INTERVIEW

井上芳雄

音楽で色んなものが表現できる。
ミュージカルの醍醐味


記者:木村武雄

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掲載:18年06月05日

読了時間:約13分

 演劇・ミュージカル界における世界最高峰の賞『第72回トニー賞』の授賞式が日本時間6月11日、米ニューヨーク・ブロードウェイで開かれる。この模様はWOWOWで独占生中継され、日本のスタジオからはミュージカル界のプリンス・井上芳雄と乃木坂46のメンバーであり、ミュージカル女優としての評価も高い生田絵梨花がナビゲートする。またWOWOWトニー賞・アンバサダーの演出家・宮本亜門が現地からレポート。更にスペシャル・ゲストとして坂本昌行が出演、その魅力を伝える。これに先駆ける5月某日、井上芳雄がインタビューに応じ、トニー賞の見所と共に、ミュージカル、音楽の魅力を語った。

日本のトニー賞を作りたい

 今年5回目の出演となる井上は昨年まで、スペシャル・サポーターとして番組を盛り上げてきた。スタジオ・ナビゲーターは初挑戦となるが、その模様を深くナビゲートするため事前に米国に渡り、ブロードウェイでノミネート作品を観劇する他、演出家のハロンド・プリンスと対談することが決まっている。

――スタジオ・ナビゲーターの話が来た時の心境は?

 「スペシャル・サポーターを通じて少しずつトニー賞も知っていきましたし、試行錯誤して番組の見せ方を考えたり、チャレンジしてきたものもあります。そのなかでナビゲーターを任されるのは嬉しいです。常々、日本のトニー賞を作りたいと言ってきていましたので、少しずつその歩みを進めているようで嬉しいです」

――過去5回を振り返ってどうか?

 「毎回、バージョンアップしていると思います。テーマとしては、日本のスタジオをいかにショーアップするかというのがあり、番組のオープニングではニューヨークで撮ってきたものを流したり、自分が歌ったり、去年ぐらいからはちょっとした間に最新作の歌を挟んだりと、毎回「こんなことをやるのか」と思われることを取り入れて少しずつショーアップして。ナビゲート番組ではありますけど、番組自体をエンターテインメントと捉えてそれを突き詰めています」

――放送に向けての準備は? また意気込みを。

 「今までよりも資料を読み込む気合いが違うというか(笑)僕が知らないと回らないこともありますし、生中継なので「30秒余りました」みたいなのがあると思います。そういう間をどう取り持つのかという点も含めて大変だなと思うところもあります。本業は俳優ですが、でもミュージカル界で1位2位を争うおしゃべり上手な…(笑)いや、おしゃべり好きですね」

 「最近は司会もやらせて頂くこともありまして、司会の勉強はしたことはないですけど、自分でも向いているんじゃないかと思ってはいます。実は歌よりもお芝居よりも司会が向いているんじゃないかって(笑)。まだまだ未熟ではありますけど、演劇・ミュージカルへの愛もありますし、話のネタを得るためにニューヨークに行かせてもらうので、一緒にナビゲートをする生田さんと一緒に作り上げていきたいですし、坂本さんもいて下さるので、何とかなるんではないかなと思っています」

 今年の番組オープニングは、井上と生田、そして坂本によるコラボが実現。ミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』から「ザ・グレイテスト・ショー」「ディス・イズ・ミー」をメドレーで届けられる。

――コラボステージはどのようなものになりそうですか?

 「去年は坂本さんと『ラ・ラ・ランド』の曲を歌わせて頂きました。そして今回は『グレイテスト・ショーマン』。まず、ミュージカル映画が立て続けにヒットしたことは凄く大きなことだと思っていまして、常々言っていますが、アカデミー賞は知っていてもトニー賞は知らないという方は沢山いらっしゃる。でも『グレイテスト・ショーマン』は観ているという方は沢山いると思うんです。間口を広げるという意味でも今のそういう流れはありがたいと思います」

 歌唱予定の「ディス・イズ・ミー」は第75回ゴールデングローブ賞主題歌賞を受賞している。井上は受賞曲をオープニングで歌うことでより華やかにしたいという思いがあるという。

 「トニー賞授賞式もそうですが、オープニングの華やかさが重要になってくると思います。そこは坂本さん頼みでいきたいなと(笑)新しい試みもあるので凄く楽しみです。でも『グレイテスト・ショーマン』の曲は歌うのが難しいんですよ。先日も別の番組で歌ったんですけど、難しくて、自分自身大丈夫かなという不安はあります(笑)」

生田の印象、新しい道を切り開いている

 ともにナビゲーターを務める生田とは過去に地上波テレビの音楽番組でデュエットしたことがある。また、井上がMCを務めるラジオ番組に生田がゲスト出演しており、息の合ったコンビネーションが期待される。その生田とは、来年1月の上演が決まった『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』で共演することが決まっている。このなかで井上は、今回授賞式で司会を務めるジョシュ・グローバンが演じた役を演じる。

――生田さんの印象と、生田さんとどのように番組を進めていきたいか?

 「生田さんからはもともとミュージカルがお好きだったということはお聞きしたことがありまして、生田さんは今も沢山ミュージカルに出られていて、乃木坂の活動大丈夫かなって思うぐらいの活躍ぶりです(笑)でもどちらも一生懸命というか、エネルギッシュにやられているから凄いなと思いながら見ています。そもそもアイドルの方がミュージカルに出られるというのはあったと思いますが、もともとミュージカルが好きでそれでアイドルと並行してミュージカルをやるというのは、新しい道を切り開いているなという印象です」

 「ご本人は『まだ始めたばかりなんで…』と謙虚に話されていましたけど、しっかりと基礎があると思います。音大でも学ばれているし、ピアノもね。歌を歌っているのにピアノもという多彩ぶりで、話をしていてもとても頭の良い方だなとも思いますし。ただ、すごく親しいとか、これまでに沢山喋ったというわけではないので、どのようなコンビネーションでやれるのかは未知数ではあります。やりながら生田さんのことを知る時間にもなればいいかなと思います」

 「それと生田さんのような方が出られることでトニー賞がより身近になってくれたらいいなと思います。ミュージカルや演劇とこれまで縁のなかった方が「楽しそうだな」と思ってくれたら嬉しいです。番組も楽しくやりたいですね。そもそも楽しい事ですしね。朝が早いというだけで(笑)それさえ乗り越えられればね(笑)」

――昨年まで案内役を務めていた宮本亜門さんからアドバイスは?

 「決まってからお会いしていないのでまだ話していませんが、宮本さんは毎年ニューヨークに行かれてますし、現地の情報も詳しい。演出家から見た作品の見方は毎回納得したり、自分とは全然違うところを見られているのでそれを聞きたいです。それと現地の熱気や雰囲気、空気を伝えて欲しいと思います。衛星中継になってしまうので、多少の時差や予定外のことは絶対に起こると思うんですけど、宮本さんも臨機応変にやってくださる方ですから全幅の信頼を置いています。それと亜門さんの笑顔。きっとアメリカ人の心も溶かしてしまうだろうあの笑顔。演出している時は、たまに目が笑っていない時もあるんですけど(笑)基本は笑顔なので。人間力というかきっといろんな方の声を伝えて下さると思うので、頼りにしています。何か困ったらニューヨークを呼ぼうと思います(笑)」

――トニー賞を初めて見る人にその魅力を。

 「グラミー賞やアカデミー賞と並ぶアメリカの演劇の最大の賞ですし、有名なミュージカル映画の多くはもともと舞台から始まっているものが多いです。そもそもミュージカル自体がアメリカのブロードウェイで生まれたものなんです毎年しのぎを削って新しいミュージカルや演劇を生み続けて、更にトニー賞を目指して何年も準備して作品を作っているという、演劇に携わっている人間としては本当に憧れの、目標とする賞なので、最先端の舞台芸術やエンターテインメントが、その授賞式から感じられるのが最大の魅力だと思います。授賞式では候補作のパフォーマンスが必ずありまして、トニー賞のステージでパフォーマンスするのはアメリカ人に限らず、たぶん全世界の俳優にとってステータスだと思いますので、そこに懸けている俳優のエネルギーも見どころだと思います」

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