はミュージカルの曲を歌ったら『何をそれ?』という感じだったのに今は『Let It Go』は知っているし、そのあたりの境目が無くなってきているのかもしれないですね。

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